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第六十八章 『天候予定表』は雨

ビッグモードで設営

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「外に出てみますか?」
「はい」

 外は風が吹きすさんでいました。
 雪こそ降っていませんが、ビューフォート風力階級での6、雄風ぐらいでしょう。

「結構吹いていますね、潅木の陰に、テントを設置していたのでわからなかったですが」

「そういえば、今日から風の日でした」
「これから徐々に激しく吹きます、明後日になればやむ筈です、三日ほどは動かないほうが良いと思われます」

 二人はそそくさとテントに避難したのは、言うまでもありません。

「ねぇ、この世界では、天気は決まっているのですか?」
「そうです、全てはクインク様がお出しになる、『天候予定表』に定められています、これです」

 ペルペトゥアさんは農園に赴任するために、買い求めていたのです。

「これによると明日は雨の日ね、しかも豪雨とあるわ」
「明日は豪雨なのですか!不味いですよ」
「このあたりは盆地になっているので、よく雨水がたまるのです」
「豪雨の日には、膝ぐらいまでつかりますよ!」

「三日ね……テントヘルプ起動」
 改二は音声にも反応するようです。

「テントヘルプです」

「情報によると、風は三日ほど続く上、明日は豪雨、現在地は膝ぐらいまで水没の危険ありとの事、適切な安全行動を計算、実行せよ」

 しばらくして、
「広域探査を実施、風上32キロ先に小さな丘があり、潅木がいくらか密集しています」
「本テントは水上航行可能ですが、丘への移動がより安全と判断、最大速力で、ただいまより移動します」
「風にあおられぬように、出力を上げますのでご注意ください」

 カチャと音がして、八個の小さい車輪が、底盤より出て、テントは走り始めたのです。

 改二テントは、最大速力で走り始めました。
 走行不能地帯があちこちにあり、そこを避けながらですから、三時間ほどかかりましたが、なんとか目的の小高い丘にたどり着きました。

 灌木が密集といったも、パラパラと二三の群落がある丘ですが、確かに盆地の中の、独立峰のようになっていました。
 全方位が見下ろせる場所です。

「たしかに水没の危険はありませんが、これは風にあおられますね、早く灌木の中に入らなくては、まずいですね」

 テントはのろのろと、灌木の中に分け入ります。
 といっても、灌木と灌木の間ですので、前後に風が吹き抜けます。

「テントヘルプです、本テントの位置は、風に対して脆弱性があります」
「アンカーを周囲に打ち込む必要が発生しました」
「この結果、機動性が落ち、秘匿性が低下いたします」
「よって回避行動優先から、防御優先に切り替えますが、よろしいでしょうか」
 
「承認しますが、出入り口を風下側に向け、広域探査を続けなさい、外は見えるようにしていてね」
「それから設営するなら、ビッグモードに切り替えなさい」

「そのようにいたします、ビッグモードに移行するため、すこし場所を移動します」
 ビッグモードとは2.7メートル角の移動可能の大きさを、さらに拡大して4.5メートル角にするもので、固定設置となり、移動は出来ません。

 改二テントは、何とか潅木に囲まれた設営可能の場所に移動、拡大した後、かすかな振動がありました。
 どうやらアンカーを打ち込んだようです。

「やれやれ、今日は足を伸ばして寝れそうね♪」

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