惑星エラムより愛をこめて 第二部 大和撫子編 【ノーマル版】

第二十八章 創世記

参与に就任していただきました

　聖ナタナエル……
　復讐の１２人の天使の１人にも数えられているという、火を司る天使、神により６番目に創られた天使。

　石版には、原エラム文字が刻まれていました。
　しかも二進数による表記に成っているようです。
　頭の中でエールさんが解読してくれました。

　それは次の様なものでした。

　謹んで主に申し上げる、我はエールの分身、封じられた魂、ナタナエル。
　我が廟の前にて、主、自らヴァルナの娘の軍事称号を唱えられよ。
　我は復活し、エールとともに主に額(ぬか)ずかん。

　エールさん自身が、かなり驚いているのがわかります。
「私の分身とはどういうことなのでしょう……」

「後で、姉とマレーネさんとで相談いたしましょう」
「エールさん、何があっても貴女は私の側にいてもらいます、いいですね」
「ミコ様……」

　二人の総長さんに向かって、
「確かに読めましたが、これは失われた言語の上に、二進数表記になっており、なお且つ暗号になっています」
「二進数表記までは、人類の叡智でたどり着けるかもしれませんが、その後は無理でしょう、文法は違う世界の言語の物です」

　そして二人に訳を伝えました、そして、
「意味はある程度は判りますが、教えるわけにはいきません」
　と伝えました。

　でもゆゆしき事です、この違う世界の言語の文法とは、惑星エラムで使われている言語……

　いくつもの宇宙を隔てて、このテラで惑星エラムの言語に出会うとは……
「判らない事だらけ……計画に支障が出なければよいが……」
　思わず呟いてしまいました。

「とにかく、ナタナエルに聞くのが一番でしょう」
　と、イエス会総長さんがいい事を云ってくれます。
「たしかにそうですね……しかしナタナエルの廟というのは……日本に何かがあるのは想像できますが……」

　でも私、この二人の前では、自然体でいるのに気が付きました。
「お二方、お名前を聞いておきましょう、ときどきお会いいたしましょう」

　フランシスコ・ロドリゲスさんというのが、イエス会総長さんのお名前でした。
　テンプル騎士団総長さんはギヨーム・ド・ヴィシエさんといいました。

　お二人にはナーキッドの参与に就任していただきました。
　マレーネさんが突然に、
「なんと安直、行き当たりばったりの人事ではありませんか」
　と、抗議がはいりました。
「だって……後の事を考えると、この二人にも協力していただきたいと思ったもので……」

「……たしかにそうともいえますが……」
「それに、そろそろナーキッドも露出を始める時期、火星の件も表に出るころでしょう？」

「……」
　案外にナーキッドの最高幹部会は、あっさりと認めます。
「ミコ様のお考えは正しいと考えられます、お二人の、ナーキッド展開の国々に対しての影響力は、かなりの物がありますし」

「それに参与との事、彼らに汚れ仕事は不向きでしょう」
「でも黙認していただけるならやりやすい、勿論、我らが手を汚す事はありませんが……」

　シャルル枢機卿が、
「私の方で参与の二人の総長とは、よく話しあっておきましょう、ユリウス五世聖下も大変御悦びで、心強いとおっしゃっていました」

　その後、大騒動だった今回のグランドツァーというべき、エラムからの大訪問団も、エラム・テラ直通連絡列車に乗って帰って行きました。

　それとエラム・テラ直通連絡列車開通のおかげで、もう一つ、とても便利な事が実現することになりました。

「ハイゲートみたいな状態を、常時通行可能に出来ます、幽子に分解されたまま、ワームホール経由でテラの宇宙で再構成すれば良いのです」
　とのマレーネさんからの報告で、インプットステーションとアウトプットステーションに、このスーパーハイゲート用の貴賓室を作りました。
　ただし制限があり、当面は佳人さん以上、一度に一名のみです。

　つまりエラムの女官長さんたちは、望めば瞬時にテラへやってこられるわけです……
やはりね、生身でなくてはね……楽しめないし……
　
　女官長さんたち、こんな言葉を残していきましたよ。
「これから、各ハレムから交代で、二名ずつ十日に一回、入れ替わって派遣することにしました」
　つまり、このテラへエラムから、二名の連絡要員が常駐するということです。

　お目付け役がつくことになりました。
　麗しの女騎士団のエレン団長と、レムリア都市同盟側女のジェーンが残りました。

　エレンはまだいいのですが、ジェーンは……かなり一途で堅苦しい事がありますし……

「ヴァカリネ様、何が何でもお側に張り付くようにと、エーデルガルト女官長とアンリエッタ首席女官長より申しつかっています」
「……そうですか……」
「そうです！」