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第三十七章 母なる大地

フォボスステーション行きの特別列車

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 この日の夜、サリーさんの権限で、夜の順番が入れ替わりました。
 私はアメリカとカナダに入り浸る事になっていますので、一週間オディール女学館を休む事になっています……アリシアさんがいそいそと……

 次の日の朝、ペッタリとくっつくアリシアさん、何故かうきうきしているのが、ブラッドメアリーハウスの面々……

 ゾーイ隊長が、
「ミコさま!今夜は……!全員でお伺いします、可愛がって下さいね!」
 ブラッドメアリーハウスが、私の親衛として増派されてきていますが、本当はゾーイ隊長の番と聞いていましたが……

「やはり、隊員と共に分かち合わなければと思いました!磨き上げてきますから!」
 ゾーイ隊長以下、セシリアさん、カーリーさん、ガートルードさん、ポーリーンさん、確か五人でしたね……

 気合いが入っているようにお見受けできますね……これは栄養ドリンクを飲んどきますか……

 そんなやり取りしていますと、
「ミコ様、出発します、アマゾネスハウスと合流、その後婦女子を護衛してかえってきます、その後は……」
 わかりました!

 女子修道院のシスターたちと、警備していた女子警官さん、孤児院の子供たち……全ての関係者をホットスプリング・ステーションに運びました。

 グラブダブドリッブのナーキッドの担当者に来ていただき、アメリカ地区の適当な場所に、待機場所を割り当ててもらい、女子修道院と孤児院を再建する事にしてもらいます。

 フォボスステーション行きの、特別列車が待機しています。
 子供たちに、
「シスターと一緒ですからね、向こうでも元気でね」
 男の子も女の子も可愛い事……

「シスター、ご苦労ですが、この子たちは貴女たちの子供さんです、母とも姉とも慕っているはずですから、これからも守ってあげてください」

「環境が変わりますから、色々ありましょうが、明日はこの子たちの為にあるのですから」

「わかっております、いろいろご配慮ありがとうございます、それと子供たちの中の一人が、ミコ様にお願いがあるそうです、聞いてやってくれませんか?」
「なんでしょう?」

「それがなんとしても云わないのです、ただお願いがあるそうです」
「私に出来る事なら聞きましょう」

「出来ます!」と、声が掛かります。
 見ると十四、五歳の、赤毛の気の強そうな娘さんでした。
 男の子のような雰囲気が漂っていますが、綺麗な娘さんです。

「アニー・スチュアートです」と、修道院長さんが紹介してくれました。
 言葉の響きに困惑がありますね……

「アニーさん、お願いって?」
「ナーキッドのオーナーさんは、女好きと聞き及んでいます、私をお側にいさせて下さい」

「アニーさん!なんて事を!」
 修道院長さん、悲鳴のような声です。
「申し訳ありません、この子はまだその意味も何も知らないのです!」
「シスター、私は理解しています!」
「アニーさん!」

 賢そうな娘さんです、どういう事か理解しているでしょう、しかしなぜ……
「理由を聞いてもいいですか?」
「それを言えば聞いてもらえますか?」
「ケース・バイ・ケースですが、ここで云わなければ拒否するしかないでしょう?」

「大人になりたいのです、はやく独り立ちして、姉と一緒に住みたいのです」
「お姉さん?」

「姉はいまネバダ州の娼館にいます、私は姉と一緒にいたい、私だけ火星には行けません!」
 何といえばいいのか……

 アメリカの公娼制度は、ネバダ州の大都市以外の限られた場所に存在します。
 30ほどの売春宿が公認されているはずです。

 ロードアイランド州では、売春自体は違法ではないが、売春宿の営業、売春あっせん、路上売春は違法となっていたはずです。
 したがって合法の売春宿、つまり娼館はネバダ州にしかありません。
 
 私はこの世界最古の職業が、悪いとは思いませんが、このように十四、五歳の娘さんが言葉にだすと、いたましい限り……

「アニーさん、もし大人になったら、お姉さんと一緒に働くつもり?」
「はい」
 これはいけません、私は修道院長さんと視線を交わしました、すがりつくような視線をくれました。

 どうしましょう……
 このまま拒否したら、アニーさんは多分火星に行かないでしょうし、うっかりするとネバダ州へ行きかねません……

「お姉さんが一緒にいてくれたらいいのね?」
「そんな日がくれば……」

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