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第三十九章 人の世の醜き争い

生贄を要求する地獄の炎

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 轟音とともに甲板に立ちました。
 司令官が艦橋にいるのを認めます、私、眼はいいほうですから。
「愚かな行為の結果ですが、お土産を受け取りなさい、そして選びなさい、降伏か戦うかを」

「ここへ乗り込んでいう言葉か!そっくりそのままお返しする」
 そうそう、そうこなくっては……挑発に乗ってくれるのですねえ……

「そうですか、ではあの船から始めましょう、地獄への航海へ旅立ってもらいましょう」
 指差した駆逐艦のマストに、青白い火が灯ります。
 ただしこの火は聖なる火ではありません。

 生贄を要求する地獄の炎、ユラと揺れたかと思うと、赤く燃え上がり始め、船全体に纏いつくように、そして船は燃え上がりのたうつように、沈んでいきます、その間五分でしょうか。

 突然、ここでも、ありとあらゆる銃弾が飛んできますが、当然あたりません、私は別の船を指差します。
 その船のマストに、再び青白い火が灯ります。

 とっさに司令官が、その船の艦長に総員退去を命じましたが、その時には、船は燃え上がり始めています。
 海に飛び込んだ乗組員の上に、青白い火が灯ります。
「やめろ!」

「なぜ?そちらが私に喧嘩を売ったのですし、私は警告を差し上げました、いまさら何を云うのですか?」
「たのむ、やめてくれ……」

「はぁ、言葉が違うでしょう、一度刃向かった者が、二度刃向かう事はよくあることでしょう」
 地獄の炎は、泳いでいる者を瞬時に焼きつくしました。
「せめてもの情けです、苦しむことなく、殺してあげましたよ」

 次に輸送船を指差しました。
 青白い火が三度マストに輝きます。

「無条件降伏する、だから殺戮はやめてくれ」
「私はテラの常識に支配されていません、刃向かう者は、後の憂いを無くすために殲滅する、それが行動原理です」

「力の差は歴然としている事が理解できた、我らは刃向かわない、この艦隊の乗員は全員軍を退官する、それで我慢してくれ」

「私はこのテラの人類を存続させようと、努力してきました」
「ナーキッドを作り、何とか人類存続の目鼻がついた時、にこの出来ごとです」
「なにも私は、好んでしているわけではありません」

「この世界を造りし方々に、強要されたのです、その方々は、暗に私に望みない者は切り捨てろと云っているのです」
「最後の審判を行えと云っているのです」

「それでも何とかしようとしている私は、馬鹿だと認識しましたよ、その馬鹿ついでです、ここでやめましょう」

 輸送船に灯る、青白い火が消えて行きます。
「しかしこのまま素直に帰れるとは、思っていませんでしょうね?」

 艦隊は四国沖からかき消えました。
 そしてネバダ州北部の、ブラックロック砂漠に艦隊は埋もれていました、喫水線を砂漠に埋めて……
 毎年バーニングマンの祭が開催される場所ではありますが、アメリカ政府が何とかするでしょう。

 結局この出来事は、秘密にされましたけど、噂が飛び交うでしょうね。
 ブラックロック砂漠に行けばば四万トンの軍艦以下、艦隊が砂漠に浮かんでいるのですから。

「アナーヒター様、お優しいですね」
 と、西さんが云いますが、
「軟弱なのですよ、私は」
「でも、ほとんど助けたではないですか」
「五百人ほどは死んでもらいましたが……」

 でも、これでアメリカはおとなしくなるでしょう、ほんと、私もやわになったですね……
 そうそう、これを計画した者は死んでもらいましたよ。
 CIAとか大統領府の高官とか……

 エアホースワンも炎上しましたし、ワシントン記念塔が、とんでもない落雷で崩壊したのも確かですね。
 全て、砂漠に艦隊が浮かんだと同時刻です。
 力しか信じないのなら、力でねじ伏せましょう。
 警告と、とっていただきましょう。

 何事もなく私は、京都宮川遊郭へ戻りますと、ゾーイ隊長がかけてきました。
「ルシファー様……」
「ごめんなさいね、みっともない所を見せました」
「それに手柄も取ったようですし……さて後片付けをしときましょう」

 私は戦いの後を、一切合財消してしてしまいました、宮川遊郭は華やかな町、不粋な殺し合いなど、あってはなりませんし……

「さて灯りをともしましょう」
「ゾーイ隊長、近衛師団長に終わったと伝えて来てください、明日から大変なのですから」

 でもすこしアドレナリンが出て仕方ありませんね……
 その夜、本当に激しくブラッドメアリーハウスを抱いてしまったのです。

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