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第二十章 宮川遊郭六条楼

やってきた転校生たち

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 忙しすぎる一週間が過ぎ、なにもかも落ち着いてきた中、いよいよこの京女三人組の転入の噂で、オディールはそわそわしています。

「ねえ、ききましたか?都女子学園の一号生徒の六条様が、半年このオディールへ来られるとか?」
「しかももうお一人、病気療養していた方も、稼業の都合で七回生に編入されるとか?」

「あとのお一人の方、どのような方か知っていますか?」
「山下藤子様といって、京都一女の方らしくて、家業が傾き身売り寸前の所を、あまりに賢い方なので、ナーキッドが奨学金をだしこのオディールを紹介したと聞きましたわ」
「じゃあ、吉川様と同じ屋根の下なの?」
「どうして、そう思うの?」
「兄がいっていましたわ、いまどき近衛師団が送り迎えするのは民間人なら、ナーキッドの関係者しかいないって……」
「そうなの?」
「知らなかったの?、吉川様はナーキッドの関係者という噂よ」

「智子さん、何か知っていますか?智子さんのお家は、ナーキッドのお仕事をされている、鈴木商会でしょう?」
「仕事の事は詳しくは知らないのです」
 智子さん、苦しい言い訳をしています。

「でも、同じ屋根の下にお住みになっているのでしょう?」
「吉川様はアメリカの方でしょう?、父の云いつけで、何かあってはいけないと……」

「吉川様って素敵ね、私、吉川様の我妹子(わぎもこ)にしていただきたいわ」
「ほんとね、私もそう思うわ、智子さんはいいわね、一緒にお住まいで……ところでどうなの?」

「なにがですか?」
「まったくカマトトね、吉川様と『S』になれたのか、ということですわ」
 真っ赤になった智子さんです。

「私ならシャネルの五番で、吉川様のベッドへ忍び込むわ、誘惑して既成事実を作るの♪」
「……もう、スケベなのだから……」
「あら、じゃあ貴女はどうするの?」
「そりゃあ正攻法ですわ、身も心も女を磨くしかないでしょう、出なければ飽きられてポイですわ?」

「そうなのですか!」
「智子さん、急にどうしたのですか?」
「私どうしたら吉川様に愛されるのか、いつも考えていたので……」
「とうとう白状したわね、智子さん」

 女学生さんは、この手の話しは大好きですね。

「山下藤子さん、織田千代子さん、六条晶子さん、登校準備はすみましたか?」

 登校の朝、三人に聞きますと、織田千代子さんが、
「こうして再び女学校へ通えるとは思いませんでした、まして六条様とこうして肩を並べて通学なんて出来るとは……」

 無口な山下藤子さんが、
「吉川様、私もこうして通えるとは……姉とともに苦界から救っていただき、これからはこの御恩に報いるために、すべてを投げうってお仕えいたします」

「山下さん、貴女はまるでアテネさんのようです、アテネさんは私と生死を共にした間柄、詳しくは言えませんが、共に剣を手に取り、長い戦乱を戦い抜いた大事なお友達、山下さんもよろしくお願いします」
「はい」

「アテネさん、出来たら山下藤子さんのお友達になってあげてください、お願いします」
「はい、山下さん、まいりましょう」

 サリーさんが笑いながら、
「良く似ていますね、あの二人、愛想の無いのはそっくり……でもこれでダフネさんも喜ぶでしょうね、何といっても、アテネの姉とも母とも、自負していますからから」

 近頃は物々しい警備は影を潜めて、三十分すこし掛かりますが、私たちは歩いて登校しています。
 アリスさんとココさんは、相変わらず騒々しく歩いています。

 六条さんと織田さんも、仲良く喋りながら歩いています。
 鈴木智子さんと吉原綾乃さんも、なんなかんなと云いながら、いつもつるんでいますし、私にはいつもカミーラさんがピッタリとついています。

「ミコさま、アテネさんって人気があるのですよ」
 と、カミーラさんが教えてくれました。
「そうなのですか?」
「いつもお一人で無口で、下級生には絶大な人気なのですよ、だから山下さん、大変ですよ」

 まぁ、お昼に感想を聞きましょう。

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