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第二十七章 強襲 サンダーボルト作戦
04 アルジャの悲劇
しおりを挟む海兵隊は無人の荒野を行くがごとく、抵抗するものはなぎ倒して、アルジャの郊外へ陣を構えて、退去勧告を突きつけました。
アルジャ辺境伯は震え上がったが、退去勧告を受けて内心安堵、すぐに退去をすると返事しました。
そして配下の者に、退去の準備に取り掛からせました。
海兵隊の恐ろしい噂が、この辺境伯領まで広まっていたので、皆退去の準備を始めました。
徐々に混乱が起こり、アルジャの町ではついに暴動が始まったのです。
我先に逃げようとする者が、狭い城門に殺到しています。
「どけ!」
「道を開けろ!」
罵声が飛び交い、悲鳴が答えます。
まだ弓矢も交えていないのに、たくさんの住民が死傷する惨事となりました。
この中をアルジャ辺境伯は、住民を押しのけて逃げ出してきました。
「隊長、領主が逃げ出してきます、どうしますか?」
「ガルダ街道の道を開けてやれ。」
「しかし、その道には第一軍団が進軍していますが?」
「第一軍団には良い肩慣らしになるだろう。」
「大体、護る住民を置き去りにする奴らだ、死んでもらう方が、ためになるだろう?」
「なるほど。」
「すぐに入城しますか?」
「いや、アルジャの様子を見ようではないか、暴動をそのままにしておくと、馬鹿がいっぱい出る。」
「アルジャ側から要請があるまで、気長に待てばよい、その後、馬鹿を始末する。」
「というわけで、野郎ども、野営の準備だ。」
「隊長、なんか拍子抜けなんですが。」
「贅沢云うな、楽して勝てたんだ。」
海兵隊長が、部下と能天気な会話をしている時、見捨てられたアルジャの町は、阿鼻叫喚に満ちていた。
暴徒化した民衆が、略奪と暴行の限りを尽くして、ついに火の手が上がり始めたのです。
地獄絵図と化したアルジャの町から、女子供が逃げ出してきて、おずおずと海兵隊の陣地に来ます。
「第一中隊長、様子を見てこい。」
しばらくして戻ってきて、
「隊長、アルジャから逃げ出してきた者たちでした。」
「保護を求めて、代表者が隊長に面談を申し入れています。」
「連れてこい。」
「私に話があるのか?」
「私はアルジャで居酒屋をしている、グスタフというものです。」
「お願いです、アルジャに進駐して、治安を回復してください。」
「我らには、なんの得もないではないか?」
「このままアルジャを封鎖しておけば、自然とアルジャは滅亡する、我らは一兵も死なない。」
「……」
「まぁ、捨ててはおけないか、しかし、我らが進駐して治安を回復するのはたやすいが、町の民衆にもいらぬ犠牲が出るのは確実である。」
「敵の町へ進駐するわけであるから、その時、悪しざまに言われるのは本意ではない。」
「したがって、町の代表の要請があれば耳を貸そう。」
「隊長さん、いま町には、代表となるべき人はだれもいない、暴徒に皆殺しにされた。」
「あえていうなら、私などがそうともいえる。私はアルジャ商工ギルドの第三書記という肩書をもっているが、この私では駄目か?」
「貴方は後で、この件についての責任を取れるのか?」
「ここへ来ると決めた時に、命はないものと覚悟してきている、いまさら逃げることはない。」
「進駐経費は辺境伯の屋敷の物、全てでいかがか?」
「できるなら、貧しい者たちの財産は保障してほしいのだが……」
海兵隊長はしばらく考えていた。
「グスタフといわれたな。」
「貴方の言葉には嘘はないように思える。」
「よろしい、我が海兵隊は、いまよりアルジャ代表グスタフの要請により進駐する。」
「野郎ども、今よりアルジャへ入城し、暴徒どもを殲滅し治安を回復する。」
「第三中隊、先鋒を命じる、馬鹿どもを一人残さず一掃せよ、我らの勲章を増やしてこい。」
「おう」
海兵隊先鋒が入城すると、数の少なさをなめたのか、暴徒が襲撃してきました。
しかし歴戦の海兵隊、またたくまに暴徒の屍の山を作っていきます。
「報告、第三中隊は暴徒を鎮圧、本体の進駐に障害なし。」
海兵隊が進駐すると、町は累々たる死体の山。
その大半は暴徒がしでかした所業で、死体の損傷の惨いことは、後々までの語り草となったほどです。
アルジャの人口は、男は四分の一に、女は四分の三に減少、残った女性の多くは、未亡人になっていました。
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