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第三十三章 日和見のホラズム王国
03 宰相の話
しおりを挟む彼女、通称ピピン氏は、ホラズム宮廷での、国王臨席の会議に出席しようとしていた。
「なんとかここで開戦しないと、ホラズムは滅亡する。」
独り言のように呟いていた。
「メイピール国王陛下、情勢は非常に不利です。」
「アムリア帝国は壊滅し、いま蛮族どもは教団と戦闘状態にあります。」
「教団領全域で戦闘状態に入っていますが、教団領の町々は甚大な被害を受けています。」
「敵は教団領を撹乱しながら、まずはこのホラズムに乱入する姿勢を示しています。」
「この時点で戦っても我が国は不利ですが、不利を覚悟で教団領と共に闘わなければ、このホラズム王国に明日はありません。」
王国宰相が、
「内務卿の言葉は、状況を片方しかみていません。」
「蛮族どもは教団との全面衝突の結果、このホラズムと戦う余裕はありません。」
「キリーの攻防で大敗北を喫して、蛮族どもも、アムリア征服で満足したと考えます。」
「アムリア支配だけで手に余るでしょう。」
「我らは蛮族どもの頭をなでて、戦争不介入を貫くべきです。」
「現に蛮族の総司令官から書簡が来ています、我らと同盟を結ばないかという書簡です。」
「もし同盟を結ぶなら、現在占領中のカルシュ自治都市の支配権を譲るという書簡です。」
「その言葉を信じられるのか?」
と国王が聞くと、宰相は、
「信じられなくても、彼らは目いっぱいということです。」
「このまま蛮族どもにいい顔をしていたら、カルシュ自治都市をくれるのです。」
「それだけ奴らも、せっぱつまっているのでしょう、我らはこのままで十分です。」
「それは嘘です、彼らは必ずホラズムを占領する気です。」
「彼らの正体にきづかないのですか、彼らはレムリアですよ。」
「レムリア、そんな神話の話を信じろというのか、内務卿は気がふれたのか。」
「どういわれようと真実です、国王陛下、私と私の情報網を信じてくださいませんか。」
「私に信じさせるためには、確たる証拠が必要だ、私は宰相の話を信じよう。」
「国王陛下!」
「もうよい、さがれ」
宰相府で、その後の会議が開かれた、ピピン氏抜きで。
「宰相、御前会議の結果はどうでした。」
「不介入ときまった。」
「内務卿がうるさいのだ、蛮族がやってくると、たとえそうなっても、このホラズムがなくなるわけはない。」
「蛮族どもは、ホラズムを統治できるわけはない、我々の力が必要になる、その象徴として王家は必要だ。」
「国王陛下には、多少我慢してもらっても、戦になってアムリアのように、滅亡するよりましであろう。」
「このまま日和見を決め込むことが、国のためと考える。」
「内務卿がいっていた、レムリアというのは本当ですか?」
「本当だ、しかしレムリアがどうしたというのだ、彼らも領土がほしいだけだ。」
「最悪ホラズムが占領されても、我らは生き残る。」
「それにジャバ王国から良い提案が来ている、ホラズムのどこでもよいから、港町を一つ借り受けたいというものだ。」
「たぶんジャバとしても、キリーのような港町をこの大陸の南に持ちたいのだろう。」
「先程発表したコナの町の件について、私は王国宰相として秘密裏に交渉した。」
「その結果ジャバ王国は条件をのんだ。」
「ホラズム王国の王女を、イシュタル女王の愛人とする。」
「そして塩の独占販売を、王国の指定する者にと、皆知っておろう。」
「この裏の意味はな、ジャバ王国はコナを防衛する、キリーの攻防でも敵を撃退したジャバだ、いざとなったら我らはジャバ王国へ退避できる保証だよ。」
「それにイシュタル女王の愛人になる王女には、うってつけの方がいるではないか。」
「あの死の女王に投げやるには、十分でいささか美しい方が、ミレーヌ王女様がな。」
「なるほど宰相殿は先を見る目がある、それで急遽、王女としたのですか?」
「それなら国王陛下もご納得されるだろう、なんせ持て余し気味ですからな。」
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