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第2部 嵐の前の平穏な日々

【4章】42話 ひな祭りに私は何を思い、何を実行したか?

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 サトウダイコンの種まきのために、新しい召使いさんの受け入れ準備が整いました。
 もうすぐやってこられるでしょうが、その前に……

 この世界の3月3日といえば地球でいうところの2月28日、それでもなんとなく3月という響きに、早春を感じるのは私だけでしょうね。
 
「桃の節句です!女性のお祝いの日です!」
 3月に入り直ぐに雛人形を取り寄せた私、近頃、とみに女性化が進んでいるのでしょうね。
 お買い物は楽しいし、可愛い物にときめくしで、雛人形を取り寄せ、テンションアップです。

 七段飾りですよ!
 内裏びな、三官女、五人囃子、随身、仕丁……なにか浮き浮きします、一番でっかいのですよ!
 食堂トレーラーで、せっせと設置を始めた私を、皆さん、奇異の目で見ていますね。

「イルマタル様、これは何ですか?」
 ついに我慢仕切れなくなった、ベンヴェヌータさんが聞いてきました。

「これ?私の故郷の祭りで、『桃の節句』とか『ひな祭り』とかいうもので、女の子の健やかな成長を祈る行事なのよ」
「その日にこのようなお人形を飾るのよ、雛人形というのよ♪」
「可愛いお人形ですね」
「こちらでは女性のお祭りなんてないでしょう?でもロマンチック・ドリーム・タウンは女性の街、これを飾ってお祝いしましょう♪」

 喫茶室にもケース飾りを一応10体そろったやつで、オルゴールなんて内蔵しています。

 この世界の暦で3月1日から3月6日まで飾ることになりました。
「そんなに早くしまわなくても……」
 オーレリーさんが残念そうにいうのですが、
「長く飾ると、お嫁に行くのが遅くなるといわれているの、だからさっさとしまうのよ」
「なら、ロマンチック・ドリーム・タウンではしまう必要が無いのでは?ほとんどの者は嫁に行くとは考えていないはず」

 そばからフランセット・フランさんが、
「そんな事はありませんよ、イルマタル様と懇ろになりたい者ばかり、さっさとしまわなければ懇ろにはなれないのですから」
「いわれればそうですわね」
 変に納得しているオーレリーさんです、この二人、そういえば親戚に当たるのですよね、道理で仲がよいわけです。
 
 3月3日は臨時のお休みにしませんかと、『サロン・キティ』に相談してみれば、案外に同意してくれたので、
 大々的にお祝いの準備なんてしている私です。

 まず、引千切を探しました。
 三月のインターネットを軒並み探しますと、ありますね……
 俵●吉●さんの三個セットに似たものがありました、冷蔵品ですね。

 次に、ひな祭りにはちらし寿司、おかずとの二段重ねの物にしました、1,950円ほどでしたね。
 ひし餅も本格的な物が奈良の方にありました、400円です、これ真空パックの優れもの。
 ひなあられは150円ほど……
 甘酒はノンアルコールの砂糖を使用しないタイプ、200ミリリットルで200円……

 ケーキは……と、奮発しましょうね、某コンビニの宅配サービスに、ひなまつりプリンセスケーキというものがありました。
 4.5号で3,200円ほど……女性ですから四人前ほどあります。
 砂糖菓子のプリンセスは、自分でくっつけるのですが、ほんと、これ可愛い♪

「このケーキ、食べきれないと思われますが?」
「えっ、そうなの!」
「イルマタル様!壊れていませんか!」

 で、3名に一つとなったのです。
 全て一旦取り寄せ収納、当日一気に取り出します。
 
 当日は食堂も喫茶室も全てお休み、お風呂さえこの日はお休みです。

 まず14歳より下の三人の娘さんを呼び出しました。
 帝国侯爵家、帝国伯爵家、王国伯爵家の娘さんです。

 幾末を考えると、私が物にするしかない奴隷さんの境遇、なにかいい思いをして欲しかったのです。

「三人とも色々あったことは理解しているでしょうが、私は貴女たちの健やかな成長を祈っています、だから学校に通いなさい」

 ……次の夏至からオスク・スクールにはレディス・ジュニア・スクールができます、満年齢10歳で入学、四年制です……

「いまや奴隷といっても私の奴隷は別格です、だれも後ろ指など指さないでしょう、また指させはしません、堂々と胸張って通いなさい」

「ただ申し訳ありませんが、40歳までは奴隷解放は出来ませんが、結婚したいのなら申しでてください」
「相手に下賜という形にしてあげます、相手は良く選んでね、つまらない相手なら私が鉄槌を喰らわしてあげます」

「ここに集まっている皆さんは、貴女たちのお姉さん、お母さん、私同様貴女たちの健やかな成長を祈っているのですよ」

 三人の内、一番下が10歳、あと一人幼子がいますが、この子はまだ一歳にもなっていません、今のところはジュニア・スクールの話しはまだまだ先です。
 
「私からの贈り物です、これを着て、よく学んで、良き女性になるのよ」

 オスク・レディス・ジュニア・スクールの女生徒が着る予定の制服を渡しました。
 普通の吊りスカート、シングルの上着、ブラウスにセーター、ソックス、靴などなど……

 オスク・スクールは、私が卒業すると大改革が計画されています。
 女学生、つまり女子部は分離してオスク・レディス・スクールとなり、ロマンチック・ドリーム・タウンの附属となるのです。
 敷地は男子部に明け渡し、ロマンチック・ドリーム・タウンの隣に移ってくるのです。

 いままでも女子の教官は、専用科目以外ほとんど男子、女子の授業はいい加減な物だったのは、私も知っています。

 三人の娘さん、感受性が高いのでしょうね、涙を浮かべながら、
「ありがとう……ござい……ます……でも、結婚相手はイルマタル様だけです!きっと、きっと、イルマタル様に気に入ってもらえるような、女の子になってみせます!」
 きっぱりといったのですよ!
 そして、おぉぉぉ、という声が沸き上がり、一斉に拍手が起こったのですが……なんともね…… 

 この女学校の話しは、三国とギルドからの要求により実現した話しなのです。
 なにを目的にしているか、薄々は理解していますが、あんな授業なんて何の意味もありません。

 これではせっかく優秀な生徒も、だめになってしまいます。

 で、引き受けたのですが条件を出しました。
 学費の無料化とレディス・ジュニア・スクールの設立、三国とギルドからの運営費の大幅増額です、完全全寮制です。

 これを四者は条件付きで呑みました。
 ジュニア・スクールは一学年一クラス、クラス定員10名、三国は2名ずつ、ギルドも2名、ただしロマンチック・ドリーム・タウンからの推薦が最大2名、推薦がなければギルドの枠とする。

 レディス・スクールは一学年一クラス、クラス定員30名、ジュニア・スクールの10名に加え、新規募集として三国は5名ずつ、ギルドは4名、ただしロマンチック・ドリーム・タウンからの1名の推薦がなければギルドも5名とする。

 選抜は先の推薦を除き四者で選抜するそうです。
 生徒は自由民といえど、一時的には私の女奴隷となるそうです。

 もし入学前から奴隷状態の者でも、優秀な者は推薦する。
 女生徒に対して、イルマタル・ロイスターが所有権を預かり、卒業までの面倒をみる。
 卒業した者の中で、奴隷解放を希望する者は、四者の責任でイルマタル・ロイスターから、預けていた奴隷の所有権の返還を受け、責任をもってこれを解放する。

 最終学年時のクラス首席は、本人が望めば必ず愛人とする。

 なんですか!これは!側妻さんたちの件とほぼ同じではないですか!
 要するに優秀な女をやるから、俺たちに肩入れをしてくれ!というような物ですよ!

 私が怒っていると『サロン・キティ』の面々が、
「致し方ないのではありませんか?エーリュシオンの習いですから替えられないですよ」

「この地の女は受け入れています、愛人ならいいではありませんか」
「『サロン・キティ』としては、愛人なら問題は無いと判断しております」

「イルマタル様のご趣味にあった、教育をなされるのですから、相性の良い方になるでしょう?」
 女奴隷ばかりになるの?どんな学校よ!

「でも奴隷の中には、王族や大貴族の娘が入っているでしょうね、だから解放されても誰も不名誉ではない、推薦されない方が問題になるでしょうね」

「サロンで主役になるのは、ここの卒業生となるのは確実です」
「三国の君主、そして正妻たちは、きっとそのようにかんがえています」
「『女神恩賜医療財団』の名誉総裁は正妻たち、いまや彼女たちの名声は大した物なのです」
「女神にどんな形であろうと、親しくなるということがどんなことか、この世界の女は知ったわけです」

 よってたかって、このようにいわれたのですよ。

 ……やはりこの世界、腐っているのでしょうね……
 でも、そんな風に考えざるえない環境なのでしょうね。
 聖天様は不憫といわれましたね……

 ……なんとなく理解できました、私がやって来た理由の一つでしょうね……

 ……この世界の人が、人を、人として考える……
 人の認識を……使い捨てではなく、もっと大切なのだ……
 まずは弱い立場の女性をもっと大切に……

 まずは教育から始めるべきなのでしょう。

 このように思い至り、オスク・レディス・スクール、そして附属のレディス・ジュニア・スクールが、夏至過ぎの開学に納得したのです。
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