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第2部 嵐の前の平穏な日々

【4章】49話 奴隷商が登場しました。

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 いよいよ第3農場の召使さんがやってきました。
 今回は前回、前々回の経験がありますのでいたって簡単、何もかも簡単です。
 いよいよロマンチック・ドリーム・タウンは活気づいてきました。

 街区も着々と整いつつあります。
 オフィス街、ドリームホテル、三つの農地、隣接して倉庫街があります。
 紡績工場を中心として生産地区、そして召使さんたちの住区、私たちが住むハレム地区、食堂と喫茶室、消耗品用物品倉庫、耐久消費財用高級物品倉庫、浴場などを中心としたセントラル街?などなど。

 街路は車が通れるような大きさを確保、街灯があちこちに置いてあります。

 このたび雨天集会棟の前に、公園なんてものを作ろうとしています。
 といってもポケットパークぐらいの物ですが、芝生を植え、東屋を作り、ベンチを置き……

 でも、園芸の専門家がいません、やはり没ですかね……

 自分でも不思議なのですが、何としても公園を作らねばと思ったのです、それは強迫観念とも呼べるのです……
 
「女性の園芸の専門家?心当たりはありますが……」
 サロン・キティの面々に相談しますと、ヴェロニカさんが言葉を濁したのです。

「当てがあるのですか?」
「あるにはありますが……イルマタル様には……」

 歯切れが悪いのです……
 よくよく聞きますと、各地の王侯貴族の邸宅には立派な庭があり、その維持管理にあたる専門家がいるそうなのです。
 そしてハレムにも中庭があり、当然女性の園芸家も存在するわけです。

 ただ、この手の仕事の担い手は奴隷さんなのです。
 奴隷を教育して高く売る……奴隷商を通すしかないそうです。

「別にいいのではありませんか?このロマンチック・ドリーム・タウンの住民はほとんど女奴隷さんですよ」

「その……女奴隷とはいいますが……奴隷商が扱う園芸女奴隷というのは、各地の農村、つまり農奴の中より売られる少女を、徹底的に教育して商品とするわけです」

「購入するのは王族や大貴族、需要はこのあたりなのです、教育という中にはその……房中術も叩き込むのです、なのに処女を守らせる、主に全てを捧げるためにです」

「需要はほとんどありませんが、王侯貴族が購入するため極めて高価、商品としては完璧な女奴隷です」

 つまりは園芸女奴隷というのは高級商品、基本は夜の相手として幼少時より徹底的に教育し、その上でもう一つ専門教育を学ばせる、スパルタ式だそうです。
 そのほか調理や戦闘を専門とする高級女奴隷も存在するとのこと。

 ……専門職ですか……幼少時より洗脳し夜の為の調教をするという、ライトノベルに蔓延する男の欲望が、この世界では現実にあるのですか……王侯貴族用らしいのですが……

 私のところにいる侍女さんや女中さんなどは、このような奴隷商から購入した商品ではないらしいのですよ、少し安心しました。

「園芸女奴隷などを扱う奴隷商となると、このあたりではルーシーにしかありません」
 よくよく聞くと、このような王侯貴族向けの専門の奴隷を扱うのは、ルーシー、ヴェネ、ブルタにしかないようです。

「取りあえずルーシーの奴隷商を冷やかしてみますか」
「本当に行かれるのですか?」
「なにか問題でも?私が拐かされて売られるとでも?」
「いえ……売りつけられそうで……」

「高いのでしょう?そんなにホイホイとは買いませんよ!」
「献上されたらどうしますか?」
「献上?どうして?私に献上して、なにか得になることがあるのですか?」

「イルマタル様はいまや女神といわれているのですよ、下手を打って睨まれたら、即刻廃業間違いなし」
「三大国の君主家に睨まれたら、商売が出来ないのですよ」
「その上にイルマタル様に睨まれたら、カノーヴァ子爵の様になりますから」

「だって、あの件はカノーヴァ子爵が悪さをしたからですよ!」

「その後、関係した首長や領主の執務室を焼いたでしょう?あれ、執務室では済まなかったのはご存じですか?城館や庁舎が丸焼けなのですよ」
「シトロンの街など、崩れ落ちた城館が、城壁を壊して大穴を開けたのですよ」
「おまけに魔物除けを取り上げたでしょう、街に魔物が押し寄せて、突貫工事で修復するまで、大変だったそうです」

「でも、犯人は不明でしょう?」
「表だってはです、誰もがイルマタル様の逆鱗に触れたと思っていますよ、何たって冷酷な戦女神なのですから」

 好色もでしょ、聖天様がおっしゃっていましたよ……
 だから奴隷商が寄ってくるのでしょうね、いや、呼び寄せるのでしょう。

「では、お目付役にヴェロニカさんについてきてもらいます、それにエヴプラクシヤさんとマトリョーナさんも連れて行きます」

「エヴプラクシヤ様は頼りにならないかも知れませんが、マトリョーナ様なら大丈夫でしょう。私もいるのですから」
「では3名が認めたら構わないと?」
「それだけの理由があるということですね」

 で、スクールが休みになるのを待ち、再び SHERP ATV の出番です。

「懐かしいな、こうして三人がそろうと、初めてイルマタル様に出会ったときのことを思い出します」
 エヴプラクシヤさん、まだ一年たっていないのですが……そういえば、あの時の襲撃は何だったのか……誰もその事には触れませんが……

 オスクからルーシーまで駅馬車で一日、約180キロほど。
 SHERP ATV は朝の八時に出発、のんびりと走り、休憩をいれて昼の二時にルーシーにつきます。
 今回は警備兵が最敬礼で応対してくれるのですよ、そしてそのままモスク宮殿へ、大公さんが相手をしてくれます。

「ようこそ、歓迎いたします、ところで何用ですかな?」
「ほう、園芸女奴隷を?なるほど、ロマンチック・ドリーム・タウンに庭を整備したいのですか?」
 公園といっても、理解出来ないでしょうからね。

「確かにそんな奴隷を扱っているのは、このあたりではルーシーだけ、ところで本日は泊まっていただけるのでしょうな?」

「出来ればお願いいたします、とくにエヴプラクシヤさんとマトリョーナさんは久しぶりでしょうから」
 まあ、実家でのんびりとしていただきましょう。

 トロティエ商会……知らぬ者はいないと思われる奴隷商会、各種の奴隷さんたちを扱っているようです。
 その会頭、マテュラン・トロティエ、ルーシーのギルドの大幹部だそうです。

「このたびは当商会の奴隷を、お買いになりたいと伺いました、どのような奴隷がご入用で?」
「冷やかしですよ、園芸奴隷が欲しいのですが、高いと聞きましたのでね、見学はだめですか?」
「いえいえ、名高いイルマタル様がお越しいただけたのです、当商会の誉れ、心より歓迎いたします」
 
 で、商品がやって来ました。

「園芸奴隷はあまりいません」
「この者は呪いの森の近くの農村の娘です、六歳の時に当商会が買い取りました」
「その後、村は魔物の大襲撃に遭い全滅、文字通りの天涯孤独の娘です」
「閨のことはたたき込んでいますし、貞操帯でしっかり管理しています」
「この間、女の身体になりました、処女は確約いたします」

 このとき、なぜ公園を作らねばと、頑なに思ったのか理解しました。
 このマテュラン・トロティエは極悪人です。
 この男、ギルドの大幹部だそうですが、なにか嫌な感じがします、蛇が後ろに見えるのです。
 頭の中でこの蛇を検索しました。
 どうにも、こいつと思われるものがあります。

 スモク……ポーランドあたりでは、かなり邪悪なやつですが、ズメイと呼ばれる竜になりかけています。
 いわゆるヴァヴェルの竜ですが……どうも使い魔のような気がします。

 主はツィルニトラ……黒い龍神、魔法を司るドラゴン……のはず……
 でも、ここエーリュシオンにいるスモクの主はアポピス、黒い蛇神でもっとヤバそうです。

 この思いは確信としてあります、しかし別の確信もあります、私の方がもっとヤバい存在だと……
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