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第七十三章 神在(かみあ)り騒動
供食(きょうしょく) 其の一
しおりを挟む茜さんが、
「おじい様、この度作り上げる惑星世界、長きにわたりアスラを支えてくれた、最後の使いの人々の星について、私たちの組織に加盟させるために、皆さんはかなりの努力をしなければなりません」
「出来ましたらこの方たちに、お言葉を賜れませんか?」
ここで天津吉川天之御中主(あめのみなかぬし)様がおもむろに口を開きました。
「いま茜がいった世界のことについて、よろしく計らってほしい」
「世界を進化成長させる為に、辛い思いをさせた」
「ここらで、その犠牲の上に築かれた世界を、満喫させてやりたい」
「また、皆はこれからも、孫娘たちとともに苦しき道を歩んでもらうことになろう」
「出来るなら孫娘たちと共に、道を歩んでほしい」
「私たちは最早、孫娘たちのような力はない、引退したと思われればいい」
「しかし肩の荷を降ろして始めて、孫娘たちを愛おしいという感情が湧いてきた」
「その感情はいま目の前にいる、貴女たちにも感じる」
「私にとって、貴女たちは可愛い孫娘でもある」
「そしてそれゆえに、貴女たちにお願いしたい」
「この小さき世界を、よろしく計らってほしい」
サリーさんが、
「愛人一同を代表して申し上げます、必ず直轄惑星に登録させていただきます」
「ありがとう、見れば昼餉はまだのように見える、私たちは皆と一緒に、供食(きょうしょく)したいと思う」
天津吉川高御産巣日様がおっしゃいました。
慌てたのが美子さんと茜さん、
「神饌を用意するのには、いささか時間が……」
「皆が食するものでよい、我らもこれからは、そのような世界に住まうわけだから」
「お父様、皆様の中には、日本に馴染みのない方がほとんど、イスとテーブルでの供食(きょうしょく)にさせていただきますが、よろしいでしょうか?」
「それは当然と思う、我らもイスに座ろう」
「では別室に用意しますので、しばらく皆と歓談してください、サリーさんお相手をお願いします」
サリーさん以下、一人一人が直接に神前にたち、自己紹介などすることになりました。
別室で二人は相談の結果、魚の入ってない『ちらし寿司』と、白味噌の雑煮を出しました。
といっても美子さんが、神速で作り上げた手作りたもので、莢や隠元、錦糸玉子、刻み海苔、紅生姜で綺麗に飾られています。
「一応卵は、大豆蛋白から作ったものですので、全て植物性です、雑煮のほうは奈良のもので、サトイモ、大根、豆腐が入っています」
雑煮のお餅は焼餅でした。
ささやかですが、お神酒もつけられていますが、これは茜さんの知恵です。
茜さんがイスやテーブルを出し、ライラさんやペルペトゥアさんをこき使って、セッティングをしています。
「ねぇ、スプーンとフォークも並べておくわね、雑煮のお餅は後から各自で焼いてもらいましょう、お汁のおなべはテーブルの上においてね♪」
いつの間にか、ガスコンロなど出している茜さん。
「もう、だんだんカジュアルになってるわ」
「いいじゃない、私一日一緒にいたけど、お父様もお母様もおじい様も、意外に気さくでお茶目なのよ」
「なにかイメージが……」
「私たちの両親、この娘にしてこの親ありよ!」
茜さんのこの言葉に、ショックを受けたような美子さんです。
「どこまでも堅苦しいのが美子の欠点、日々は楽しく明るく過ごすものでしょう、そうそう、ぜんざいも忘れないでね、あげ餅もよ♪」
「とにかく出来たわ、姉さん、皆さんを呼んできてよ」
先ほどの堅苦しい雰囲気はどこへやら、愛人さんたちと神さまは、楽しそうに歓談しながらやってきました。
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