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第三十八章 日本の決断
温泉が無い!
しおりを挟むとにかく西からです、沖縄九州からと決まりましたので、佐世保軍港、および九州沖縄の各地にナグルファル号のシャトルが停泊する事になりました。
全長500メートル、最大幅100メートルの葉巻型をしていますが、最大五千名は運べます。
ナグルファル号には、このようなシャトルが十台格納されています。
毎日一回、今は正式にマルスと呼ばれるようになった火星と毎日往復することになり、毎月150万人はナグルファル号で運べるでしょう。
沖縄九州は約一千五百万人程度、一月末には移住が済むでしょうから、四国、北海道、と続き、中国、東北、日本海側と続き、近畿、中部東海、関東、東京は最後です。
「ミコさま、いよいよ日本もマルスへ移住ですか?」
夜のベッドで、景山響子さんが感慨深げに云います。
「なんとか出来る目途がついています、皆でマルスに行くのです」
「マルスでも、ミコ様の為にお風呂に入って、身体を磨き抜いて、そうですわ、私、近頃わかめ酒を覚えました、味わってみます?」
響子さんのエロい攻撃を切り返し、息も絶え絶えに、響子さんはベッドでトドになっているのを確認して……
汗まみれの身体を、東京ハウスの温泉、黒湯に沈めて、はぁー極楽……
やはり温泉が一番、リラックスします、マルスでも温泉にはいって……ん、マルスに温泉ってあったかしら……
……温泉が無い……
許される事ではないわ、逆さクラゲが無いなんて……これはいけません、断じて許されません!
いや、まてよ……たしか……マレーネさんが……温泉云々(うんぬん)といっていましたね……
あるのですよね、私とした事が……こんな大事な事を聞き逃すなんて……
頭の中で、
「マレーネさん、マルスにも温泉が欲しい!たしか有るといっていましたよね、温泉です!お・ん・せ・ん!」
「あれ、作るのですかと聞いた時は、生返事していませんでしたか?いらないかと思っていましたが?」
マレーネさんの説明ではいくつかあるそうです。――火星の南半球、南緯36.25度、西経161.8度に直径4.4キロの小さめのクレーターの端にあるそうです、国際天文学連合(IAU)によって命名された鳴子(NARUKO)クレーターの事――
「湯量は?泉質は?」
「いらないかと思っていましたので、詳しくは調べていません」
そんな……
「皆さんと裸のお付き合いをして、その後、ピカピカの身体でスキンシップを……」
「はぁ、色事には熱心ですね、テラは正念場なのですよ」
「でもでもでもね、温泉は人々を癒す保養施設!」
「はい・はい・はい・はい、判りました、温泉街を作りましょう、やはり日本式の温泉でいいですね、日本人の入居予定地にはまだ人がいませんので、このクレーターの近くの場所に変えましょう」
これで安心してマルスへ行けます、やはり日本人は温泉です。
温泉の為だけに、入植予定地が変わってしまいましたが、これは内緒です。
私の超我儘で、日本の温泉地を丸ごと持ってくる事になりました、某温泉を建物ごと……
勿論、足湯、手湯、共同浴場、温泉神社、移住を希望する温泉旅館も……
マレーネさんは専用貨物宇宙船を作ります、低速ですが大量輸送の貨物船です。
「やはり経費も考慮しませんと」
ナグルファル号にくらべれば、いささか小さいですが、それでもでっかいもので、直径三キロは有るそうです。
着陸すると大変ですので、飛行船のように、テラの大気の中ではプカプカと浮かぶらしいのです。
こいつは本当にゆっくりと大気圏を脱出し、徐々にマルスに向かいます、ナグルファル号は往復で一日ですが、この専用貨物船は往復十日かかるそうです。
一応、人も運べるようにはなっているそうですが、その場合、十日は寝袋持参で、食事は簡易非常食、お風呂は無し、トイレは宇宙空間に排出する事になるそうですので、あまり勧められません。
乗組員はすべてロボットです。
この温泉の一件が、変に日本の人々のパニックを落ち着かせました。
ナーキッドの余裕とその科学技術力、そして温泉まで移設するので、マルスでも日本はその文化を変える事は無い、そんな安心感です。
そして各県一か所ずつ、希望の歴史的建造物を移設することになりました。
ただ気候はかなり寒冷地の状況ですので、南の施設はその気候に耐え得る施設となります。
沖縄は大変でしょうね、まぁ選定はお役人に任せましょう。
私は温泉を確保しましたので、満足していますから。
そうそう、移住する方々の私物ですが、国家移転する地域の方々に対して、国家がその責任として保管場所を確保したら、手荷物以外にも一家族あたりドライコンテナ一つ分、ISOの規格20フィートを一つ、時期は移住後不定期ですが、こちらで運ぶこととなっています。
まあ、国家の責任でとありますので、いままで実行されなかったのですが、日本は実行することにしたようですよ。
まあ大規模なコンテナヤードが各地にありますからね。
そして難民の圧力で、日本中があたふたとしている間に、オディール女学館では冬休みに入り、世界ではクリスマスシーズンがやってきました。
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