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第七十三章 神在(かみあ)り騒動

湯船の会話

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 エラムウイッチリゾートの大浴場は、夕刻から愛人専用です。
 
 湯船でシルビアさんが、エーデルガルトさんと話しています。
「驚きましたね、でもとうとう愛人待遇とはね、でも明日のことを思うと、不安になりますね」

「本当ですね、まさかヴァカリネ様の、ご両親様にご挨拶とはね」
「エラムの戦争が終わって百年たつかしら、あの頃はレムリアとかホラズムとか、小さい地域でいがみ合っていた、それが全て」

「奴隷制はいまでもありますが、そんなに悪いものでもない、所有者が最低限の生活をさせる義務がありますからね、食事は出来ます」

「今のエラムの女たちは、恵まれ過ぎて不安になります」
「私たちがご両親様のお気にさわれば、このエラムはどうなるのか……」
 
「とにかくアナスタシア様がおっしゃったように、絶対ご機嫌を損ねるわけにはいきません、慎み深くしなければ……」
「あら嫌だ、私、婚姻前の花嫁のときを思い出したわ、ドキドキしてきましたわ」
 シルビアさん、一応未亡人でしたからね。

 洗い場では、ダフネさんとビクトリアさんが、
「困った、どうすればいいか分からん、しかしご両親様に嫌われるわけにはいかん」
「とにかく清楚が肝要よ、優美に振舞うのよ」

「私には一番苦手なことだ、ダフネがうらやましい」
「私だって緊張で吐きそうよ、でも何とかしなくては、嫁と認められなければと思うと……」
「ビクトリアは私がうらやましいっていうけど、私はサリーがうらやましいわよ」

「確かにな、それよりもダフネ、アテネは大丈夫か、真っ青な顔をしていたぞ」
「それをいうならアリスもでしょ、神様の前でたわごとをいいかねないわよ」

「アリスは大丈夫だろう、小雪と深雪が付いていたから、でもアテネは心配になってきた、連れてくる」

 アテネさん、その頃、呆然として湯船に浸かっていました。
「私は嫌われる……」
 なんてつぶやいています。

「アテネ、何をしている、こっちへこい、私とダフネがついてやるから」
「ビクトリアさん……私は嫌われる……もうだめだ……」
 アテネさん、ビクトリアさんに無理矢理引っ張っていかれて、身体を洗われています。

 こんなことがあちこちであったようです。

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