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第三十六章 彷徨いの果てに
オルメカ星系
しおりを挟むそして深雪さんが戻ってきました。
「マスター、相手は機械生命体でした」
「彼らの星系に進出して星系を封鎖、その上で今回の件を通告し出方を待ちました」
「それで?」
「すると探知ビームを照射してきましたので、これを遮断して、その照射ビームの出所を破壊、通信で最後通告をしますと、初めて相手が交渉に臨んできました」
「降伏か死かを選べと通告しますと、降伏勧告を拒絶しましたので、近傍の恒星に対してマグネター砲を使用」
「その威力を見せ付けてますと、無条件降伏しました」
「ミコ様のやり方を真似して、彼らの星に対して、ナノマシンを転移させておきました」
「現在占領中で、執政官を派遣しておきました、彼らは自らをオルメカと呼んでいます、これが報告書です」
「ご苦労さまでした、ゆっくりと休んで下さいね」
深雪さんの報告書を読んでいますが、オルメカですか……
メソアメリカの母なる文明、紀元前1500年頃に現れ紀元前400年頃に忽然と消えた文明……
惑星エラムには、マヤとの共通点がいくつかあります、その最たるものは暦です。
宇宙を隔てた場所にオルメカですか……
機械生命体が、『ゴムの国の人』つまりオルメカと自らを呼んでいるのですか……古典ナワトル語でしょうね……
しかもこの報告書を読むと、オルメカの機械生命体はヴァルキュリヤに似ているという事ですが、ならば間違いなしに、アスラ族が作り上げた一族でしょう。
……なになに、紋章がジャガー神……テラのオルメカ文明の関連を認めますが、でもなぜ……
彼らの指導者には会えなかったようですが、『老いた火の神』と呼ばれているそうです……
多分アステカの言葉でいうなら、シウテクトリでしょう。
名前の知られていない、オルメカの創造神、通称『第1神』と呼ばれる、神の名ではありますが、伝えられる姿は怪物そのもの、グロいですよ。
龍と人の混在した姿と伝えられていますが、オルメカの人というのは、オルメカの遺物の巨大な石の頭像(オルメカヘッド)のように、アフリカの黒色人種とも、アンクルサムと呼ばれている、白色人種ともいわれていますが真相は蚊帳の外……
紀元前400年頃といえば、エールさんがイシスさんと出会っう前の時代でしょう。
たしかエールさんは、日本を精力的に守護していてアメリカ大陸は守備範囲外のはず。
しかもその時期なら、エールさんに知られずに、例のテラの古くからいた男性体を潰滅させた、新しい女性体の移民船、それの人工知能がテラを後にしたら、筋が通るは通りますし……
旅立った理由は何となくわかります。
その後のイザナギと死闘を繰り広げる前、イザナギは当時のテラの現状を見て、最早テラは存在理由を失ったと判断したそうです。
ならば同じような考えを、その人工知能が持ったとしても不思議ではないでしょう。
何らかの考えを持って、テラを後にしたのでしょう。
その人工知能は正規の軍事用、エラムの神話における使いの人々の、長老テラの娘とその夫アブラム、長い長い旅の果てにテラにたどり着いて、テラの先住アスラ族、特に男性体を潰滅し、女性体を屈服させた軍団の『しもべ』。
それがなぜ、軍事称号ルシファーを持つ私に、敵対したのか……イレギュラーですか?
マレーネさんはその辺の事は知り得ません、軍用の情報は、マレーネさんといえど解読は不可能のはずです。
というより保存複製も出来ないはずです。
「マスター、一度ご自身でオルメカへ行く必要があります
「彼らはマスターがルシファーという事に、疑問を持っているのかもしれません」
「エールを連れて、ヴァルナ評議会議長の正装で行かれれば、イレギュラー持ちといえど、その人工知能は命令を受領するはずです」
あの赤い正装ですか……限りないほどエロい格好なのですが……
……真っ赤なTバックショーツに同色のガーターストッキング、これまた同色の刺繍ですけすけのビスチェ。
ショルダーストラップ、ガーターストラップも真っ赤な、悩殺間違いなしの代物……
次の十一月二日の水曜日の夜、私は戦艦スキーズブラズニル号に座乗して、オルメカ星系へ乗り込む事にしました。
しかも巡洋艦ロングサーパント号も一緒です。
そしてエールさんと深雪さんが、私の副官として随行してくれます。
勿論ヴァルナ評議会議長の正装は、生物の欲情を刺激してしまいますので、上からしっかりと、ガウンなどをひっかけています。
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