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第六十九章 仮の宿

時の輪は一つなのか?

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 ……夜がありえない方法でやってくる世界……
 今日一日、のんびりと歩きながら観察したのだけど、地平線が丸くない。

 遥か彼方には山並みが見えるが、視界の全てに連なっている……平面の世界……
 高さの上限はあるのだろうか……
 
 美子さん、意識を集中し高く飛んでみました……
 高さがある……えっ、足元が……ついてきている……

 やはりこれは物理空間ではない……
 意志の空間?

 幽子の振る舞いが、物理法則にのっとっているのか……
 ヒルベルト空間?数学理論上の空間としては認識できるが……

 ありえないのでは……
 いや、認識すれば空間は存在する、私は幾度も、このようなことに出会ったではないか……

 具現化……そして神の贈り物……
 望めば作り上げる……

 コータヴィーが作り上げた世界……

 いや、ここは天之御中主(あめのみなかぬし)様のおつくりになった空間、コータヴィーは罰せられた存在……
 違う、ここは天之御中主(あめのみなかぬし)様の本体、大神がおつくりになった世界……

 私が出会っている天之御中主(あめのみなかぬし)様は、大神様の一部に過ぎない……

 私は数々の名を持ち、数々の姿で現れている。
 大自在天女、そして大自在天、幽冥主宰大神 (かくりごとしろしめすおおかみ)などなど……

 私は仮想制御戦闘能力を身につけ、今では同時に幾つもの時空間に存在できる……

 先ほど私は、男の心で女の心を眺めることが出来た。
 そして目的に向かって、互いに利用しながら進んでいくことが出来た……

 パラレルに存在でき、そして自らを数々の姿に表れることができる……こんな存在を私は一つ知っている……

 私の本名といわれる、アナーヒターともつながる……観音の普門示現(ふもんじげん)……

 三十三は私の命数、そして三十三観音、知らず知らずに幾多もの世界を救い、そして幾多もの名前で導いてきた。
 余りに合致するではないか、そもそも観音は男であり女でもある……

 ……玄奘三蔵は観自在と訳したーー智慧をもって観照することにより自在の妙果を得たるとの意味ウィキペディア、観音菩薩より参照ーー、そして菩薩とは悟りを求めて努力している存在、苦しみながら人々を導く存在……

 しかし、この三千世界は観音では救えない……

 慈悲だけでは救えない……このコータヴィーのカタカムナと呼ばれる世界は……
 私は『黒の巫女』、英断の乙女もこの身に宿している……

 思えばエラムの主席は、英断の乙女を待ち望んでいた。
 『使いの人々』の、魂の一部を受け継いでいた移動端末……因果はめぐる……ん

 時の輪は一つなのか?

 パラレルが在る以上、時は絶対ではない……
 私は望んで『時の輪』をいまある姿にした。
 それは私たちが存在する上で、望ましくない姿を排除したからだ。

 『時の輪』は幾つもあるのでは……

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