上 下
56 / 133
第三十六章 彷徨いの果てに

貧乏症の食事

しおりを挟む

 とにかくステーションC、中原ステーションの防衛体制は完璧と判明しました。
 銀河間航行ができるほどの、好戦的な種族を一瞬に壊滅させたのですから。
 後を深雪さんに丸投げして、私はテラに戻りました。

 10時間かかって、やっと日曜の夜に、東京ハウスへ戻ってきました。
 いまは夜の十一時、
「疲れた……夜食はありますか?」
 響子さんに聞きますと、神速で用意をしてくれました。

「皆は寝たのですか?」
「はい、起きているのは、ミコ様と小雪さん以外は私と三好糸女さんだけです」
「糸女さん、来ているのですか?」

「ここにいます、今夜遅く、ミコ様がお帰りになると聞いたので、お待ちしていました」
 ありがたいですね、家に帰れば待っていてくれる人がいるなんて。

「軽い夜食を一緒にいかがですか?」
 そうは言いましたが、糸女さんをほったらかしにしてパクパクと食べている私がいます。

「あぁ……おいしい、五臓六腑に浸み渡る……」
 お味噌汁と卵焼きと味付け海苔と香の物……
 今の私にとっては豪華な食事です。
 私と小雪さんは軽い食事とは行きません、はしたないほどの食欲です。

「ミコ様も小雪様も、そんなにあわてなくても……」
 五分で三杯目を平らげて、平然と四杯目を差し出しましたら云われました。

 味噌汁をご飯にぶっかけて四杯目を完食、五杯目は……え、生卵がある、卵かけにしましょう。
 小雪さんが不思議そうな顔をしています。

「卵かけが不思議なのですか?」
「いえ、なんで卵を残しているのかなと思いまして……」
「だって、卵一個でご飯二杯は食べる物と、確信しているもので、卵一個でご飯一杯の輩は、不届き者です!」

 ?

 響子さんと糸女さんが、笑いをこらえています。
「なんでご飯一杯は不届き者なのですか?」
「そりゃあ、そうでしょう、ご飯一杯はブルジョワです、そんな贅沢は許されません」

 さらに響子さんと糸女さんが、笑いをこらえています。
「でもご飯ばかりになりませんか?」
「醤油をたくさんかければ、三杯も可能です!」
 ついに響子さんと糸女さんが、声をだして笑います。

「そういえばミコ様は、変な食生活がありますね」
 と、響子さんがいいます。

 ?

「この間、トマトに砂糖をかけていましたよ」
「うえぇ……それは変です」
 と、糸女さんがいいますが、シャラップ!

 小雪さんが、
「そういえばミコ様は、御自分で食べられる卵焼きは、塩だけですね、あれはおいしいのですか?」

「おいしいです、あれは姉がいつも手抜きで作ってくれていた物、いわば吉川家の味、食べ慣れているのです」
「我が家は由緒正しき貧乏な家ですから、たまに晴れの日には、塩の代わりに豪華にこぶ茶の卵焼きでした」

「……それでご飯一杯は不届き者なのですね、得心しました」
 なんですか、その憐れむような眼は……

 その後、私の貧乏症の食事が、次々と暴かれてしまいました。

 タコの入らないタコ焼きとか、ラードと水と醤油を煮込んだ、もやしをいれたスープとか、揚げ玉を卵でとじた天とじ丼……
「お可哀そうに、まともな食育を受けてないのですね」
 だから、その憐れむような眼はやめて下さい!

 そんな話題で、日曜の深夜が過ぎて行きました。

 翌日は秋晴れ、十月下旬の空は高く、その空気は澄み渡っています。
 テラからの火星への移住は順調です。
 協定締結各国から有資格者を、どんどん受け入れています。

 とくに小笠原ステーションが完成してからは、ラッシュアワーのようなダイヤ編成で、宇宙列車を走らせています。
 さらに大規模に、宇宙船でルナ・ナイト・シティへ運び、そこからフォボスステーションへのコースも使っています。

 おかげで毎月500万人が、宇宙鉄道経由で火星に移住しています。
 そのほか300万人が、宇宙船・ルナ・ナイト・シティと乗りついで移住しています。

 来年には1億弱の人々が、火星に住む事になりそうです。
 当初の計画は取りあえず、5年で何とかなりそうです。

 やっと目途がついて、すこしホットしてきました。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました

ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら…… という、とんでもないお話を書きました。 ぜひ読んでください。

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

孕ませねばならん ~イケメン執事の監禁セックス~

あさとよる
恋愛
傷モノになれば、この婚約は無くなるはずだ。 最愛のお嬢様が嫁ぐのを阻止? 過保護イケメン執事の執着H♡

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

処理中です...