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第1部 夏至から物語は始まった。

【3章】30話 王都ヴェネ攻略は楽勝でしたが……

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 早朝、私は騎兵の残存最高位の指揮官と打ち合わせです。
「本隊は15日後に到着、我々は5日後、つまりその間に王都ヴェネの城門を破壊すればいいわけですよ」
 簡単ではありませんか?
 
「しかしイルマタル様、我らは100騎、いかがするおつもりですか?」

 私はT55を撫でながら、
「この突き出しているものがあるでしょう?これは石壁ぐらい簡単に破壊できるのですよ、砲というものですけどね」
「まず跳ね上げ式の橋を破壊します、その後、石のアーチ橋の手前を占領します」
「敵の防衛軍は、これで出てこれないでしょう?」

「包囲封鎖が完成しますね」
 指揮官さん、頭がいいですね。
 
「その後、砲で城門を破壊、貴方たちが魔物除けを使い、魔物を追い込めばどうなります?」
「……なるほど……私なら降服するか、決死の覚悟で脱出するかです」

「破壊された城門には、この戦車と貴方たちが、待っているのにですか?」
「まあ、私たちはのんびりと城門の前で、本隊が来るのを待っていればいいだけですよ、時々、堀を巡回する必要がありますけどね……」
 まあ監視の方法は色々ありますが、ここで見せるのもね。
 
 5日後、王都ヴェネが見えてきました。
 堂々とモスク大公国の旗をはためかせてですよ、慌ててヴェネの守備兵は跳ね橋を上げます。
 騎兵は石のアーチに勢ぞろい。
 私は騎兵に守られながら、農薬散布のドローンに灯油なんて搭載、丁寧に油を撒き突撃させたのです。
 
 監視していた軽騎兵さんからの報告で、4つの跳ね橋は見事に炎上、焼け落ちたとのことです。
「さて真打登場ですか」
 私はT55の56口径100mmライフル砲に砲弾をつめます。
 非力の女の身ではありますが、魔法使いでもありますので、重量物の運搬に苦労はしないのです。
 
 一撃で見事に城門は破壊され、騎兵から歓声があがります。
「では皆さん、狩りの時間ですよ」
 エヴプラクシヤさんが搭載の12.7ミリDShK38重機関銃を、破壊した城門に向けています。
 慌てて出てきた守備兵は穴だらけ……
 胸甲騎兵35騎が私たちを守ってくれますが、出番はないでしょうね。
 
 私のT55は石橋を左にして居座っています。
 そして左側から魔物の大群がこちらに向かって……
 たいしたものはいませんが、どれもデッカイ物ばかり、おぉ、あれがフェンリルですか、初めてみました♪
 魔物の群れは、正面に私がいるのでどちらかに曲がろうとしますが、右にしか曲れないのですよね、胸甲騎兵が上手く誘導しているのですから。
 
 おぉ、城門あたりはパニックですよ。
 
 翌日、守備兵が門を修理していました。
「無駄ですね」
 56口径100mmライフル砲の出番で再び破壊、前日の魔物の襲撃で懲りたのでしょうね、4つの跳ね橋の修理はしないようです。
 
「イルマタル様、暇な戦ですね」
「暇なのはいいことですよ、別に王国を叩きのめすのではなく、王国の反乱軍を叩きのめすのですから」
「国民は反乱など、あずかり知らないことでしょう?」

「いわれればその通りですが……」
「勿論、この不始末は高いですよ、だって大公国の兵も犠牲になっているのですから」
「其れなりに、詫びと賠償は頂かなくてはね」
 
 その日の夜に、また狩の時間です。
 夜襲ですから、街中に侵入した魔物もいたようですよ?
「市民を犠牲にするのはまずいですね、狩りは昼間にしましょう」
 
 3日目になると、石橋の前で、私とエヴプラクシヤさんは優雅にお茶など飲んでいます。
「このガーデンセット、いいでしょう♪」
 パラソル付きの6点セットなんて取り寄せ、ダージリンティーの香りを楽しんでいます。
 お供はドライフルーツケーキ、なかなか美味しいですね♪
 
 騎兵さんたちには、白い髭のおじさんの某社のフライドチキン、BOXセットを1人に1セット、飲み物はオレンジジュースですよ、この世界にコーラはね。
 
「そこの胸甲騎兵さん、フライドチキン、お口にあいますか?」
「勿論です、女神様からの下賜ですから!」
 そんなに感激しなくても……
 
 4日目には本隊の一部が到着しました。
 馬車を調達できたそうで、精鋭部隊を選抜して、急いできたそうです。
 
「てっきりイルマタル様は陣頭指揮などとっているかと……なんか拍子抜けですな」
 大公さんが感心しきりです。
「まあまあ、ではそろそろ降服勧告でもしていただけませんか?」
「まだ呑まないと思いますが?」
「まあ、城門を占領すれば、嫌でも白旗でしょう、では乗り込みましょう、付いてきてくださいね♪」
 
 T55が唸りを上げて動き始めました。
 門を固めていた守備兵を蹴散らします。
 簡単に街の中へ、そのまま王宮へ突撃です。
 宮殿を破壊し、何事もなく門まで戻ると、城門の上にモスク大公国の旗が翻っていました。
 
 この時点で使者がやってきます。
 どうやら再度のクーデターが発生、元の王が復権したのです。
 この後はモスク大公の出番ですね。
 
 ラテラノ王とモスク大公の話は簡単にまとまったのです。
 まぁ戦費の査定と賠償、領土の割譲、責任者の処罰ぐらいですが。
 私にもいくばくかの迷惑金、領地も少しばかりいただけるそうです。
 領地は未定とのこと、これはまだいいのですが……
 
 責任者の処罰についてですが、この場合、反乱ですから当事者は死刑、領地財産は没収、妻子のうち直系男子も死刑。
 そのほかは奴隷、売却代金は国庫に入るそうです……

 問題はですね、関係者の婦女子、奴隷さんにした方をですね、私に呉れるというのです。
 しかもですね、当事者には当然、侍女さんもいますが、自由民以外の奴隷については、これを私に呉れるというのです。
 嫌なら奴隷市場に立たせて、その売却代金を私の迷惑金としたい……ということなのですね……
 こんなこと、私にいわれても……
 
 エヴプラクシヤさんが、
「まぁそのあたりは当然とおもう、国家反逆なのだから、一族根絶やしが古来からの決まり、まだ温情と思う」
 
 クーデターの当事者とは、侯爵を筆頭に3家。
 この貴族の一族の婦女子と、所有していた女奴隷の全部を引き取れ、というのですよ……
 どうするのですか!

「私がこの人たちを入らないといえば、どうなるのですか?」
「女奴隷はたいして変わらないと思う、売られて新しい主人を見つけるまでだ」
「一族の女はそうは行かない、一族根絶やしなのだから、公開処刑となる」
 
 ……
 
「最低でも、その一族の婦女子は引き受けなければ……」
「ラテラノ王としては内心、それを望んでいるだろう」
「王国貴族には、王の一族の娘が降家したところも多い」

「とにかく引き受けましょう。待遇は皆さんと後で考えましょう、ただしばらくは、ラテラノ王に預かってもらいましょう」
 なんといっても、まだ帝国との戦争が残っているのですから。

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