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第六十五章 捨てられた世界
最後の御魂に申し上げます
しおりを挟む「ここまでやってきて、『有』の世界に染まり、始めて言葉というものを感じた……」
「三人の話は感じていた、私が天之御中主、というよりそのほんの一部だ」
さらに言葉をつづけて
「もはや私には、時は俯瞰できない、汝の力に、この世界は託されている」
「私の願いは、汝にこの世界の全ての魂を、私たちの待つ世界まで導いてきてほしい」
「その為に『大神』と称して、汝を導いてきた」
「世界の幽子、魂を浄化して、私たちの待つ世界に、導いてほしい」
「しかし其の前に汝の活力、歓喜が満ち満ちた世界を作り出してほしい、ここは『欲界』、このような望みも許される」
元造化三神報恩之祝詞(だいげんぞうがさんじんえほうおんののりと)を唱えた『美子』さん、唱え終えて、
「天之御中主(あめのみなかぬし)様の、最後の御魂に申し上げます」
「どうぞお二方と同じく、あなた様も、私をご指導願えませんか、お三方のお力をお借りして、この世界を望ましい世界にしたいと思います」
「良きかな、私も汝を美子と呼ぼう、さて美子よ、この残りし世界は『有』、従って有るものは保てない」
「汝は輪廻を乗り越えようと考えている、しかし『有』である以上、終わりはあるのではないか、そこをどうするのか?」
「まずは『有』を全うすることです、不本意な終わりをなくすことと考えます」
「それが出来たとき、次の世界が現れるでしょう」
「いきとしいけるものを、『大神』様の待つ世界まで導くためには、そのような世界にすることが、最初の仕事と考えます」
「不本意な終わりをなくす……なるほど……そのためには、さらに『予期せぬ終わり』を迎えさせないようにしなくはならぬと思うが、どうかな」
「事故とかですね、しかし本人には分からぬ罪ゆえの罰があります、いわゆる輪廻の業ですが、これはなくすわけにはいきません」
「業は自らの行いによって、消さなければなりません、魂、幽子が清らかにならなければ、『予期せぬ終わり、不本意な終わり』は、なくならないでしょう」
「なくすわけにはいかないのです、しかし御安心ください、時の暴走というべき現象は修正しました」
「利己特性は弱まっています、必ずいつかなくなるはずです、さすれば『欲界』を抜け出すことが可能となるはず」
「其のときには、新しい世界が見えているはずです」
「そして最終的には、『大神』のお待ちになる世界にたどり着けると考えております」
「いまだ時はめぐっていますが、かならず皆様方を、目的の世界にお送りできるはずです」
「道は定まって、あとは実行するということかな」
「これは基本的な方針です、道は思い通りにはつながらぬもの、凸凹もあればぬかるみもある、果ては道がなく、造らねばならないこともあります」
「この先も苦しいことが続くはずです、しかし私は今まで、少なからぬ試練を乗り越えてきた自負があります」
「先達は居られましたが、新しい世界でそれをなさねばならぬ以上、自らが道を開く必要があります」
「どうか皆様のお知恵をお貸しください」
「そうか……いまの言霊、確かに聞いた、我も力を貸そう……が、しかし、最後の障害が残っている、それを正さねばならない」
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