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第六十三章 時のつながり
エラムの遥かな昔
しおりを挟むなになにと読んでいるヴィーナスさん、苦笑してしまいました。
「陳腐な話ですね、薄幸の美少女のために、私がウミサソリキングをやっつけ、最後は私が美少女をものにする、そして二人はキリーの町で、一緒に仲良く暮らす……」
「薄幸の美少女って、アリスさんのことなのですよ」
「えぇぇぇぇぇぇぇ!なんでアリスなのよ!」
「キリーに始めて訪れたとき、アリスさんが子供たちになにか教えていたでしょう?」
「あの時、このお話を、面白おかしく話していたらしく、それがそのまま伝説になったようなのです」
「なんせ百年以上昔の話、聞いた子供たちは、皆お墓の中ですから」
「でも、この中の美少女って、たおやかで物静かでお淑やか、絵に描いたようなお姫様になっていますけど……アリスさんと真逆ではないですか!」
「そこがアリスさんらしいですね、ご自分ではそう思われているのですから、今でもそのままではありませんか」
その昔の四方山話を、二人は続けています。
列車はガタゴトと進み、夜遅くにアルジャについたのです。
「本日はこの町で一泊します、居酒屋『ご機嫌な天使』ですが、今では超一流のホテルです、懐かしい場所ですね」
……居酒屋『ご機嫌な天使』……ここでビクトリアさんと会ったのですね。
「赤毛の女はいないでしょうね」
「いるよ、あるじ殿」
そこには、とても若い容姿のビクトリアさん、18歳との事です。
「愛人ってのはいいものだ、瞬時に年齢を変えられるのだから、サリーとあわせたのだ」
そういえばサリーさんも18歳の容姿。
でも、ものすごい色気は隠しおおせないようです。
さらには私も18歳、サリーさんが同い年になりましょうといったのです。
「でも、何故18歳なの?」
「ここはエラムですからね、私もビクトリアも顔が知られているからです」
「お嬢様だけですよ、顔が知られていないのは」
「あるじ殿、その上で神官見習いになる、見習いの服なら顔もある程度は隠せる」
ホテル『ご機嫌な天使』は建て替えられており、豪華な建物になっていました。
「セリム様ですね、神聖教の事務の方より承っております、三階の部屋をお取しております」
「お風呂も、当ホテルは完備しておりますが予約制です」
「ご夕食はまだ食堂が開いておりますので、すぐに行かれることをお勧めします」
「お風呂は?では、開いている時間がきたら、お呼びいたします」
食堂は懐かしい雰囲気がありました。
あの当時のホールのようです。
なんでもホールだけは、そのまま移築しているようで、百年の風格を漂わせています。
「懐かしいな、あるじ殿がステージで歌われたのを思い出す」
「懐かしいけど、歌うわけにはいきませんね、それよりご飯を食べましょう」
「明日からは、聖地巡礼ツァーに出かけるのですから、栄養をとらなくてはね」
「一仕事してくれると期待している、サリーとともに♪」
「そうですね、その為に栄養をつけなくてはね♪」
「サリーさんまで……」
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