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第六十五章 捨てられた世界
最後の試練
しおりを挟むおやっとした顔の美子さんでしたが、何事もない顔で、
「分かりました、お心のままにいたします」
「汚れ仕事をたのんで申し訳ない、すべてを抱きまいらせてくれ」
「いえ、でも少し情報を、いただけませんか?」
「私も詳しくは知らない、ただ封印空間は内部からの脱出は出来ない、デーヴァの時の牢獄みたいなものだ、私も入ったことはないのだ」
「ナノマシンは使えませんか?」
「自らの五体を使うしかない」
「道は?」
「私が送る、そしてあなたが望めば戻す」
「それでは、いってまいります、送ってください」
美子さんの全身が輝くと、掻き消えたのです。
「天之御中主(あめのみなかぬし)様!どういうことですか!私たちの娘を殺す気ですか!」
神産巣日神が悲鳴のような声をだし、詰め寄っています。
「封印空間?あそこは手に負えぬ幽子を、世界を終わらすときのために、具現化させ物質世界に閉じ込めた場所と聞いています」
「世界を修復できないほど濁ったときに、解放するものどもの世界、なぜ私たちの愛する娘を放り込むのですか!」
「神産巣日神、まずは天之御中主(あめのみなかぬし)様のお考えを聞こうではないか、お答えによっては私どもにも考えがあります」
高御産巣日神、かなり押し殺した声で、神産巣日神を制しました。
「最後の試練だ、あのものたちを何とかしなければ、せっかくここまで、美子が育て守った世界は、戻ってしまう」
「貴方たちも私も、ご本体の魂のほんのひとかけら、あの者たちを滅する力はないのだ」
「あの者たちを滅する力は、私たちのご本体のみ、また滅すれば、世界は元に戻ってしまう、世界の成り立ちに組み込まれているのだ」
「そのようにご本体がつくられたのだ」
「ダイティヤ一族は利己特性の塊、その波動が欲界に伝わり、世界を進化させていた」
「いままだ、これを滅すれば波動は制御を失い暴走、全ての知性体は、結果的に殺しあうことになる」
「しかし、これからも知性体は進化が必要だ、どこかでこの者たちを、心穏やかに変えなくてはならない、その時がきているのだ」
「あなたたちが知らないのは当然、ここまで来た者はいないのだから、私の本体は幾度となく、人を育てられたが、ここまで来る前に挫折した」
「それがデーヴァのインペラトルであり、アスラのコータヴィーなのだ」
「ご本体は『調和』にあうためには、『有』をつくり三界を生み出し、その脱出のゲートである、『非有想非無想処』を創造する必要があった」
「そして『有』を託す者が必要、幾度とない失敗の果てに、その者を試すために、罰すべきコータヴィーを残され、いやでも対峙させるために、世界を連動させたのだ」
「そしてコータヴィーの波動は、世界を進化させたが、このままでは破滅する、残しても破滅する」
「『有』を託す者は、この試練を乗り越えなくてはならない」
「しかし案ずることもないと思う、ご本体は美子を見て、去られたのであるから」
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