上 下
70 / 121
第三十三章 日和見のホラズム王国

03 宰相の話

しおりを挟む

 彼女、通称ピピン氏は、ホラズム宮廷での、国王臨席の会議に出席しようとしていた。
「なんとかここで開戦しないと、ホラズムは滅亡する。」
 独り言のように呟いていた。

「メイピール国王陛下、情勢は非常に不利です。」
「アムリア帝国は壊滅し、いま蛮族どもは教団と戦闘状態にあります。」

「教団領全域で戦闘状態に入っていますが、教団領の町々は甚大な被害を受けています。」
「敵は教団領を撹乱しながら、まずはこのホラズムに乱入する姿勢を示しています。」

「この時点で戦っても我が国は不利ですが、不利を覚悟で教団領と共に闘わなければ、このホラズム王国に明日はありません。」

 王国宰相が、
「内務卿の言葉は、状況を片方しかみていません。」
「蛮族どもは教団との全面衝突の結果、このホラズムと戦う余裕はありません。」

「キリーの攻防で大敗北を喫して、蛮族どもも、アムリア征服で満足したと考えます。」
「アムリア支配だけで手に余るでしょう。」

「我らは蛮族どもの頭をなでて、戦争不介入を貫くべきです。」
「現に蛮族の総司令官から書簡が来ています、我らと同盟を結ばないかという書簡です。」
「もし同盟を結ぶなら、現在占領中のカルシュ自治都市の支配権を譲るという書簡です。」

「その言葉を信じられるのか?」
 と国王が聞くと、宰相は、
「信じられなくても、彼らは目いっぱいということです。」

「このまま蛮族どもにいい顔をしていたら、カルシュ自治都市をくれるのです。」
「それだけ奴らも、せっぱつまっているのでしょう、我らはこのままで十分です。」

「それは嘘です、彼らは必ずホラズムを占領する気です。」
「彼らの正体にきづかないのですか、彼らはレムリアですよ。」
「レムリア、そんな神話の話を信じろというのか、内務卿は気がふれたのか。」

「どういわれようと真実です、国王陛下、私と私の情報網を信じてくださいませんか。」
「私に信じさせるためには、確たる証拠が必要だ、私は宰相の話を信じよう。」
「国王陛下!」
「もうよい、さがれ」

 宰相府で、その後の会議が開かれた、ピピン氏抜きで。
「宰相、御前会議の結果はどうでした。」
「不介入ときまった。」

「内務卿がうるさいのだ、蛮族がやってくると、たとえそうなっても、このホラズムがなくなるわけはない。」
「蛮族どもは、ホラズムを統治できるわけはない、我々の力が必要になる、その象徴として王家は必要だ。」

「国王陛下には、多少我慢してもらっても、戦になってアムリアのように、滅亡するよりましであろう。」
「このまま日和見を決め込むことが、国のためと考える。」

「内務卿がいっていた、レムリアというのは本当ですか?」
「本当だ、しかしレムリアがどうしたというのだ、彼らも領土がほしいだけだ。」

「最悪ホラズムが占領されても、我らは生き残る。」
「それにジャバ王国から良い提案が来ている、ホラズムのどこでもよいから、港町を一つ借り受けたいというものだ。」
「たぶんジャバとしても、キリーのような港町をこの大陸の南に持ちたいのだろう。」

「先程発表したコナの町の件について、私は王国宰相として秘密裏に交渉した。」
「その結果ジャバ王国は条件をのんだ。」

「ホラズム王国の王女を、イシュタル女王の愛人とする。」
「そして塩の独占販売を、王国の指定する者にと、皆知っておろう。」

「この裏の意味はな、ジャバ王国はコナを防衛する、キリーの攻防でも敵を撃退したジャバだ、いざとなったら我らはジャバ王国へ退避できる保証だよ。」

「それにイシュタル女王の愛人になる王女には、うってつけの方がいるではないか。」
「あの死の女王に投げやるには、十分でいささか美しい方が、ミレーヌ王女様がな。」

「なるほど宰相殿は先を見る目がある、それで急遽、王女としたのですか?」
「それなら国王陛下もご納得されるだろう、なんせ持て余し気味ですからな。」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

ミコの女たち 第三短編集 パープル・ウィドウ・コレクション 【ノーマル版】

ミスター愛妻
ファンタジー
 ヴィーナス・ネットワーク・ワールドの有力惑星マルス。  移住に多大な貢献をした男たちの妻には、名誉刀自という位が贈られ、ささやかながら年金も支給されている。  しかし、彼女たちはお金には困らない。  地位も名誉も最大級、ゆえに彼女たちの影響力は計り知れない……有閑マダムといってよい、ご婦人方である。  そこへ惑星テラの後始末が、有閑マダムたちに、いつのまにかのしかかってきた。  テラの住民はご婦人方を特別にこう呼んだ。  パープル・ウィドウ、紫の未亡人と……  惑星エラムより愛を込めて スピンオフ 『ミコの女たち』シリーズの第三短編集。  本作はミッドナイトノベルズ様に投稿していたものから、R18部分を削除、カクヨムで公開しているものです。しかしそうはいってもR15は必要かもしれません。  一話あたり2000文字以内と短めになっています。    表紙はルイス・リカルド・ファレロ 天秤座でパブリックドメインとなっているものです。

姫神の女たち2 ユーノー・ソスピタ(維持する者)のニンフ 【ノーマル版】

ミスター愛妻
ファンタジー
 ソル星系外惑星鉄道ステーションの中心、ガリレオ衛星ステーションは特殊な地位にあり、執政官府がおかれている。  執政官はガリレオ・カウンテスとよばれているが、その補佐にあたる管理官たちも、ガリレオ・ヴァイカウンテス――ガリレオ女子爵――とか、ガリレオ・バロネス――ガリレオ女男爵――とかいわれている。  ここはソル星系世界の、宇宙貿易の中心でもあり、なにかと忙しい。  そんな管理官たちの、日常を綴ってみよう。  百年紀のカレンダーのスピンオフ、『姫神の女たち』シリーズの第二短編集。  ガリレオ・カウンティスの続編にあたります。  本作はミッドナイトノベルズ様に投稿していたものから、R18部分を削除、カクヨムで公開しているものです。しかしそうはいってもR15は必要かもしれません。  一話あたり2000文字以内と短めになっています。    表紙はティツィアーノ・ヴェチェッリオ フローラ でパブリックドメインとなっているものです。 

隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました

ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら…… という、とんでもないお話を書きました。 ぜひ読んでください。

ヴィーナスの女たち 第三短編集 シュードラ島奇譚 【ノーマル版】

ミスター愛妻
ファンタジー
 別の宇宙 ある恒星の第二番惑星  レムリア都市同盟は孤立無援、何とか国土を広げ、国力をつけたい……そこで宰相のフリードリッヒは未知の世界に雄飛することにしたのだが……  シュードラ島奇譚 など六つの物語を拾い集めた、惑星エラムシリーズのスピンオフ第三短編集  ミッドナイト様に投稿しているもののR18仕様を修正【ノーマル版】としFC2様に投稿しているものです。  表紙画像は ウィリアム・ブグロー Evening Moo パブリックドメインです。

処理中です...