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第三十章 開戦準備
06 海軍設立
しおりを挟む私はジャバ王宮に飛びました。
「珍しいですね、イシュタル様が玉座に座られているなんて。」
と、アポロ執政が嫌みを飛ばしてくれます。
そんな嫌みはスルーして、
「開戦を決意した以上、全ての責任は私が負うことになります。」
「犠牲は少なく、結果は望み通りとし、何としてでも主席には勝たなくては、この世界というより、この世界の今の人々が生きていけなくなります。」
「彼らは一旦、世界の全てを均すつもりかもしれません、彼らの『均す』は、大量虐殺の可能性が大なのです。」
「私の愛する人々の住む大事な世界に、そのようなことを起こさすわけにはいかないのです。」
「まず、執政にお願いですが、義勇艦隊をキリーへ差し向けてください。」
「避難民を収容して、安全なジャバ王国まで運んでください。」
「今は着の身着のままの人間は来ないでしょうが、戦火が激しくなったら、命からがら逃げてきた、本当の避難民が来るでしょう、その時の準備をお願いします。」
「そのお守は一任しますが、なるべくは生計が成り立つようにお願いします。しかし、食べるための労働は許可します。」
「それから軍事のことですが、もし私たちが大陸での戦いに負けた場合、このジャバ王国が最後の砦となります。」
「最悪、大陸諸国との戦いになることも考えられます、その時に、ジャバ王国を守るのは、海の軍事力しかありません。」
「現在の義勇艦隊を中核として、海軍の創設を考えてください。」
「そしてこの海軍力を頼りに、このエラムの海洋を支配して、大陸反抗を模索するというのが、最悪の場合のシナリオです。」
「アポロ執政、海軍を持つということは、外洋を航行する船を持つこととなり、その様な船はここだけの話で恐縮しますが、この時代より後の時代の産物です。」
「私がいた世界の基準からすると、このエラムは古代のカテゴリーに分類され、そのような船が出現するのは、次の次の時代、近世というカテゴリーで、約千五百年後になります、この意味がおわかりですね。」
少しアポロ執政の顔が引きつりました。
「いまのジャバ王国の船は、沿岸を航行することしかできません。」
「平時ではそれもよいでしょう、いざとなったら沿岸の港へ避難すればよいのですから。」
「しかし大陸沿岸の港に入港できなくなったら、この広大な海洋を、自由に行き来しなくてはなりません。」
「外洋を航行する船は、ジャバ王国が一人になっても、国家として存続するためには必要でしょう。」
「勝つために、私はこの高度な技術を提供するつもりですが、提供される側にも覚悟が必要なのです。」
「つまりイシュタル様は、この船は門外不出、機密が漏れたら、責任を持ってこの世界から抹殺せよと?」
私は無言でうなずきました。
この時、源兵衛さんが頭の中に割り込んできました。
「マスター、そのことの監視は、私が引き受けてもよいですよ。」
「無論、任せるつもりです、こき使ってあげますよ、ところで、べたな関西弁は使用しないのですか?」
「前にもいいましたが、マスターに愛されたいと念願していますので、これ以上の誤解は避けるつもりです。」
「ただいま念入りに、マスター好みのアンドロイド生体を製造中です、小雪やアリスが霞む容姿ですから。」
この人も、悩みの種になるのでしょうね……
アポロ執政に、
「管理は私がいたしますが、その覚悟をしていただきたいということです。」
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