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第三十九章 人の世の醜き争い

遊郭の夜の出来事

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 宮川遊郭では、女たちが楽しくやっていますが、京都派遣軍が司令部を置くホテルでは、将軍と参謀たちが延々と打ち合わせをしています。

「本当にこんな計画が実行出来るのか?」
 第四師団長が呟きますが、
「本官も疑問に思っているが、九州の話しを聞いているだろう、それを考えると間違いなしに実行される」
 と、近衛師団長が答えます。

「小官も同意する、一度お会いしただけだが、嘘偽りをおっしゃる方ではないと思う」
 第十六師団長も口をそろえます。

 その時、参謀本部から緊急の連絡が入りました。
 通信参謀が、
「閣下、参謀本部から緊急暗号が入っています」

 四国沖に展開中の、米軍のワスプ級強襲揚陸艦の8番艦、満載排水量41335トンのマキン・アイランドを中心とした、空母機動部隊から特殊作戦部隊が飛び立った。

 そのような文面だそうで、目的地がどこかは不明なるも、関西方面に向かう可能性大との事です。
「なぜ米軍が?」

「関西に向かっているならこの京都だろう、アメリカはナーキッド協定から離脱、露骨にナーキッドと対立している」
「ナーキッドが無くなれば再び世界の覇権が手に入る、その為にはオーナーの抹殺……狂っている」

「閣下、元帥閣下からの電話です」
 近衛師団長が、
「しかし……それでは……判りました……」

「全軍に命令、宮川遊郭内の婦人部隊、およびナーキッド警備部隊を収容の後、京都派遣軍特設第二師団は宮川遊郭を包囲封鎖、一人として外へ出す事かなわず」
「特設第一師団は京都市内で厳戒警備体制、防空部隊に命令、侵入航空機はそのまま見過ごすように、かかれ!」

「司令官、どういう意味ですか?」
「第四師団長、元帥が米軍は間違いなしに、宮川遊郭を目指している」
「日本政府はアメリカは、いまだ友好関係にある、したがって手出し無用、ナーキッドの方で処理する、そう云われているのだが……」

「しかし、ナーキッド警備部隊、といってもかよわい女だけの部隊ではあるが、それさえ避難させてどうするのか?」
「それは進言申し上げた、元帥はご自身と直衛部隊、ブラッドメアリーというのだそうだが、それと西という副官だけで迎え撃つと云われるのだ」

「無茶だ、相手はひょっとすればデルタフォースかもしれぬ、それを相手に半個分隊程度の女性でどうするのか!」
「これは棄ててはおけぬ、元帥の命といえど、この命令は聞けぬ!」
 第四師団長は席をたって出て行きましたが、すぐに戻ってきました。

「宮川遊郭が閉鎖されている、誰も入れぬ……」
「魔力だろう、ナーキッドオーナーは魔女とおもって間違いない」
「驚異的な科学技術力に対して我らは非力だ、見守るしかないのだ」

 その頃、私は西光子さんを臨時の副官、カミーラさんを従兵とし、ブラッドメアリーの面々と、宮川通りでお茶を飲み飲み待っています。

 ブラッドメアリー・ハウス・バトラーのゾーイ隊長以下、カーリー、セシリア、ガートルード、ポーリーン、総勢七名。

 ゾーイ隊長が、「相手はどこの誰ですか?」
「多分、デルタフォースでしょう」
「そのデルタフォースを殲滅してもいいのですか?」
「しかたないでしょう、喧嘩は向こうが売ってきた物、二度とこのような事がないように、きれいさっぱりと片付けます」

「片付けます?私たちがルシファー様に御手数などかけさせませんが?」
「いえ、大事な預かりものでもある貴女たちに、危ない橋など渡らせませんよ」

「ここに居てもらうのは、ヴィーンゴールヴに帰った時に困らないようにです」
「いえ、ヴァンパイア族の名誉にかけても、お願いします、戦わせて下さい!」
 ゾーイ隊長、凄い剣幕です。
 困りましたね……まったく招からざる客のおかげで……

「ゾーイ隊長、これは私の力を見せる為でもあります、ここにオルメカの連絡将校も来ています」
「オルメカに私の力を見せておかなければならないのです、そうでしょう、西さん」

 一瞬、西さんは考えた顔をしましたが、瞬時に理解したのか、
「真のオルメカの忠誠を得るには、一度お力を見せていただきたい」
 うまい!小芝居にあわせてくれます、本当に機械体なの?

 いまいち納得出来ない顔のゾーイ隊長ですが、委細構わず私は言いました。
「そろそろお客様が来ますよ、ヴァンパイアは夜目がききますよね」

 そして宮川遊郭一帯の光はすべてかき消え、漆黒の闇が覆い、さらにナノマシンが私たちの周囲に防御層を形作りました。
 これで私たちの体温さえも、探知できないでしょう。

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