24 / 108
第六十四章 神(かみ)さり
壮大な神の計画
しおりを挟む惑星エラム、その絶対的な時空間座標とも呼べる、廃墟の教会の崩れかけた祭壇。
エラムの有史以前の神話時代のさらに前、レムリアの祖先が誕生する前のアスラの統治時代の初め……
そこに私、吉川洋人の幽子が現れている……私は洋人ではないのか?……
いや、洋人は私の中に『在る』、そして私は『ミコ』として『ある』……
ならば遥か時の彼方に存在していた、『洋人』はやはり私なのか……
『時』を超越して、私は存在していたのか……
クロノス……『時』をつかさどる神、ラグナロクの最後で、私は大自在天と始めて会った。
その時、大自在天は自らを、『時』をつかさどる神といった。
そして彼は私の分身だった……
私は『時』をつかさどる神、ならば洋人が、遥かな時の彼方に存在しても不思議ではない……
……
私は愚かだった……
全ては目の前に広げられていた……
私は造化三神により創造され、神の『しもべ』として、この三千世界をよりよきものにすべきと、力を尽くしていた……それは事実なのだ。
しかし全ては『大神』様のお考えだった。
アスラもデーヴァも、この世界には存在しなかった。
かつてあった世界の幻、そう、その幻の歴史を種に、この世界は作られた。
そしてより良き世界になれるように、私は造られた……インペラトルであったブラフマーも、造られた存在?
いや、彼はかつてあった世界の、デーヴァの指導者の幽子?
違う、彼はかつてあった世界の、デーヴァの指導者の擬似人格、デーヴァ神族の理想の指導者像ではなかったのか……
そして私はかつてあった世界の、アスラの指導者の擬似人格、アスラ神族の理想の指導者像、ルシファー……
二つの神族は出会ったことはなかった……どちらも滅亡したのではないか?
アスラ神族もどこかへ去ったと考えたのは、間違っていた。
デーヴァ神族と同様に滅亡していたのでは……
かつてあった三千世界は存在できなくなった……活力がなくなった故に……
『大神』は再びやり直そうとした……
鏡界をつくり、テラの歴史にあるノアの箱舟のように、幽子のオリジナルを運んで、世界を作り直した。
そしてより良き明日、自ら理想とする世界を造るために、全てを創造したのだろう……
すべては、アスラの女性体が男性体を撃破したところまでは、多分そっくりそのまま進んだはず。
そこからの世界が衰退していく、それを阻止するためにルシファーは誕生させられた……
そのために、まずは洋人を誕生させ、洋人の欲望を具現させる世界、惑星エラムを作り、来るべき美子のフィールドとしたのだ……
世界を引き継ぐ者のために……
なんとも壮大な神の計画か……
問題はその後、『大神』は何をお考えなのか……
全てをお見通しの神の更なる神、私の思いなど折込済みのはず。
私に出雲大社の御客座を見せた以上、私が何を思うかもご存知のはず。
つまりは真実を知らせ、私の思い通りにしても良い、そうお考えと私は思う。
しかし神のご計画を、いささか修正する以上は、それなりの代価を支払わねばならない。
この件に関しては、私の努力が求められているのだ。
……『神殺し』を強いられる恐れがあるが……『神殺し』の前に『親殺し』ともなる、それだけは避けたい……
造化三神は私にとってかけがえのない方、多くの試練を受けたが、私をいつくしんでくれた父と母。
なんとしても、『大神』様の規定の方針は改めていただく……
とにかく神の御許にたどり着かなくては……
多分、たどり着くまで、多くの触りが起こるはず。
それも覚悟の上、幸いにも命はとられないとは確信している。
最悪は、記憶が入れ替わるだけだろう。
私は利用価値があるはず、『大神』といえど、私を失うことは計画を再びやり直すことになる。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
義妹がいつの間にか婚約者に躾けられていた件について抗議させてください
Ruhuna
ファンタジー
義妹の印象
・我儘
・自己中心
・人のものを盗る
・楽観的
・・・・だったはず。
気付いたら義妹は人が変わったように大人しくなっていました。
義妹のことに関して抗議したいことがあります。義妹の婚約者殿。
*大公殿下に結婚したら実は姉が私を呪っていたらしい、の最後に登場したアマリリスのお話になります。
この作品だけでも楽しめますが、ぜひ前作もお読みいただければ嬉しいです。
4/22 完結予定
〜attention〜
*誤字脱字は気をつけておりますが、見落としがある場合もあります。どうか寛大なお心でお読み下さい
*話の矛盾点など多々あると思います。ゆるふわ設定ですのでご了承ください
【1/15公開終了予定】捨てられ聖女は契約結婚を満喫中。後悔してる?だから何?
miniko
恋愛
「孤児の癖に筆頭聖女を名乗るとは、何様のつもりだ? お前のような女は、王太子であるこの僕の婚約者として相応しくないっっ!」
私を罵った婚約者は、その腕に美しい女性を抱き寄せていた。
別に自分から筆頭聖女を名乗った事など無いのだけれど……。
夜会の最中に婚約破棄を宣言されてしまった私は、王命によって『好色侯爵』と呼ばれる男の元へ嫁ぐ事になってしまう。
しかし、夫となるはずの侯爵は、私に視線を向ける事さえせずに、こう宣った。
「王命だから仕方なく結婚するが、お前を愛する事は無い」
「気が合いますね。私も王命だから仕方無くここに来ました」
「……は?」
愛して欲しいなんて思っていなかった私は、これ幸いと自由な生活を謳歌する。
懐いてくれた可愛い義理の息子や使用人達と、毎日楽しく過ごしていると……おや?
『お前を愛する事は無い』と宣った旦那様が、仲間になりたそうにこちらを見ている!?
一方、私を捨てた元婚約者には、婚約破棄を後悔するような出来事が次々と襲い掛かっていた。
※完結しましたが、今後も番外編を不定期で更新予定です。
※ご都合主義な部分は、笑って許して頂けると有難いです。
※予告無く他者視点が入ります。主人公視点は一人称、他視点は三人称で書いています。読みにくかったら申し訳ありません。
※感想欄はネタバレ配慮をしていませんのでご注意下さい。
※コミカライズ、書籍化に伴い、1/15迄で公開を終了させて頂く予定です。
転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。
克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位
死んだのに異世界に転生しました!
drop
ファンタジー
友人が車に引かれそうになったところを助けて引かれ死んでしまった夜乃 凪(よるの なぎ)。死ぬはずの夜乃は神様により別の世界に転生することになった。
この物語は異世界テンプレ要素が多いです。
主人公最強&チートですね
主人公のキャラ崩壊具合はそうゆうものだと思ってください!
初めて書くので
読みづらい部分や誤字が沢山あると思います。
それでもいいという方はどうぞ!
(本編は完結しました)
異世界楽々通販サバイバル
shinko
ファンタジー
最近ハマりだしたソロキャンプ。
近くの山にあるキャンプ場で泊っていたはずの伊田和司 51歳はテントから出た瞬間にとてつもない違和感を感じた。
そう、見上げた空には大きく輝く2つの月。
そして山に居たはずの自分の前に広がっているのはなぜか海。
しばらくボーゼンとしていた和司だったが、軽くストレッチした後にこうつぶやいた。
「ついに俺の番が来たか、ステータスオープン!」
奪われたものは、もう返さなくていいです
gacchi
恋愛
幼い頃、母親が公爵の後妻となったことで公爵令嬢となったクラリス。正式な養女とはいえ、先妻の娘である義姉のジュディットとは立場が違うことは理解していた。そのため、言われるがままにジュディットのわがままを叶えていたが、学園に入学するようになって本当にこれが正しいのか悩み始めていた。そして、その頃、双子である第一王子アレクシスと第二王子ラファエルの妃選びが始まる。どちらが王太子になるかは、その妃次第と言われていたが……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる