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第四十章 192年11月のリスト
盤上の争い 其の二
しおりを挟むそんな淫靡な日々の合間に、私は二人目の男、マルクス・ディディウス・セウェルス・ユリアヌスに会いに行きました。
アフリカ総督でもある、ディディウス・ユリアヌスはこの間から、ローマに滞在しているのです。
「『ウェヌスの巫女』が、私に何用ですかな?」
「ファウスティナ神官長様が、先日の首都長官のお屋敷で、ご息女であられるディディア・クララ様にお会いした折、何かおっしゃりたかったようなので、私にそれをお聞きしてくるようにとの、お言葉でやってきました」
「それはご丁寧に……娘はいまふせっていますので、後日お伺いさせましょう、本日はご苦労様でした」
「ファウスティナ神官長様には、よろしくお伝えいただきたい」
「ディディウス・ユリアヌス元老議員様、私はファウスティナ神官長様から言付かっています」
「御心のうちをお聞きしてきなさいと」
「私の?」
「そのように、おっしゃられていました」
これで十分ですよ……ディディウス・ユリアヌスは分かっているでしょう……
ペルティナクスの計画は、この時点で知っているでしょうから……
「私はなにもいう事はないが……」
「分かりました、そのようにお伝えいたします」
「ファウスティナ神官長様には、お心遣い感謝しているとお伝えください」
「後日、機会があればアフリカ総督として、ささやかながらカルタゴに、ウェヌス神殿を寄進いたしましょう」
「これはありがとうございます、ウェヌス女神様もお喜びになられましょう、その機会が来るように、祝福がありましょう」
この男、ペルティナクスの計画が、上手くいかないと踏んでいるのでしょうか……
いや、そこまでの器なら、歴史のような愚かな行動はとらないはず……もっと良い皇帝になれるのでは……
しかし、当初の予定通り、迷彩としては良いのでは……
ディディア・クララにも手を出して、ゴールド・バーをうずたかく積み、皇帝に即位させそのまま永久政権……
可能ならセプティミウス・セウェルスを抹殺……これでジ・エンド……
インドラにそう思わせればベスト……
でもあいつは賢い……だませないでしょうね……だから……帝位競売に手を出させない……
インドラの妨害で、アフリカ総督のままカルタゴに在住、インドラも私も引き分け……こうなれば迷彩としてはベスト……
女の色香に、判断ミスがところどころ出てくる……
これが私のディディウス・ユリアヌスへの対処法……
さて、ウェヌス教団は、リップサービスをしてあげましたよ。
翌日、ディディア・クララさんが、ファウスティナさんを訪ねてやってきました。
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