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第十八章 休暇は楽し?

元帥陸軍大将の銃剣道

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 5月2日、本日私は、近衛師団に拉致されました。

 私たちは、京都のとっても有名なホテルに泊まっています、かなり迷惑をかけたような気がします。
 でもエッチなしで、こんなに楽しかったことは久しぶりです。
 おしゃべりって、こんなに楽しかったかしら?
 何をしゃべったかって……乙女の秘密……

 朝起きて、朝食を取ろうとしていると、婦人士官さんのお迎えとなり、軍服を着ることになりました。
 階級は元帥陸軍大将……なにやらありがたい刀を手に持って……

 すこし知ったかぶりをしますと、戦前の軍の階級には元帥というのはないのですよ。
 明治6年に元帥の階級は廃止、以後元帥と称される軍人さんは、元帥府に列せられる方のことをいうのです、したがって、このような呼称になるわけですよ。

 ロビーに佇む人の中には、退役軍人さんや、予備役、後備役の軍人さんもいるようで、弾かれたように直立不動で敬礼をしてくれました。

 仕方がないので答礼して、お迎えの車におさまります。
 副官のように、いつもの婦人士官さんが車を埋めます。
 どうやら深草の歩兵第九連隊が、動員されているようです。

 どこへ連れて行かれるのかと思うと、大原に連れて行かれました。
 近衛第一連隊が終結しています、なんでも明日から、深草の歩兵第九連隊と合同演習をするそうです。
 今夜は夜間行軍演習、それに放り込まれるそうです。

「朝は食べられましたかな?」
 近衛師団長が聞きますが、
「食べる前に召集されましたから、ご馳走してくれるのでしょうね?」
「戦闘糧食で良ければ、一緒にいかがですかな」
「当然いただきます、ただ飯は大好きです」

 目の前に戦闘糧食一型の、乾パン+ウィンナーソーセージ+オレンジスプレッドが差し出されます。
 戦闘糧食一型は初めてですね、まえにいただいたのは二型のしかもパック型でしたから。
 乾パンというのは、戦前からある帝国陸軍の戦闘糧食の代名詞、この時代まで続いているのですね。

 陸軍の乾パンを初めて食べましたが、おいしいものではありません、しかしあきのこないものとは思いました。
 えらく塩辛いソーセージはこの乾パンはよくあいます。
 この戦闘糧食、水をのむと、やたらとお腹がはります。

「いかがですかな?」
「見てくれよりもおいしいですね、戦場で食するには最適でしょう、なんせ戦場では料理する暇はなく、とにかくお腹に入れなれればなりませんから、行軍しながらも食べられますし、明らかに高カロリー、アドレナリンが出そうですね」

「元帥閣下は、戦場に出られたように聞こえますが……」
「あら、そうですか、どうなのでしょうね」

「さてご飯もいただきましたし、この後はどうするのです」
「大原女になって、薪でも売りに行かされるのですか?」
「嫌みがキツイですね、腹ごなしに、元帥閣下には銃剣道などをいかがですか?」

「そんなに私を試してみたいのですか?まぁいいでしょう」
「小娘に従わなければならぬのは、癪でしょうからね、気持ちは理解できます」
「聞きますが、もし私が銃剣道で、近衛師団の猛者を倒したらどうされますか?」

「そんなことはないかと、しかしもしその様な事があれば、本当に元帥陸軍大将として、認めざる得ないでしょう」

「では、銃剣道などいたしましょう、野試合の準備をお願いします」
 準備される間に、この銃剣道のルールを聞きました、何でもありとのことです。
 つまり格闘術、殺し合いの術ですから、相手を倒してなんぼです。

 近衛第一連隊の、選抜された猛者が五人並んでいます。
 超馬鹿にしているのがありありです。

 先鋒の方が出てきますので、『繰り突き』でけりをつけました。
 繰り突きとは、左手を滑らせることにより、遠くの相手へ剣先を届かせる技で、本来は禁じ手です。

 しかし何でもありの殺し合いで、寝言は必要ありません。
 とにかく文句なしの有効となりました。
 実践なら相手は即死のはずです。

 次鋒は素早く踏み込んで、左胸に下からの突きをいれました、下胴というらしいです。
 中堅もあっさりと次鋒と同じです。
 副将戦は相手の突きをかわし、銃床で殴りました。
 大将戦は突きで応酬しましたが、踏み込み勝ちです。

 15分もかかりません、近衛師団長は沈黙しています。
 面子もあるでしょうしね。

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