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第三十三章 日和見のホラズム王国

08 夫人という位

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 ミレーヌ王女はまだ昏睡状態です。
 なんとか命に別条はないようですが、たぶんミレーヌ王女は私なしでは……
 本人は確実に私の愛人を望むでしょう……

 クリスティーナさんとマーシャさんも目覚めました。
 この二人は多少の後遺症で済むと考えています。

 アナスタシアさんが相手をしています。
 二人は私を見て、下を向いてしまいました。

「アナスタシアさん、少し席を外してください。」
 アナスタシアさんが席を外してくれますと、マーシャさんが、
「イシュタル女王様、このたびははしたないところをお見せしました。」
 と真っ赤な顔でいいます。

「私たちは大公様の妻妾というのに、あのメイピールに……」
 というと、クリスティーナさんが、
「マーシャ、私たちはもう散々メイピールに穢された身、イシュタル様に救われたと思えば、あきらめもつきます。」

「イシュタル様、私はこの大公様の忘れ形見さえ、無事に産ませていただければ、この身はどうなろうとかまいません。」
「こうしてまともに考えることができるだけ、ありがたいと思っています。」

「本当は、こうしてイシュタル様をまじかに見ると恥ずかしいのですが、愛していただきたくて……身も心も求めてしまいます。」

「夫をもっていた身ですが、女の愛人になる分には不名誉ではありません。」
「相手はジャバ王国女王で、なお且つ黒の巫女様、むしろ大公様も名誉と思い、喜んでくれるはずです。」

「イシュタル様、私たちはもはやイシュタル様なしではいきていけません。」
「私は生まれてくる子を、立派に育てるためという一念があります。」
「その為なんとか我慢できるでしょうが、マーシャだけでも、時々愛してやってもらえないでしょうか。」

「マーシャさんのことはわかりました。しかしクリスティーナさんは、お子さんを産んだ後はどうされますか?」
「考えていません、とにかく私のお腹の子供のことしか、考えていません……いや、私はイシュタル様に愛していただきたく思っています。」

「生まれてくる子供を、立派に育てる自信があるのですか?」
 意地悪な質問ですが大事な事です。

「イシュタル様のいわんとすることは理解できます。」
「男なら誓って前アムリア皇帝や、今のホラズム国王のような愚か者にはいたしません、やさしい男の子に育てるつもりです。」
 母親の愛ですか、女性は偉大です。
 それはさておいて、どうしましょう、困った状況です。

 ここで私は閃きました。
 ……『夫人』という位をつくろう、捨扶持、つまりささやかな年金をつけよう。
 その『夫人』は私が抱いた方を任命しよう、フランス国王みたいに……

 つまりイシュタル女王の元愛人、女好きのイシュタルさんは、時々愛を交わすこともある。
 これです、これでいきましょう!

 二人は基本的には未亡人、しかもホラズム国王が購入して、イシュタル女王に贈った女性、それをイシュタルさんが受け取り、そして抱いて『夫人』という位を与えた、それだけのことです。

「クリスティーナさん、貴女にジャバ王国夫人という位をさずけましょう。」
「贅沢はできませんが、毎年困らないだけのお金、年金を支給するようにいたしますので、お子さんを立派に産んで立派に育ててください。」
「マーシャさんも同様です、ところでアナスタシアさんは知っておられますね。」

「アナスタシア皇女様には、その昔、よくお声をかけていただきました。」
「いいにくい話ですが、イシュタル女王様に購入されたと聞いた時は、ため息をつきました。」

「噂と違い、この様に美しく、お優しい方の愛人になられ、幸せにお暮らしとは、知りませんでした。」
「まして同じ方にお仕えするとは、考えもしませんでした。」
「どうか正式にご挨拶いたしたく思いますので、お呼び願えませんか?」

 アナスタシアさんがやってくると、
「アナスタシアさまの大事なイシュタル様に、私どももお仕えすることに、させていただくことになりました。」
「御迷惑はおかけしませんので、大事な時間を私どもにも、少しお分けください。」

 アナスタシアさんが、
「わかりました、しかしクリスティーナはしばらく、イシュタル様と愛し合うのは避けるのですよ。」

 この『夫人』の地位の創設を、アポロさんに強引に押し付けました。
「このようなことには、よく知恵が回ることですね、ほとほと感心しますよ、まったく!」
 と散々言われましたが、了承してくれました。

 まぁ、今ジャバ王国はお金持ちですから。
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