12 / 133
第三十章 代価という聖書のいけにえ
神の代わりに
しおりを挟むこの頃、私は相変わらず東京にいました。
珍しくアリシアさんがやってきています。
聡子さんも誘って、優雅にお茶などしています。
取りあえず世界は小康状態ですからね。
「火星の事ですが、父がアーミッシュを推薦するのです」
アリシアさん、今日はお父さんのお使いのようですね。
「彼らが私を受け入れないでしょう、メノナイトならまだしも……それに非寛容な宗教は騒動のもとです、まあアーミッシュが反乱を起こすとは考えられませんが……いいでしょう」
「ただし条件があります、宗教上の教義は尊重しますが、火星はナーキッドの土地、神の土地ではありません」
「したがって教義と、ナーキッドの方針が一致しない場合、妥協してもらう必要があります」
「私に対して代価を払えるか聞いて下さい、別に女をいただく事はしませんが、その覚悟を確かめてください」
アリシアさんが、何か電話をしています。
お父さんのジョン・ディヴィドソンさんにしているのでしょうが、アリシアさん、何となくファザコンのような気がします。
「その条件は伝えていると云うことです、彼らは条件をのみました、茜様がエール様とで、アーミッシュの代表と会われて……」
その後は想像できます、エールさんはまず間違いなしにキリストと会っているはず……
アーミッシュがあっさりと条件をのんだのですから……
また女難ですか……
二三日して、姉と放課後のひとときのティータイム、この人、近頃どこにいるのか、ウロウロとしています。
「アナーヒターは神の代理ということで……」
姉が突然に、すりすりしながら云いました。
「女も来るわよ!」
「いりません、十分です」
「そうもいきません、神の花嫁は拒否できませんから」
「姉さん、アーミッシュに何と云ったのですか!」
「なにも、ただ正直にアナーヒターは人類を救うために尽力している、エールはアナーヒターの『しもべ』、そしてキリストはエールを神とあがめた」
「そう嘘偽りの無い真実、大体代価という物は、聖書のいけにえの事ではないですか、神は残酷で理不尽な存在、アーミッシュはその事に対しては、肯定したのです」
「人を救うための神との契約に必要ないけにえ……貴女は知ってか知らずか、彼らにその事を要求しているのですよ、テラの人類に対しても……神、または神の代理そのものではありませんか?」
「……」
「もう私は、いまの現状に対して、ややこしく考える事はやめました、私は気の遠くなるほど生きてきました」
「この宇宙が誕生するよりも前から存在していますが、それでも今回の事は初めてです」
「造化三神を、これほど身近に感じた事はありません、どうしても貴女に何かをやらせたい、そうお考えになっているとしか思えません」
「女がこんなに出来るのも、神のお考え、貴女も私も神の掌の上、とにかく全力を挙げて成すべきを成す、それしかないではありませんか」
「……」
姉の云うことは正しいでしょう……
幾度も思うことですが、なぜ、こんな状況に放りこまれるのか……
私のスケベだけでは、この女難は説明できないし……
姉はさらに云います、
「で、アーミッシュから女が二人、もう来ています、なんでも、料理は得意とか」
「この東京に?」
目眩がしてきました、しかもなんで二人なのですか!
とにかく会って、清女さんにでもなってもらいましょう。
フィオナさんとキムさんと名乗られましたが、二人とも長い青い服にこれまた白いエプロン……
十八歳ぐらいでしょうか、すらっと背の高い、青い目の健康的な美人さんです。
素朴で清楚で、良きアメリカの娘さんです、とにかく抱くのはやめます。
やはり当初の方針通り、采女の指輪を授けました。
二人は何も云わずに、指輪をはめました。
そして「神に仕える事に幸せを感じます」と小さく云いました。
誰が神なのでしょう、私ではないのに……
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました
ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら……
という、とんでもないお話を書きました。
ぜひ読んでください。
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる