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第十九章 娼妓解放特別規則

六条晶子のご招待

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 五月三日の朝です。
 起きると、華宮洋子さんと富田沙織さんが、
「吉川さま、昨夜遅く、ココさんがやってきて、ココさんに初潮が……」
「私たちの生理用ナプキンとタンポンを渡しておきましたが吉川様からも一言いってあげてください」

「ココは何といっていますか?」
「いたく喜んで、これでミコさまに抱いてもらえると……」
「そうですか……ココの為にありがとうございます」
「このような関係ですので、ココさんは私たちにとっても妹のような存在です」
 ですか……

「ココさん、おめでとう、聞きましたよ」
「ミコさま……」
「今日はどこかへ、ご馳走を食べに行きましょうね、ここではお赤飯というわけにもいきませんから」

 でもその日、私を訪ねて一人の女学生がやってきました。
 ホテルのフロントから、
「吉川様を訪ねて、六条晶子様という方が来られています」
 六条晶子?誰ですかね?

 華宮洋子さんが、
「都女子学園の一号生徒さんがその名前ですが……何の用でしょう……」
「じゃあ一緒にきますか?」
「私は吉川様のものですから、来いと云っていただければどこなりと」
 どうもいただいてから、人格が豹変したような……

 胸は押し付けてくるし、くっついてくるし……
「後は証文を受けてもらえば……私は晴れて吉川様のもの、買われた女……う・ふ・ふ……」
「別に隠しはしませんが、公表もしませんよ」
「わかっています、でも相手を言わなければいいのですから、私は売れた女、もう手をつけられた我妹子(わぎもこ)……」

 とにかく華宮洋子さんと二人で、六条晶子さんという方に会いにロビーにおりました。
 私はオディール女学館の制服を着て、洋子さんは華族女学校の制服を着ます。

 すぐに都女子学園の制服を着た女学生を見つけました。
 都女子学園の制服は、袴にブーツですから、目立つことこの上なしです。
 長い髪を後ろで束ねた、色白できりっとした顔の、ちょっと胸の無い美少女さんです。

「六条晶子さんですか?私が吉川美子です、なにか御用とか?」
「六条晶子です、華族女学校の華宮洋子さんも一緒とは知りませんでした」

「吉川さまからお誘いがありましたので」
「そうですか、お噂は聞いておりましたが、もう証文は差し出したのですか?」
「お答えすることはいたしません、ご自由にお考えあそばせ」

「そうですね、はしたない詮索をいたしました」
「このたび交流戦の吉川様が来京されると聞き及び、是非とも、わが校の部活にお誘いし、有意義な交流をしようと思いまして……」

「ちょうど当校は、春の文武の発表会、賓客としてご招待いたしたく、華族女学校の一号生徒である華宮さまも、ご一緒にどうでしょうか?」

「でも今日はこのホテル、物々しいですね、16師団の方々や、近衛の婦人士官の方々が、たくさんいらっしゃるようですが」

「そうですね、でも連れがまだ居ますので……」
「オディールの方ですか?ではその方々もご一緒に」

「吉川さま、華族女学校の一号生徒としては、ご招待を断るわけにはいかないのですが」
「そうですね、ココさんも富田さんも同意してくれるでしょう、ご招待を受けましょう」

 二人もすぐに制服を着て、降りてきました。
 気まずい沈黙が漂いましたが、「では行きましょう」と私が言うと、黙ってついてきてくれました。

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