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第十三章 帝都東京
お出迎え
しおりを挟む三月の半ば、夜の闇に紛れるように、私は羽田国際空港に降り立ちました。
ニューヨーク発アメリカン航空AA0135便、日本到着時刻22時15分です。
あったかいですね、検疫手続き、入国手続き、手荷物受け取り、税関検査と続き、やっとこさ到着ロビーにたどり着きました。
一緒に来たのは、引率役のナオミさん、姉の茜、小雪、アリス、ココ、サリー、アテネ、マレーネと、警備役としてミトリ、ゾーイの十一人。
天才美人数学者姉妹の来日ですが、マスコミには知られていません。
迎えてくれるのはディアヌさんと、なにやらいかつそうな、警視庁警備部警護課警護第3係の方々、国賓警備の扱いですか。
近接保護部隊(SP)も男ばかり、女性SPのみの通称「表敬部隊」は編成してもらえないようです、まあ、民間人ですから、仕方ないとこですね。
むさい男の中にディアヌさん、大丈夫なのですかね……
でも良く見ると、ガルムがついています、シークレット・モードですね。
でもこの日本は、私の日本ではないのです。
太平洋戦争を、取りあえずは引き分けたことにより、連合軍の軍事占領はなく、この日本には、在日米軍などはありません。
いわゆる大日本帝国、東京は東京市、帝国陸軍も帝国海軍も、立派に存在しています。
したがって、この警視庁警備部警護課警護第3係というのは、国家直属の首都警察としての警視庁です。
まあ、特高や憲兵などではないだけ、ましですかね……
でも、この羽田の雰囲気は、私の世界の羽田の雰囲気……
軍人さんもいますが、威張り散らすわけでもなく、高度成長を経験した、経済大国の雰囲気があります。
なんか故郷……と感慨深く眺めていましたら、出口に派手派手しいお迎えというか、警護とは名ばかり、護送というのが正しいのでは?
星のマークに桜葉、誰が見ても、近衛師団のお車がお出迎えです。
このまま法王領大使館へ連行されますと、シャルル枢機卿がいました。
「お疲れ様です、日本政府は大げさですから、ミコ様がナーキッドの最高幹部の一人、と云うことを伝えてありますので……」
「宮中からの招待の話しは、丁寧にお断りいたしました」
ディアヌさんが、
「警備はとにかくここまでです、ご不便をおかけしましたが、断るわけにもいきませんでしたので……」
「もうすぐ日本政府の代理人がやってきます」
私はシャルルさんに、
「その代理人って、お仲間ですか?」
「高倉公爵です」
たしか臣籍降下した、旧皇族の方ですか……
皇室って、法王領と仲が良かったかしら、まぁ関係ないか、頭なんか下げる気は、毛頭ありませんし……
「面倒ですからシャルルさん、話しを聞いておいてくれませんか」
「また我儘を、相手は公爵ですよ」
「では私は誰です?」
「私がホイホイと会えば、貴方たちの立場はどうなります、極秘といえど、国を代表してくるのでしょう?」
「役不足……そういうことですか……」
「政府の代理と云うならね、私と話をして、政府として何かを決められる方なら、会いもしましょう、でもパシリにあって何とします」
「……しかし相手は……」
「では高倉公爵と、軽く食事でもいたしましょう」
「私がおにぎりと味噌汁をつくりましょう、質素とはいわせませんよ、この私が作るのですから」
日本政府の代理人の、公爵さんがやってきました。
塩のおにぎりをつみ上げたお皿と、豆腐とねぎの味噌汁がはいった鍋が、目の前にあります。
「高倉公爵、一緒にいかがです、用件はシャルル枢機卿が聞くでしょう」
そういって私はおにぎりを食べました、これ標準米、一般の国民が食べる物です。
高倉さん、訳が分からず、おにぎりを手に取りました。
「粗末ですか?」
「……」
「多くの日本の人々が、これを食べているはずです」
「人の上に立つなら、知らなければならぬ味でしょう」
「失礼ながら、こんな民間の小娘に、このような扱いをうけてご立腹のご様子、よろしいのですよ、お帰りになっても」
「ナーキッドの馬鹿女と、話すことなどありませんからね」
ものも云わず、席をたってお帰りになりました。
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