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第三十三章 日和見のホラズム王国
06 メイピールの贈り物
しおりを挟むとにかくあまり気の進まない今回の件ですが、私がいいだしたことです。
せめてミレーヌ王女には、悲しい思いはさせないようにいたしましょう。
私は予定されているミレーヌ王女の部屋を、せっせと掃除をしときました。
ミレーヌ王女到着の前日、ホラズム王国より使者がやってきました。
メイピール国王からの親書と、私への贈物だそうです。
私が直接受け取らなければなりません、一応相手は一国の国王ですから、それに私宛ですし。
その親書には、
『今後は二国間で相互の信頼を強めたい、ついてはコナの譲渡もミレーヌ王女の売出しも、友好のためである。』
とありました。
そして個人的に、私に敬意を表すために、ミレーヌ王女を私の趣向に合わせて送り届ける。
またホラズムに亡命していた、アムリアの大公が死去したのちに、購入した妻妾を私の奴隷として、私の趣向に合わせて送るとあります。
私はこの親書の真意を測りかねましたが、素知らぬ顔で、
「私のために数々のご配慮をしていただき、このイシュタル、心より感謝している。」
「喜んで贈り物を頂くと、メイピール国王陛下へお伝えしてください、お役目ご苦労さまでした。」
使者が帰っていきます。
アポロさんを呼び、この親書をみせました。
「どうおもいますか?」
「多分イシュタル様のご機嫌取りとはおもいますが……この贈り物のアムリア大公の妻妾は……」
「これはイシュタル様のアムリアへの憎しみを考慮して、お気の済むように殺してはいかが、という意味ととれますが……」
「とりあえず贈り物を見ては、いかがですか?」
私の部屋へ贈り物が届きます。
綺麗なご婦人がたで、布一枚をまとっているだけです、一人は妊娠しているみたいですね。
もう一人の若い方は、どこか身体の調子が悪いようです。
でも尋常でない怯え方で、私を見ますと「殺さないでください!」と哀願されました。
イシュタル女王の噂に、また尾ヒレがついて広まっているみたいです。
「殺しはしません、私はそんなに残酷ではありませんよ、安心してください、ところで貴女、どこか悪いのですか?」
妊婦さんが、涙を少しこぼしながら、
「私たちをお見せしろといわれています」と纏っていた布をとりますと……
だんだんこのようなことになれてきましたが、そのことにも腹がたちましたね。
身体の調子が悪い方の方は媚薬を盛られているようです。
二人とも狂乱状態です。
多分多量の薬のために、脳内麻薬のドーパミンが大量に分泌されて、セロトニンが不足しているのではないでしょうか。
このままいくと快楽依存よりやっかいな、オピオイドが大量に、脳内で分泌される恐れがあります。
私の記憶では、脳内オピオイドはヘロインなどとは、比べ物にならない代物で、これの大量放出は最悪は命を落としてしまいます。
とにかくセロトニンを出してもらわなくてはなりません。
すぐにできる方法は、安心して満足して充実した愛……
結局、私はこのお二人を散々に……
メイピールってやつは唾棄すべき存在です、ジョージ三世より始末が悪い極め付きの変態です。
こいつはどんなことがあっても、助けてはいけない存在と確信しました。
二人に毛布をかけていると、妊婦さんのほうが、
「ミレーヌ王女は、もっと酷い目にあわれているはずです。」
といいます。
さすがに戦慄しました、実の娘ですよ!
「わかりました、とにかく貴女たちのことは、私が責任をもって面倒をみます、安心しなさい。」
「とにかく今は休んでください。」
私は奉仕の魔女団の一人を呼び、アナスタシアさんを連れて来てもらいました。
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