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第三十六章 フィン連合王国の要求

01 マリノの悪ガキ爺

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 私はキリー経由でジャバ王宮に戻り、アポロさんに事後承諾を求めましたが、こっぴどくしかられています。

「イシュタル様、イーゼルはともかく、マリノを引き取るなんて、狸親父に騙されたのですか!」
 どうして?

「ロマニアではマリノ子爵は偏屈で超有名、一人として口も訊かない御仁ですよ、だれが接収交渉にあたるのですか?」
「私はご免ですよ、なぜマリノ子爵など領主一族の処遇を、ロマニア大公に押しつけなかったのですか?」
 そんなにひどいのですか?

 私はあわてて噂をかき集めますと……
 たしかにこれでは、相手をしてもらえませんね。

 曰く、
 ある時、ホラズム王国の使者がやって来たが、挨拶が気に食わなくて、服をはぎ取りその代価と称して、首から金貨を詰めた袋を下げさせ、素っ裸で国境まで歩かせて放り出した話。

 曰く、
 マリノ産のファインの悪口をいう商人を呼びよせ、認識を改めさせると称して、湯船にファインの湯を張り、そこに押し込め、フラフラになって出てきた商人を、さらにファインのスチーム風呂に、また押し込めたという話。

 悪ガキの所業ではありませんか、このような相手と話をするのですか?

 私はアポロさんに、
「ねぇ、ア・ポ・ロ・さん、お願いがあるの……」
「駄目です、お色気作戦は、最早私には聞きませんよ、どれだけ痛い目にあわされていると、思っているのですか?」
「御自分でけりをつけてください。」

 しかたないので、トール隊長をともなってイーゼルの温泉宿へ……そこへマリノ子爵に来てもらいました。
 こないかとも思いましたが、素直にやってきました。

「黒の巫女様、初めてお目にかかります、私がマリノです。」
 噂と違い立派な紳士です、しかも相当な御老人、私はあわてて、
「どうぞ、こちらへお座りください。」
 と、手を取って椅子をすすめました。

「歳をとるのも、たまにはいいことがあるものです。」
「巫女様に手を取っていただけるとは、それにしても噂どおり、声もでないほどお綺麗ですな。」
「わしが若ければ、悪さを計画するやもしれませんな。」

「社交辞令がお上手ですね。」
「なんの、まだこのぐらいは……」
 いうが早いか、マリノさんは、私のお尻をなでなでします……

 しっかりと、手をはたいておきました、
「なかなかお若い手ですね、素早い動きですが、こんどは息子さんに、私の膝が熱烈なご挨拶をいたしましょうか。」

 その時、「お父様!黒の巫女様にまで!」と女性の声がします。
 見ると、なかなか美しいですが、見るからに肝っ玉かあさんという感じの、三十すぎの女性としては、少々ごつい感じの方が立っていました。

「申し訳ありません、私はバーバラと申します。父がはしたないことを、悪い癖なのです。」
「たしかに、殿方にお尻を触られたのは初めてですか……いままでの記憶にありませんから。」

「バーバラはそれなりにましな容姿だが、性格がきつくて、巫女様、お詫びに、よければさしあげますよ。」
「お父様!」

「マリノ子爵には、お子様はバーバラさんだけですか?」
「いや、バーバラの下に息子がいたのじゃが、フィンとの小競り合いで死んでしもうた。」
「残ったバーバラはご覧の通り、婿に来るものがいなくて……」

 そりゃあそうでしょう、あの噂を聞けば、娘をくださいというのが嫌になるでしょう。
 でもいいお嫁さんになるのは確実なのですが……
 しかしお尻に敷くのでしょうね、かなり大きなお尻のようですし……

 ここの婿になるにはそうとう根性がいりますね。
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