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第三十四章 占領下のホラズム

03 困った女たち

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 コナはいま大騒動です。
 ただの辺境の港町、ホラズム王国が惜しげもなくくれた町です。
 そこへ見たこともない大軍団、イシュタル突撃隊が進駐してきたのです。

 ジャバ王国の突撃隊といえば、泣く子も黙る暴力集団、命知らずで大陸に名をはせています。
 その昔の親衛隊の悪名が、さらに声高く大きく突撃隊の悪名になり、こんなところまで広まっているようですね。
 トール隊長が嘆いていました。

「イシュタル様、このたびの任務、我らにお命じください。」
「ジャイアールを急襲して、野戦警察の幹部をかっさらってくるなど、赤子の手を捻るようなもの。」

「勇ましいですが、まだ南ホラズム王国とは友好状態です。」
「正面切って、我が軍が友好国の首都へ乗り込むことはできません。」
「このコナは、三方を南ホラズム王国に囲まれているのですよ、密かに出撃もできない以上は、奇襲も無理です。」

 敵も味方も塩が必要なのです、だから敵対しない国家が必要なのでしょう。
 そこまで読んで、南ホラズムの王になったのなら、宰相は切れ者でしょう。
 たぶんシナリオを描いたものが、主席の軍にいるはずです。

 友好国を維持したいはずですから、友好条約の再締結なんて云って、足下を見るのもいいのではないの?
 宰相に少しおねだりしますか?手狭なコナ周辺を租借しましょう。

 私はアポロさんと話をしてみました。
「それは良いですね、汚い手ですが、まず実現するでしょう。」
「でも今回の条件は予測できません、なにせ相手がだれか、予測ができないのです。」

「トール隊長を使者に出しましょうか?」
「随行員の補充のため、現地採用の者のなかに元ホラズムの野戦警察の幹部がいても、当方はあずかり知らない話し。」

「べつに使者にはなんの交渉権限もありませんし、一人二人、随行員が帰りに増えても文句はいいますまい。」
「既成事実を作ったのち、ちょっと追い銭をすれば済むことです。」

「その時、私も随行員に!」
 自薦しましたが、相手にしてもらえません。

 アポロさんが、
「できましたらアテネさんに働いてもらいたいのですが?」

 なぜ、と聞きますと、アテネさんはジャバ出身で武術の達人、トール隊長を抑えることができる、数少ない人というのが理由です。
 庶民の出であるアテネさんなら、違和感なくジャイアールを歩けるというわけです。
 しかも大変用心深い所があるアテネさんです。

 さてアテネさんに来てもらいましょう。

「というわけで、アテネさんにトール隊長と一緒にジャイアールへいって、密かにミレーヌさんのお知り合いを、救いだしてほしいのです。」

 アテネさんが、
「ここへ連れてくればよいのですか?」
 というと、アポロさんが、
「自由にしてあげればそれで結構、この手紙を渡してください、その後、ついてくるなら一行に加えてくれて結構です。問題は起こらないはずです。」
 その手紙とは、ミレーヌさんがともに闘ってという要請状です。

「わかりました。」と、それだけです。
 相変わらずアテネさんは言葉少ないですね。

 アテネさんに、
「無事が一番ですよ、命なんてかけてはいけませんよ。」
「貴女はいつもいうように、私の妹みたいな存在、本当は私が行こうと考えたのですが……」
 思わず抱きしめました、やはりアテネさんは可愛い、一人にすると悪い狼が寄ってくる……

「やはり私もいきます!」
「これはイシュタルとしての決意です、だれも異議を唱えさせません。」
「さあアテネさん、二人で旅支度をしましょう。」
 と私はさっさと、アテネさんと二人で部屋へ戻りました。

 背中に男二人の、おおきいため息が、聞こえましたが気にしません。
 ケセラセラ、何か云いましたか?

「アテネさん、忘れ物はないですね、お菓子は入れましたか、下着は大丈夫?」
 姉になるとだれでもこうなるのです、可愛い妹のためならば……私の姉もそうでした……

 私とアテネさんは男装しますが、アテネさんはよく似合っています。
 でも私は胸に布をまいて……苦しい……

 アテネさんが、
「イシュタル様、お綺麗ですがお尻が……その、ボンボンと出て……」
「見苦しいですか?」
「イシュタル様はなにをどうしても、お美しいのです!」

 私のお尻って、そんなに大きいのでしょうか?
 少しショックですね、でも布で締め上げても、骨盤は小さくできない……

 なにかダポっとした服にしましょう、かっこ悪いけど……
 結局、神官さんの服を着ています。
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