上 下
25 / 133
第三十二章 ココさんのお友達

お友達

しおりを挟む

 十月の初め、ココさんが聡子さんに、
「明後日、お友達を呼んでもいいですか?」
 と、聞いています。
「構わないけどどうして?」
「私の誕生日なので、お友達を呼んで誕生日会をしたいの……」

 鈴木聡子事務担当の厳命が出ます。
 明後日は全員、ココさんの為に早く帰って、お誕生会を手伝うように……

 そしてその日、お友達はやってきました。
 ココさんのお友達は大変綺麗な方でした。

「本日はお招きにあずかり、ありがとうございます、三好糸女(みよしいとじょ)と申します」
「糸女(いとじょ)お姉さまは東京女子医専なのよ!」
 十九歳、女子医専の二年生との事です。
 東京女子医専ね……

「そうですか、糸女(いとじょ)さんは才色兼備なのですね」

 小雪さんが、「ミコ様、すこしお話しが」と云いますが、「わかっています」と、そう言っときました。
 そう、判っているのですよ。

 綾乃さんとカミーラさんが、何ともいえない顔をしています。

「ココさんのお友達は歓迎します、よくいらっしゃいました」
「ココさん、聡子さんたちが、貴女のお誕生日の準備をしています」
「お客様も来られていますので、ホステスとして確認してきなさいな」

「糸女(いとじょ)さんのお相手なら、私と小雪さんたちとが引き受けますから」
「糸女(いとじょ)さん、しばしこちらの部屋でお待ち下さい」
 私か先に立ち、控室に案内しました。

「どうぞ、お座りください」
 私はソファーに座ります。
 私の横には小雪さん、糸女(いとじょ)さんの両隣りには、綾乃さんとカミーラさん。

「本当にお綺麗ですね、お見受けしたところ、百歳は超えられているようですが、私に何の御用ですか?」
「ココさんのお友達ですから、手荒なまねはいたしませんが、私は隠し事をされるのは、あまり好きではありません、それに持って回ったいい方も、好きではありません」

 震えてられますが、そんなに脅した訳ではありませんよ、にこやかにお話ししようと言っているのに……

 綾乃さんが、
「阿波の糸引き娘さんと思いますが、ミコ様はお話しをお聞きすると云われているのです、ここで目的を云わなければ次は聞いてもらえませんよ」

「……私たち、人に妖怪だ、化け物だと云われていますが、お慈悲と思い……」

「この倭(やまと)に住まう人外の者たちを、救ってくれというのですね?」
 驚いたような顔をしましたが、「はい、その通りです」といいました。
「貴女はその者たちの代表ですか?」
「代表ではありませんが……」

「ミコ様、この国の妖怪は一枚岩ではないのです、色々といがみ合っていますので」
 と、綾乃さんが説明してくれます。

「では貴女は、一部の者たちの代表と考えて良いですね」
「はい」

「火星に行きたいのですか?」
「出来ますれば……」

「火星には行かせません、しかし別の新世界が用意されています」
「陰に隠れて生きるのではなく、貴女たちの世界をあげましょう、惑星ヴィーンゴールヴです」

「ただし言っておきますが、ヴァンパイア族と平和に暮らせるのが条件、しかも世界にナーキッドが配った抗ボルバキア薬の服用と、常日頃は人型でいるのが条件」
「噂の代価はそうですね……私に服従することですかね、条件を飲むかの飲まぬかは、そちら次第」

「あの……噂では美女の献上が必須とか、お聞きしていますが……」
「別に必須ではありません、覚悟を示してほしいといっているのです」
「一番大事な物を差し出す、というのが判り良いでしょう?それが美女ということです」
「人類史ではよくあることです」

「それでは……」
「望む者がいなければ、別の何か大事な物で代価を支払ってください」
「それはそちらで考えれば良い事、私としてはココさんのお友達を抱きたいとは思いません」
「貴女は覚悟しているようですが、それは無用です」

 そこへココさんがやってきました、
「ミコ様、準備が出来ました」

「さて、楽しくお誕生日会を始めましょう、糸女(いとじょ)さん、楽しんでくださいね」
「難しい話しは粗方終わったのですから」

「ミコ様、早く早く、今日はバーベキューだそうです、聡子さんが、早く鉄板料理人を連れて来てと云っています」
 私が焼き係なのですか?

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

美しい姉と痩せこけた妹

サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――

幼馴染の彼女と妹が寝取られて、死刑になる話

島風
ファンタジー
幼馴染が俺を裏切った。そして、妹も......固い絆で結ばれていた筈の俺はほんの僅かの間に邪魔な存在になったらしい。だから、奴隷として売られた。幸い、命があったが、彼女達と俺では身分が違うらしい。 俺は二人を忘れて生きる事にした。そして細々と新しい生活を始める。だが、二人を寝とった勇者エリアスと裏切り者の幼馴染と妹は俺の前に再び現れた。

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

あばずれローニャ

黒神譚
恋愛
ちょっとエッチで甘々なTSラブストーリー。 主人公は色欲の魔神シトリーを討伐した際に、いまわの際の魔神に強烈な呪いをかけられてしまう。 その呪いとは女体化および、その女となった体で男性を虜にする色欲の呪い。 女性となった主人公は女性名ローニャと名乗り、各地を転々として最高クラスの司祭でも祓うことができない呪いを解く術を探す旅を続けるのだった。 だが、ローニャにかけられた呪いは太陽の加護が失われた時により強力になる女性化の呪い。日没後に心身ともに完全な女性になってしまった時。ローニャは常に呪いに自我を支配され、往く先々で様々な色男たちと恋愛スキャンダルを巻き起こす。 そんなローニャを人々はいつの間にか「あばずれローニャ」「恋多き女・ローニャ」と呼ぶようになった。 果たしてローニャは無事に呪いを解き、魔神シトリーを討伐した英雄として帰郷し故郷に錦の旗を飾ることができるのだろうか? それとも女性としての生き方を受け入れて色欲の呪いのままに男性を誑し込んで生き続けるのだろうか? TS・恋愛・ファンタジー・魔法・アクション何でもありのラブコメです。 今回は、複雑な設定はなく一般的でありふれたい世界観でとっつきやすい物語になっています。 1話1200文字程度ですので、どうぞお気軽にお読みください。(毎日19時更新)

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

処理中です...