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第四十三章 五皇帝の年 ウェヌスの戦い

ポー平原会戦

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「何としたことか!」
 アルビヌスは吐き捨てるように呟いています。
 よりによって、最強と自負する第2軍団アウグスタが、劣勢に立たされるとは、想像できなかったのです。

 しかも、ウェテリスの恥ずべき補助兵軍にやられているのではない。
 ウェヌス教団の警護係集団に、その原因があるのはあきらかです。

「しかたない、前面のウェテリスの中央を突破する!」
 アルビヌスは投石兵の部隊を配置、ヌミディアの女騎兵の足どめをさせ、ウェテリスの中央部に第二列、主力のプリンケペスを集中、再び押し返し始めました。

 膨大な犠牲を出しながらも、一気に突破、ドルシッラさんの部隊をそのまま眺めながら、戦場から離脱を始めました。

「女神様、アルビヌスがウェテリスの軍を中央突破、離脱を始めました!」
「ドルシッラさんの部隊は大丈夫か!」
「大丈夫です!敵は弩の射程外を通り、ガリア方面へ向かっています」

「ウェテリスはどうした!」
「残った部隊で追撃をしていますが、アルビヌスはどうやら中央突破したプリンケペスの残りを後方へ配置、見事な撤退戦を演じています」

「追撃をやめるように言いなさい、ドルシッラさんの弩の援護がないことに、アルビヌスがきずけば、ウェテリスが壊滅させられます」

 ポー平原での会戦は、何とか終わったのです。
 双方とも甚大な被害を出しましたが、アルビヌスの撤退となりましたので、ウェテリスの勝利となるのでしょう。

「ガウダさん、お使いを頼めますか?」
「何なりと」
「ウェヌス教団の使者として、アルビヌスに会談を申しこんで欲しいの?」

「場所と日時は?」
「私も付いて行くから不要」

「ウェヌス教団から使者?丁重に御迎えせよ、一応ご婦人だからな」
 殺気立つローマの軍団兵が居並ぶ中、ガウダさんは平然と歩いています。

「大した度胸ですな?」
「私には女神様のご加護がありますので」
 そりゃあそうですね、私、光学迷彩をかけて、ガウダさんの横にいますからね。

「で、話は何かな?」
 椅子を勧めながら、アルビヌスが聞いてきました。
 申し訳ないけど、ガウダさんには少し寝ていてもらいましょう。

 くずれるように椅子に座るガウダさん。
 そして私は声を発しました。

「見事な撤退戦でした、称賛に値するでしょう」
 驚いた顔をしたアルビヌス。
「私はウェヌス」
「まさか……わざわざ褒めに、ですかな?」

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