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第六章 山下梅香の物語 遺産
質疑応答 其の一
しおりを挟む「山下さん、梅香さんね、お久しぶりね」
懐かしい足立先生です。
「先生もお元気そうで」
「もう年よ、来年退職するのよ、まさかマルスで余生を送ることになるなんてね、思いもしなかったわ、でも梅香さん、良かったわ」
「……」
「私、貴方のことは耳に聞こえていたの、でもなんともしてあげられなくて……」
「こうして貴女が立派になって、たずねてくれるなんて、教師をしていて本当によかった……苦労したわね」
なんと返事していいか、言葉に詰まった梅香さんでした。
「いま、どこに住んでいるの?」
「今のところホテル暮らしです、ミヤコ・メイドハウスの所在地が決まったら、そこに住むことになります」
「ミヤコ・メイドハウス?そういえば近頃の話題よね」
「私、いまミヤコ・メイドハウスの責任者に任命されて、それで京都の町をあちこち歩きながら探しています」
「ねぇ、卒業生として、後輩に言葉をかけてくれない?」
「私なんて……」
恩師にいわれ、断りきれなかった梅香さん。
放課後に残っていた生徒さんと、交流会などに出ることを承諾させられたのです。
あまり部活など、活発ではない照明女学院、放課後に残っていた生徒は、全校生徒の八分の一程度、大体はすぐに家に帰りますから、帰宅部というやつです。
校長先生の配慮で、少し大きい教室が急遽提供され、50名程度の参加者が集まります。
多少野暮ったい娘さんが多いですね。
「皆さん、本校の卒業生で、いま話題のミヤコ・メイドハウスのハウスバトラー、山下梅香さんを紹介いたします」
「十六年前に首席でご卒業された方です、梅香さんは恥ずかしがりやさんですが、皆の質問にはお答えしてくださるそうです」
「山下梅香です、こうして皆様にお会いできて、嬉しく存じます、私は非才ですが、皆様のご質問には、誠心誠意お答えいたします、ただ守秘義務のことに対しては、ご勘弁ください」
一人の生徒さんが手を上げて、
「山下様はミヤコ・メイドハウスのハウスバトラーと聞きました、どうしたらナーキッドに勤められるのでしょうか?」
「ナーキッドは、この世界の統治機関であることは、ご存知ですね、その職員になるには、素直にいえば入社試験に合格することです」
「いまご質問の真意は、どうしたらメイドになれるか、ということですか?」
「そのとおりです」
「お答えすれば、まずはメイド任官課程に入学すること、ナーキッド奨学金を受けて、任官を希望すること、各ハウスが募集する、一般女官募集に応募すること、現地採用され昇格すること、もう一つはナーキッドオーナーからのお声かかりでしょうね」
「各ハウスが募集する、一般女官募集とはどのようなものなのでしょうか?」
「各ハウスにおいては、一般女官は常に人員が不足しています」
「メイド任官課程卒業生は、すぐにナーキッドの上部組織に奉職するため、ハウスにおける事務、雑務は、現地採用される、女官補などと呼ばれる方々が担うことになります」
「そのかたがたを束ねる中級幹部が、必要となるのです」
「経費などの関係で、ハウス関連の人員は、最小限ぎりぎりで維持されています」
「そのため、メイド任官課程卒業生や奨学生はハウスで研修後、すぐに転勤となることが大半です」
「そのために中級幹部として、一般女官を募集するわけです」
「採用人員などは、ハウスの裁量に任せられていますが、一応一般女官といえど、上部組織の人事管理の担当部局に登録されます」
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