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第六十四章 神(かみ)さり
幽冥主宰大神 (かくりごとしろしめすおおかみ)
しおりを挟む本殿内は結界、どこともしれない異空間なのでしょう。
距離間もない、明らかに物質の空間ではありません。
ただ『仄暗い』が、『在る』だけです。
思い描いた本殿の景色ではないのはたしかです。
すると『仄暗い』中から、一個の起動幽子がポツンと現れます。
そしてそれは見る見る『仄暗い』を圧倒し、幽子の満ち満ちる世界が現れたのです。
そしてさらに、一群の幽子が凝縮を始め、固まっていきます。
ボーっとした影、言葉にすればそのような姿でしょう。
その塊はこちらをじっと見ているように思えます。
……大自在天女か……
「私は造化の三柱の神に、お会いしたいとやってきました、どうかあわせていただけませんか?」
……私を倒さねばならぬだろうよ……
「失礼ながら、貴方様の御神名をお聞かせできませんか?」
……幽冥主宰大神 (かくりごとしろしめすおおかみ)、それ以外にもいくつもの名前を持っている。
大黒天といえば貴女は理解するだろう……
「大黒天……ならば大自在天……」
……世界は幾つも同時に存在し、私はいくつもの名前で世界に存在する。
同じく冥界も幾つも同時に存在する。
もはや問答は無用のはず、貴女がここまで来た以上、世界の在り様は決している。
直会(なおらい)が残るのみ。
共に神の神饌、御贄(みにえ)になった。
どちらが残るかは、私と貴女が決めること……
私は冥界の主、そして貴女は現世の主、この世界のありようは、私たちで決せよとの大神様の神意。
幾つもの試練を乗り越え、この場に立つものが来たとき、私はそのものを倒すために存在している……
「御贄(みにえ)とは、神に捧げられた世界といわれるのか……」
「大神様はそのような御神意である、私は来るものと、共に喰らうために存在している」
「ここまでやってくる以上は、大神様の御神意に逆らうもの」
「しかし類まれなる大神様は、私と共に喰らうものの意思を大事にされている」
「ここまで来たもので、さらに世界を広げる可能性のあるものがいるなら、さらなる高みの道を用意された」
「互いの御贄(みにえ)を供えての神饌、貴女が得心したら始めよう」
「最後に一つお聞かせください、幽冥主宰大神 (かくりごとしろしめすおおかみ)様は私なのですか?」
……貴女の思っている通り、そして違うともいえる、こういえば貴女は理解できるだろう……
幽冥主宰大神はこのようにいわれ、そして初めて『声』を発したのです。
「始めよう」
見る見る幽冥主宰大神の影は、姿を変えていきます。
一つの紐のように捩れながら巨大な蛇のような姿です。
巨大な蛇という以上、大物主様のようです。
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