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第二十六章 動乱前夜
06 麗人さんとの夜話
しおりを挟むダフネさんが大賢者としての用事で戻り、ジジさんと二人になりました。
「何か飲みますか?」
とジジさんに聞きました。
「いえ、お気づかいなく」と云いますが、
「肌を合わせた仲ですもの、たまには二人でお酒でも飲みましょう、私の世界のお酒ですが。」
「巫女様。」
「今日は月が綺麗です、月をめでましょう。」
私はカップ酒と缶ビールとポケットウィスキーを取り出しました、勿論、おつまみ付きです。
「巫女様、今日はどうしたのですか?」
「いや、イリーナ姉妹を見て、とことんアムリア皇帝に殺意を持ってしまって、なにかお酒でも飲みたくなってしまいました。ちょうどジジさんがいた訳ですよ。」
「巫女様は金髪の女は嫌いですか?」
「好きですよ、ダフネさんも金髪ですし、それに嫌いならば幾らなんでもジジさんを麗人にはしません。」
「私は肌を合わせた方々に対しては責任を取っているつもりです。」
「そのお酒はどうですか?私はこちらの缶ビールと呼ばれるお酒のほうが好きですが?」
「おいしいお酒ですね、気に入りました!」
ポケットウィスキーをぐい飲みしているジジさんです。
「ジジさん、そんな飲み方は……」
「何か、いいましたか!?」
遅かったようです。
「うぃ、私はだぁれ?」
「貴女は綺麗ね、だきだきしましょう。」
「確か、巫女様……」
速効で寝てしまいました。
ジジさん、お酒に弱いのですね、まぁ私も最初は弱かったのですけどね。
近頃はね……飲まずにはおれない日々が続きましたからね……
私はリリータウンに戻り、私が使っていた毛布を取ってきて、ジジさんに掛けてさしあげました。
「ジジさん、身体に障りますよ。」
「巫女様、側にいて……」
ジジさんが手を差し出しますので、繋いで差し上げました、荒れた手に驚きました。
昔、農作業をしていた方の手を見たことがありますが、その手に似ていました。
綺麗な人なのに……
「……ミレーヌ、寂しい。」
寝言を言っています。夢でも見ているようですが……
あまりいい夢ではないようですね。
今は私が側にいますよ、寂しいのは過去のことです。
私はジジさんに膝枕をしてあげて、その金髪をなでています、缶ビールを飲みながらですが。
年上の女性にいう言葉ではないかもしれませんが、可愛い人ですね。
ジジさんって睫毛が長いですね。
胸も大きいし、この胸を先ごろ私の物にしたのですが。
ちょっとエッチな気分になりそうです。
夜半過ぎに、ジジさんが目を覚ましました。
私の膝枕で寝ているのに驚いた顔をしています。
「ジジさん、少し夢見が悪いようでしたが?」
「そうですか、また昔の夢でしょう。」
「でも、巫女様の膝枕で寝られるなんて、良い夢でもあります。」
「でも、なにか胸がヒリヒリしますが、どうしたのでしょうか?」
「それは……その……ちょっとどさくさに……」
ええい、居直りましょう!
「この大きな胸が、私の物になったのかと思ったら、少しいじってしまいました。」
ジジさんが、くすっと笑いました。
「嬉しいですね、どうぞ、私の全てを捧げたのですから、この胸と言わず、どこでもどうぞ。」
「愛しています、巫女様……」
「ジジさん、ここに毛布が一つ、二人で包まって寝ましょう。」
私とジジさんは寄り添いながら、夜話をしました。
あまり人の昔は聞かないようにしていますが、一つ気になることを聞きました。
「農作業でも、娘の頃にしていたのですか?」
ジジさんは少し驚いた顔をしましたが、
「昔、私の家は貧しくて、生きるためには何でもしました。」
「農作業はしていませんが、幼いころより奴隷のように働いていました、でも、どうして農作業といわれたのですか?」
「手が荒れていたものですから、農作業をしていた方の手に似ていたのです。」
「なるほど、たしかに洗濯女をしていましたから、手も荒れているでしょうね。でも、この手は私の誇りです。」
「立派ですね、お一人で生きてきたのですか?」
「人は一人で生きていかなければと、考えています。」
「ジジさん、たしかにそうかも知れませんが、これからは、こんな私でも、いつも側にいます。」
「一人ではありません、夜空を見上げてみてください、この世界の月はいつも二つです。」
「二つの月は離れられない運命ですよ、私たちのようにね。」
「もっとも、私の場合、たくさん月があるようですが。」
ニヤッと二つの月が笑った気がしました。
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