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第二十六章 動乱前夜
05 お礼の荷物
しおりを挟むある日の夕方、お荷物が二つ届きました。
手紙があります。
「アンタの胸は、掴み心地良かったぜ、お礼に荷物を届けてやった。」
「添付の薬は目覚めの薬だ、アナスタシアなら荷物の由来がわかるだろう。」
「感謝するなら、俺に脚を開いて欲しいがね。」
何という手紙、あの事件のことが、沸々とよみがえってきました。
それにしても、あの男、とんでもない力があります。
警戒厳重なこのシビルに、いとも易々と潜入するなんて。
ジジさんとピエールさんが怒り狂っています。
「なんという警備ミス、巫女様、申し訳ありません。」
「仕方ないでしょう、たぶん、主席の手の者です。」
「とにかくアナスタシアさんを呼んでください、それに目覚めの薬とあります。」
「ダフネさんも呼んでいただけませんか?」
二人が来ましたので、薬をダフネさんに渡しました。
「多分、仮死状態から目覚めさせる薬と思われます、その袋、早く開けてください。」
ピエールさんが、騎士団に全員着剣と命じています。
ダフネさんが、
「早くしなさい、たぶん中身は人です、本当に死んでしまいます。」
居合わせた女官さんが、袋を開きました。
皆、言葉を飲みました。
出てきたのは可愛らしい少女、双子の少女です。
「アナスタシアさん、良く見てください、知り合いのはずです。」
「イリーナ!エリーナ!」
「イシュタル様、私のいとこです、叔母の娘たちです。」
「ダフネさん、早くその薬を!」
私はダフネさんに言いました。
二人はしばらくして目を覚ましました。
「イリーナ、エリーナ、私が分かる?」
「貴方たちのいとこのアナスタシアよ。」
「アナスタシアさま、私は目が見えません、エリーナは喋れません。」
「私たちは皇帝にとらえられ……ひどいことをされ、このような身体にされました。」
「皇帝は私たちに飽きたので、明日殺すと云っていたのですが、なにかの褒美に、私たちをある方に渡したのです。」
「その方が私たちを配下の方を使って、ここまで逃がして下さったのです。」
「その方は私たちに、アナスタシアさまのご主人に、身体を治してもらえと云いました。」
私は聞きました、「だれです、その恩人の方は?」
「言えません、命にかけて言えません、誓ったのです。」
「アナスタシアさん、二人をお願いします。明日、傷をみてみましょう。」
「ダフネさん、ジジさん、あとで御座所へ来てください。」
私はダフネさんに聞きました。
「これはどういうことでしょう?」
「正直、わかりません。」
「主席の手の者の仕業とだけはわかりますが、なんの意味があるのでしょうか?」
「しかし巫女様、ここの警備をあざ笑うにしては、リスクが大きすぎませんか、なにの得もありません。」
とジジさんが云います。
三人で話し合いましたが、全然わかりません。
「……」
「とにかく、警戒を厳重にいたします。」
とダフネさんが云いました。
ジジさんが頷いて、今日はお開きです。
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