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第三十二章 教団領奮戦中
06 ピーターさんとロキさんの春
しおりを挟む二三日して、この話を筆頭愛人?のサリーさんにこぼしますと、サリーさんは真顔で、
「お嬢様、私たちはもうあきらめています。」
「お嬢様が望まなくても、いまいわれた人以上に、まだ二三人は増えると思っています。」
「仲良くしているでしょう、ちゃんと順番を守っています。」
「でも、あまり増えるとお身体が持ちませんね。」
と笑われましたが、目が笑っていません、怖いものがありました。
悩みが増えるばかりです。
「ヴィーナス様、お話があります。」
ピーターさんが、私を待ちかまえていました。
側にピエール団長がいましたが、ピーターさんを見ると、あたふたと逃げていきます。
あれ、ピエール団長にも苦手があるのですね。
「なんでしょうか、戦時国債の件なら納得されているのでは?」
「そのことではありません、ヴィーナス様、事務補助の方になにかいいましたか?このごろ……」
「なにもいいませんよ、でもあの方たちの呟きは聞きましたよ、ピーターさんって良い人ですって♪」
「脈はありますね、一人といわず、なんなら全員をお迎えになったらいかがですか?」
「ヴィーナス様!」
えらく怒っているピーターさんでしたが、どこか嬉しそうでしたね。
意中の女がいるみたいですね、彼女たちは辛い人生を送った方たち、一人でも二人でもいいから幸せにしてあげてくださいね。
私はピエール団長を再び捕まえました、
「酷いですね、軍人がかよわい女を見捨てて逃げるなんて、アンリエッタさんに苦情をいっておきます。」
「ヴィーナス様、どうもあの方はにがてで、妻ともども逃げる習慣が身について……」
「そうです、この騎士団であのピーターさんの影をみて、逃げ出さないものはいません。」
「絶対に勝てないし、兵糧攻めの恐怖が骨身に染み付いてしまって……」
と、ロキさんがこぼしています。
「もう少しの辛抱です。私の見るところ、ピーターさんの春は近いでしょう。」
「なんせ、物凄く美味しい餌をぶら下げましたし、中の二人は脈ありです。」
「まずこの二人の色香に陥落は必定、さすればもう少し柔らかくなるでしょう。」
「えっ、あの方がご結婚?」
「まだ決まったわけではありません、私と大賢者と次席賢者の、ささやかな極秘作戦です。」
「漏れると作戦が破綻します、情報統制が肝要なのです。」
「ヴィーナス様は策士ですな、ロキの次はピーターさんですか?」
と、ピエール団長が笑っています。
「ところでロキさん、することはしたのですか。」
「相手はロマノフ大公国のも姫様付き侍女のレイラさん、もう独身貴族は謳歌できませんよ。」
「まだレイラ嬢は処女です!私はそんなことはしていません!もうすぐ結婚を申し込む……」
「いいましたね、ついに白状しましたね、ピエール団長、聞きましたね。」
ピエールさんが「ロキ、告白したのか!」と聞きますと、あきらめたのか、ロキさんが「まだです」と下を向きます。
「あきれました、レイラさんは待っているというのに、本当に男らしくない。女にいわせたいのですか?」
「いや、そんなことは、しかし……」
「勇気をだして告白しましょう、なんなら今、レイラさんを呼び出しましょうか?」
「明日、自分でいいます。」
ロキさんはしどろもどろで告白したそうです、その後はレイラさんから誘ったそうですが……
「でもイシュタル様、こうでもしておかなければ、ロキさん逃げそうですし。」
ロキさん、この大きなお尻に敷かれるのでしょうね。
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