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第十六章 超優秀で超美貌
華宮洋子の婚約指輪
しおりを挟む華宮洋子さんが、
「お預かりしてきたものがあります」
と、恭しく風呂敷に包まれた物を差し出しました。
「嫌がられるでしょうが、是非ともお受けいただきたいとのことです」
明治の旧日本帝国陸軍女性用軍服です。
某内親王がこれを着ている、有名な写真があります。
肋骨服に長いロングのスカート、かっこいいですが、軍服を貰うわけにはいきません。
私は臣下になるわけにはいかないのです。
私はそれをお返ししようとしましたが、ふと階級章に目がとまりました。
すこし長めの黄色地に星が三つ、ひとまわり大きい菊花章がついています。
しかも刀がひと振り、大元帥佩刀と呼ばれるものです……
これは……統帥権が今は総理大臣にあるとはいえ……軍の最高位ですよ、この軍服は……
「覚悟は分かりました、しかし……この菊花章と大元帥佩刀は……いただきますが……いくらなんでも身につけるわけにはいかないでしょう」
「軍服だけ何かの折につかいましょう、なんといっても陸軍大将ですから、近衛師団へ行く時には威力があるでしょう」
「吉川様、ベーチェット病を患っていた私です、それも完全型で失明寸前でした」
「失明の恐怖と、この身をさいなむ疼痛に耐えていましたが、先日お医者様が完治していると、太鼓判を押してくれました」
「吉川様のお考えによれば、この幸せの代価は大切な物で支払わなければならない、私の大切な物は純愛です」
「……」
愛の告白をされてしまいました。
「華宮洋子、こちらに」
私は言葉を改めて、差し招きました。
「汝に采女の指輪をさずける、汝は私に所属するも、指輪を外す自由を有する」
「また私以外の者に抱かれると、指輪は消えるだろう、この指輪は、汝をすべての災いから守る」
「洋子さん、この指輪は他人には外せません、言っておきますが一度外せば、消えてなくなります」
「指輪が消えれば、貴女を守る効力も消えます」
「しかし好きな方が出来て、その方と一緒に人生を過ごすなら、それも良いかもしれません、すべては貴女の判断です」
「ただ半年に一度、私のハウスキーパーに健康を報告する義務が生じます、よろしいですね」
洋子さんは頷きました、私は采女の指輪を薬指につけてあげました。
洋子さんが、
「ミコ様、出来ましたら、その軍服を着て、私と写真におさまってくれませんか、手紙の差出人も喜ぶと思うのです」
華族女学校って、喫茶室にも控室があるのですね、そこで着替えをすることになりました。
洋子さんに手伝ってもらって、着替えをします。
新妻のように甲斐甲斐しく、私に軍服を着せてくれました。
「貴方……」なんて、耳元でいわれながら。
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