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第三十一章 キリー攻防戦

09 第三軍団の壊滅

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 その日は小雪さんの三日が終わり、アリスさんの番でした。
 敵第三軍団の大攻勢が始まりました。

「アナスタシア様、敵が城壁下まで押し寄せています、大攻勢です。」
「すぐ見に行きます、アリスさんも来ますか?」
「当然です。」
「うようよいますね。」
 とアリスさんが云ったそうです。

「イワン団長、バリスタであの金網の車を射撃させてください。」
「火炎瓶は金網などでは防げません、投石機はありますか?そうですか、ありませんか……では小雪を真似しちゃいましょう。」

 アリスさんは、城壁の上に仁王立ちして、昔、小雪さんが突撃隊を壊滅させたのと、同じ手法をとりました。
 大地が盛り上がり、ゴーレムが出現します。
 そしてゴーレムは、中で焼け焦げた人を乗せた金網の車をひっくり返しだしました。

「サソリちゃん、ご飯ですよ」と云ったと聞きました。
 後ですごく怒っときましたが、アリスはやはりまだ子供なのでしょう。

 敵の魔法士が対抗魔法を唱えますが、アリスさんはキンメリア最高の魔法士より、さらに強力な魔法を使えます。
 ましてアンドロイド、ここ一番の体力は半端ではありません、どんどんゴーレムを作り出したそうです。

 敵が混乱している時こそチャンスと、イワン団長は白兵戦を決意して、アリスさんに向かって、
「これから我らは切り込みます、ウミサソリキングからの防御をお願いします。」

「これより切り込みを行う、ロマノフ名誉騎士団の名を辱めるな!」
 と凄い声で叫び、「城門を開け!」と命じたそうです。

 敵が混乱している間に城門が開かれ、突撃体制の騎兵が突っ込むと、敵の第三軍団が崩れ出しました。
 側面からは、金網の車が防いでいた、ウミサソリキングが襲っています。

 アリスさんはゴーレムを、味方の側面を守るように移動させ、ウミサソリキングを防いでいます。
 そこへエレン団長が、城壁の上からついに魔弾をぶっ放し始めました。

 しかし敵の第三軍の一部は、城門が開いているのを見つけ、ついにキリー内部へ侵入をしたのです。
 アグネス隊長と奉仕の魔女団が、必死で防いでいます。
 魔法を駆使していますが、少数ですので支えきれません。
 ここで、急を聞いた私とビクトリアさんとアテネさんが間に合いました。

「イシュタル様!」
 とアナスタシアさんが叫んでいます。

 アテネさんとビクトリアさんが私の左右に広がると、私は電撃杖を振り上げ、開いている城門の敵に向けました、「ストロングサンダー・イン」、と私は最大級の電撃を発生しました。
 青白い稲妻が細い渦をまいて、スパイラル状に敵に向かいます。

「アリス、防壁を張りなさい。」
 とっさにアリスさんが、ロマノフ名誉騎士団の周りに、防御のための磁気の壁を厚く作り、その前に真空の層を作りました。そして凄い声で「目をつぶりなさい」と叫んだのです。

 青白い光が渦巻いて後、鼓膜が破れるかという雷鳴が轟きました、その後は音もしません。
 アリスさんがとっさに張った防壁のおかげで、ロマノフ名誉騎士団は無事でしたが、敵はほとんどが倒れています。

 数万という単位で、黒こげの死体が転がっています。
 ただ敵が全滅したわけではありません。
 アリスさんの防壁は味方を救いましたが、そのため、一部の敵も運よく守られたのです。
 5分の1ぐらいは残っています。

 私はイワン団長を呼び、敵に撤退を勧告してもらうことにしました。
「これ以上の戦いは無意味である、巫女様は貴方たちの勇戦をおほめになり、これ以上の犠牲は避けたいとおおせである。」
「もはや第三軍団は壊滅した、はやひかれるように。」

 生き残っていた中の、最上級士官が、「感謝する」と一言いって撤退していきました。

 私は黙って戦場の死体を風葬にしました、さらさらと風に吹かれ、死体が風化して大地に返っていきます。

「勇戦した敵に対して弔旗を掲げなさい。」
 キリー攻防戦は終わりました。
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