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第三十四章 占領下のホラズム
10 野戦警察
しおりを挟むコナには続々と商人などが移住したきました。
ジャバとの交易が目的ですが、どうもそれ以外の人も大勢いるようです。
でも治安は悪くはなりません。
イシュタル突撃隊が全軍、ここに駐屯しているのですからね。
トール隊長以下、軍紀は厳重に守られています、なにせ精鋭部隊ですから。
ある時、シャルルさんが、ミレーヌさんを訪ねてやってきました。
「シャルル、元気そうでなによりだ。」
「ミレーヌ様も、女らしくなられて……」
感心するシャルルさんに、
「私もイシュタル様に愛されて女になった。今では夜に呼ばれるのを心待ちにしている、一人の側室だ。」
ますます感心しているシャルルさん。
「イシュタル女王陛下に、お礼を申し上げたいのですが。」
「その前に、私の要請の返事は?」
「ミレーヌ様のご命令には従うべきでしょうが、我々は今や根なし草。」
「私が皆の代表として、ミレーヌ様とイシュタル様とにお目にかかったのちに決めようと、話し合いで決まりました。」
「なるほど、もっともだ、すぐにイシュタル様と会見できるように手配しよう。」
「その必要はないでしょう。」
そう、私は突撃隊からシャルルさんが、コナに現れたと急報を受けたので、ここへ来たのです。
なんせ情報機関から、シャルルさんの人相書が突撃隊へ届いていますから。
「シャルルさん、私がイシュタルです。二度目ですね、値踏みしてくださいな。」
「もう十分ですよ、もともと返事は良い返事ですから。」
「そうはいかないでしょう、もっと聞かなければならないことがあるでしょう、人は現実も必要なのですから。」
「そうですね、待遇とかお聞かせください。」
私たちはこまごまと交渉しました。
そしてコナに野戦警察が集結しました。
関係者は全員、ジャバ王国の国籍を取得、イシュタル直属の軍となり、私と執政以外の指揮は、受けないことになっています。
指揮官は、シャルルさんをそのまま任命しました。
「イシュタル女王陛下に捧げ刀(ささげとう)!」
シャルルさんが号令すると、全員抜刀して敬礼してくれました。
「貴方たちは今より私に直属する部隊です。」
「貴方たちは軍の警察として、軍の犯罪を検挙する権限を与えます。」
「今の敬礼は、私への忠誠と取らせていただきます。」
「ジャバ王国はいま戦いの最中です、野戦警察の力に期待しています。」
新たに設立されたジャバ王国の野戦警察は約五千名、少数ですが突撃隊に劣らない精鋭です。
もともとホラズムの部隊ですが、なんでこの精鋭部隊を、治安維持にしか活用しなかったのか、もったいない話です。
この後、私は野戦警察の方々と会食をしました、ミレーヌさんも一緒です。
例のお酒が並んでいます、『巫女の愛』というやつです。
「皆さんの中でご家族がいる方は、ジャバの本土へ御家族を避難させてください。」
「いま安全なのはあそこだけです。」
シャルルさんが、
「イシュタル様、我らを頼りにしてください、我らも状況は把握しています。」
「北方列島の蛮族どもが、何を目的にしているかも、ミレーヌ様とともに調べたのです。」
「頼りにします。」
この人たちは信頼できます。
私は野戦警察という、精鋭部隊を味方にすることができました。
戦場で背中を預ける相手です。
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