86 / 108
第七十三章 神在(かみあ)り騒動
湯船の会話
しおりを挟むエラムウイッチリゾートの大浴場は、夕刻から愛人専用です。
湯船でシルビアさんが、エーデルガルトさんと話しています。
「驚きましたね、でもとうとう愛人待遇とはね、でも明日のことを思うと、不安になりますね」
「本当ですね、まさかヴァカリネ様の、ご両親様にご挨拶とはね」
「エラムの戦争が終わって百年たつかしら、あの頃はレムリアとかホラズムとか、小さい地域でいがみ合っていた、それが全て」
「奴隷制はいまでもありますが、そんなに悪いものでもない、所有者が最低限の生活をさせる義務がありますからね、食事は出来ます」
「今のエラムの女たちは、恵まれ過ぎて不安になります」
「私たちがご両親様のお気にさわれば、このエラムはどうなるのか……」
「とにかくアナスタシア様がおっしゃったように、絶対ご機嫌を損ねるわけにはいきません、慎み深くしなければ……」
「あら嫌だ、私、婚姻前の花嫁のときを思い出したわ、ドキドキしてきましたわ」
シルビアさん、一応未亡人でしたからね。
洗い場では、ダフネさんとビクトリアさんが、
「困った、どうすればいいか分からん、しかしご両親様に嫌われるわけにはいかん」
「とにかく清楚が肝要よ、優美に振舞うのよ」
「私には一番苦手なことだ、ダフネがうらやましい」
「私だって緊張で吐きそうよ、でも何とかしなくては、嫁と認められなければと思うと……」
「ビクトリアは私がうらやましいっていうけど、私はサリーがうらやましいわよ」
「確かにな、それよりもダフネ、アテネは大丈夫か、真っ青な顔をしていたぞ」
「それをいうならアリスもでしょ、神様の前でたわごとをいいかねないわよ」
「アリスは大丈夫だろう、小雪と深雪が付いていたから、でもアテネは心配になってきた、連れてくる」
アテネさん、その頃、呆然として湯船に浸かっていました。
「私は嫌われる……」
なんてつぶやいています。
「アテネ、何をしている、こっちへこい、私とダフネがついてやるから」
「ビクトリアさん……私は嫌われる……もうだめだ……」
アテネさん、ビクトリアさんに無理矢理引っ張っていかれて、身体を洗われています。
こんなことがあちこちであったようです。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。
せいめ
恋愛
メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。
頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。
ご都合主義です。誤字脱字お許しください。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
異世界TS転生で新たな人生「俺が聖女になるなんて聞いてないよ!」
マロエ
ファンタジー
普通のサラリーマンだった三十歳の男性が、いつも通り残業をこなし帰宅途中に、異世界に転生してしまう。
目を覚ますと、何故か森の中に立っていて、身体も何か違うことに気づく。
近くの水面で姿を確認すると、男性の姿が20代前半~10代後半の美しい女性へと変わっていた。
さらに、異世界の住人たちから「聖女」と呼ばれる存在になってしまい、大混乱。
新たな人生に期待と不安が入り混じりながら、男性は女性として、しかも聖女として異世界を歩み始める。
※表紙、挿絵はAIで作成したイラストを使用しています。
※R15の章には☆マークを入れてます。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる