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第三章 華宮洋子の物語 舞踊競技

私も踊って欲しかった

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 ナーキッド幹部会の思惑なのか、秋の交流戦にさりげなく次の方たちが、鈴木聡子さんと一緒に見に来ていました。

 ナスターシャ・ウラジーミロヴナ・ロマノヴァさん
 エステラ・ウィンザーさん
 この二人は堂々と、チョーカーなどを付けています。

 当然、クセーニャさんとブレンダさんが付き従っています。
 案外にこの二人、仲がよいのですよね。
 まぁ掛け値なしのプリンセスですからね、華族女学校にはお似合いです。

 九月の終りに、マルス移住の話が広まり、56年後に、このテラに衝突する小惑星ルシファーが、破壊されたこの頃、ナーキッド・オーナーがどのような存在かは知れ渡っています。
 ただ何処の誰かは、いまだ公表されていません。

「美子様、応援に来ましたわ♪」
 ナスターシャさんが嬉しそうに、声をかけてきました。
「応援といっても、私は競技に出ないのよ」

「社交ダンスを踊りになられるのでしょう?」
「大きい耳ですね、誰から聞いたの?」

「華宮洋子さんです、各地のハウスには中継が届くそうですが、ナーキッドの勧めもあり、見に来たのです」
「ナーキッドの思惑はどうでもいいのですけど」

 ……まったく、ナーキッドの叔父さまたちは……二人がこんなところにいれば、私の事が明るみに出そうじゃないですか……
 またリークですか?上手いものですね。
 私の女好きを、当然視する風潮を作りだすためですかね……

 この二人が、スリーシスターズのインペリアル・シスターと親しく話せば、それは同列の女と推測できますよね……
 日本に対しての、リップサービスもあるのでしょうね……
 ほらね、記者さんたちの動きが、あわただしいですね……

「美子さま、社交ダンスもされるとか……相手の方がうらやましいですわ、私も踊って欲しかった、足も治して頂いたのですから……」
 エステラさんの、嫉妬が少しばかり混じった言葉です。

 そこに三校のインペリアル・シスターがやってきましたね。
 ……ナーキッドの思惑通りになるじゃないの……

「華宮さん、見に来ましたわ、少し羨ましいわね、美子様と踊れるなんて」
 ナスターシャさんも、心底羨ましいと思っているようです。

「申し訳ありません、三人で少々私欲に走ったのは確かです」
 華宮さんは顔見知りですので、親しそうに話していますが、六条晶子さんと朝倉麻子さんはかなり固まっています。

 それでも場がなごんでいきます。
 鈴木聡子さんがいるからです、ナーキッドの序列では鈴木聡子さんの方が上で、人あしらいの手腕が半端ではないからです。

 大体に、美子さんの女たちの不文律として、足の引っ張り合いはご法度、不思議に守られるのです。
 本能的に、美子さんがそのような女を避けるからでしょうね。
「そろそろ始まります、ゆっくり見て行って下さい」

 そんな時、美子さんの携帯が鳴ります。
 出てみると鈴木順五郎さん。
「美子様、昼の時間少し余っているでしょう、ナスターシャ嬢とエステラ嬢の二人を、踊りに誘ってくださいませんか?」
「私が露出してもいいのですか?」

「そこにいる報道関係者は、全て我々の息がかかっています」
「パパラッチより、ナーキッドのオーナーらしき人物が二人のプリンセスと踊っていたという、スクープ写真が撮られた」

「そしてその相手は、さらに三人と踊っていた」
「かなり無理してとった写真が五枚、何とか分かるのは二人のプリンセスの顔と全員の服、そのうちの一枚には観戦していたギャラリーも写っており、良く見ると制服が分かる」
「なるほど……」

「疑心暗鬼の日本国民は安心するでしょう、インターネットの掲示板に、五枚の写真についてのスレが立ちあがり、解説が乱れ飛びますから」
「どこまでも利用しますね、分かりました」
「恐れ入ります」

 美子さんがナスターシャさんとエステラさんに説明していました。
 少しばかり聡子さんがむくれていましたけど、お父様に八つ当たりの相手をしてもらいましょう。 

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