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第六十九章 仮の宿
神人(ゴッドメンシュ)
しおりを挟む「ティマト様、どうされましたか?」
水汲みから戻ったライラさんが、心配そうな顔で声をかけてきました。
「ごめんなさい、ちょっと考え事をしていたので、そろそろ寝ますか」
「ティマト様、お聞きしてもかまいませんか?」
「何を聞きたいの?」
「一度、クイント様に聞いてみたかったのですが、なぜ、この世界は争いがあるのでしょう?」
「人はもっと無垢な心ではないかと、思うのです」
「皆が無垢な心のままであれば、世界は違う形であったのではないでしょうか……」
「そうね、誰もが考える問題よね」
「人々が無垢な心で日々を過ごせば、いつかは貴女が望む世界が実現するでしょうね」
「ティマト様もライラも、心が優しいのですよ」
「たとえ無垢な心で人が生きていたとしても、必ず矛盾がでてくるものでは、ないのですか?」
ペルペトゥアさんの言葉です。
……矛盾……人が存在すれば、必ず後が残る。
たとえ魂が無垢として、別の高次の世界に移行できたとしても、何かしら残る。
誰がそれを片付けるのか……片付けるには、自らと同じぐらいの存在でなければ、ならないのでは……
……そうよ、薄々思っていたことだけど、禅譲よ……
神は幾多の失敗の後、自らの後継者を望まれた……
そして来るべき世界を、先の世界より良きものとするために、お心を尽くされた。
来るべき世界を、私は歓喜をエネルギーとすべきとした。
大神様は、時の輪から解脱するために神(かみ)さられ、幾つもの時の輪の中から、私が選んだものが、御心にかなったのだろう。
だからおつくりになった世界の、エネルギー源ともなった、利己特性の対処を私に任された。
これが最後の神の試練、終わりの終わり、アスラの世界を塗り替えるのよ!
人が生きれば、何らかの後が残るのよ。
そしてその後始末は後継者に託すしかない。
先輩としては精一杯のことをし、後輩はそれを受け継ぎ、自らの理想を作り上げるもの。
私はアスラの最後のヴァルナ評議会議長、ヴァルナの娘……
そして来る世界の神人(ゴッドメンシュ)……神(ゴッド)になるにはまだまだよね……
「ペルペトゥアさん、ライラさん、ありがとう」
「二人の言葉ですっきりしたわ」
「私は関りを持った世界を抱く、私のやり方で、守り育てさせていただくのよ」
……私は私の大事な方々、愛した女たちの住む世界を守り育て、皆で心静かに日々を送るのよ。
利己特性という毒薬の代わりに、喜びという歓喜のエネルギーをスパイスとして、世界を染めればいいのよ。
それは私の望みでもある……
「さて食事が遅くなりましたね、今夜はおいしいものを食べましょう」
「ティマト様、出来ましたら、私がお食事を作りたいと思います、材料などお出し願えませんか?」
「私はティマト様の夜の奴隷、身の回りをお世話いたしたいのです」
「そうですか……では、お願いしますか……」
「何がいるか想像してみてください、それを出して差し上げます」
ライラさん、小さいフライパンと、幾つかの野菜、根菜類を念じています。
あと、ひき肉ですね。
ミートボールと野菜の、煮込み料理みたいです。
小さいフライパンで、穀物の粉を水と少量の塩で練ったものを薄く焼いています。
多分テラでいうところのチャパティ、アフガニスタンあたりのパン?に似ているように思えます。
ここで、このような手料理をいただけるなんて……
「ライラは料理が上手いのだな!私はソーセージを焼くしか出来ない」
ペルペトゥアさん、凄く感心しています。
「ティアマト様、ライラはきっと一流の料理人ですよ」
「農場では、このような料理はおめにかかれない」
「クワドロあたりの晩餐に、出てくるのではないか?」
「とにかく温かいうちに食べませんか」
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