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第三十八章 黒の巫女 死戦

03 ビンの口

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 空は茜色に染まり、二つの月の内、大きい方が昇っていきます。

 エラムでは、世界を見守る者との童話があり、『大きな瞳』と呼ばれている月です。
 私は火星の衛星の名を取って、『フォボス』と呼んでいます。
 当然、小さい方は『ダイモス』です。

 エラムでは、夜は人の時間ではないのです。
 もうすぐその夜がやってきます。

 やっとのことで、敵を引きつけながら、味方をガルダ草原の出口に退かせ、『ビンの口』に蓋をすべく、海軍バリスタ隊が簡単な陣地を構築しています。

 出口といっても幅はあります、地球でいうところの三十メートルはあるでしょうか。
 しかし私たちは、ここを抜けるのにかなりの時間がかかりました。

 とはいえ、この時の中央部の兵力は、約十万の兵士が四万を切っていました。
 残りはガルダ草原で動かないのか、動けなくなっているかです。

 『ビンの口』に蓋をした時にはあたりは、かなり暗くなっています、ギリギリでした。
「リューリック、上出来です、しばらく敵を寄せ付けないように。」

「なんとか持ちこたえて見せましょう、その間、少しでも休息を取ってください。」
「私は後でよいですが、兵たちは休ませなければ、貴方、夜目はききますか?」
「人よりはよく見える程度です。」

 とにかくリューリックには、敵を寄せ付けぬように命令しました。
 残存していた海軍バリスタ隊は、敵に猛射を浴びせ始めました。
 火炎瓶が残り少なくなってきていますので、取りあえず黒色火薬装備の爆裂弾、魔弾です。

 敵も怯み始めました、あの第一軍団長の悔しそうな顔が見えるようです。
 そしてとうとう夜がやってきました、敵も不気味なほど静かになりました。

 私はバリスタ隊の隊長を呼びました。
「船乗りは視力が良い者が多いと聞きます、夜目の利く者はいますか?」

 隊長は夜目の利く者をかき集めてくれました。
 私はその方たちに、
「御苦労ですが、これから朝まで三交代で見張りをお願いします。」

 私はトール隊長を呼び、
「とにかく兵を休息させてください、明日の朝には今日の続きが始まります。」

 トール隊長に顔にも、疲労の色がありありです、私はそれ以上言いませんでした。
 次にビクトリアさんには、アナスタシアさんにエレンさんの様子を見に行ってもらうように、伝言をお願いました、そしてリリータウンで朝まで休憩してもらいます。

 アテネさんも同じく伝言をお願いました、ダフネさんとサリーさんに来てもらうようにと、そしてリリータウンで朝まで休憩してもらいます。
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