エーリュシオンでお取りよせ?

ミスター愛妻

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第1部 夏至から物語は始まった。

【2章】17話 また2人ですか?喜ばしい事ですけど困っています。

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 翌朝、エヴプラクシヤさんの胸に、かぶりついていた私がいました。
 2人ともなんとも激しい寝乱れ姿、マシャさんがやって来て、平然と髪なんて手入れしてくれます。
 驚きもしないのに驚きます。
 
 そういえば、薙刀とか木刀とか、棒手裏剣とか出していませんでしたね。
 もうマシャさんには隠す事もありませんので、目の前で出しました。
「この薙刀、拵えがありませんので、後で作っていただきましょうね、おそろいでね」
 
「そろそろ朝食ですよ」
 朝食は軽く、トーストとスプレッド類、飲み物もインスタント。
 4台のキャンピング・トレーラーには、冷蔵庫という、この世界にはないものがありますので、卵とかハムとか牛乳とかが入っています。
 このトレーラーの冷蔵庫はカセットガスで動くのですよ、さすがは防災トレーラーですね。
 
 冷蔵庫はヴェロニカさんとマシャさんが管理することになっており、私が出した物とか、昨日のように購入した物とかが入っています。
 食事は当面、ヴェロニカさんとマシャさんに割り当てた、キャンピング・トレーラーで食べることになっています。
 このキャンピング・トレーラー、お昼モードにするとテーブルが2つ確保出来るのです、3人用と2人用、小さいミニキッチンで調理してくれるわけです。
 その為、複雑な料理は出来ないのです。
 
「あと6日すれば、大きな物を取り出せますので、そのときに本格的な私たちのコテージ群、小さい街を作りましょう」
「今日スクールが終わったら計画を始めましょう、基本的にはあの倉庫のようなデザインです、勿論、冷蔵庫なども出します」
 
「別にこれでも十分なのですが?」
「これでは窮屈ですからね、せっかく美しい私たちが、こうして肩寄せ合って住むわけですからね、楽しい生活をしなくてはね」
 
 そんな話しをしながら、私たちは登校しました。
 
 午前は難なく片付けますが、何やらクラスの皆さんの視線がいたいのです。
 特にベンヴェヌータ・キアッピーニさんが、とにかく寄ってくるのです。
 
「ラテラノ王国の公爵令嬢ともあろう方が、どこの馬の骨とも分からない私に、構っていても良いのですか?」
「あら、そんなに警戒しなくても良くてよ、ただね、私、強い方が大好きなの♪」
「昨日のロングソードの試し切り、拝見していましたのよ♪」
「王国の事務所の警備主任に聞きましたら、瞬時に二撃いれるのは名人クラス、並大抵の修行ではないとのことでした」
「その方が女性と教えると、そんな馬鹿なといわれましたのよ♪」
 
「そうなのですか?」
「私、嫌々ここに来たのですが、今では王様に感謝ですわ♪」
「それに帝国の晩餐会への招待、お断りになったとか、お聞きしたとき手を打って喝采しましたわ♪」
「痛快です、オーレリーの顔が目に浮かびますわ」
「私、自薦しますわ、妻でも妾でもよろしいのよ♪」
 凄い流し目で私を見るのですよね。
 
「その……私は大公国と縁がありまして……」
「エヴプラクシヤさんでしょう、マトリョーナさんとも1年後と聞いていますわ」
「でもね、決まっているのはエヴプラクシヤさんだけでしょう?」

「大体妻は1人でも、妾は何人持ってもいいと決まっています」
「たとえマトリョーナさんが正妻としても、妾の枠はいっぱい残っているのですからね、私、あきらめが悪いので有名なのですよ」
 この押しの強さが、18まで独身だったのでしょう……ある意味、『卒業面(そつぎょうづら)』なのでしょうね。
 
「そういえばオーレリーさんもなかなかよ、ご注意された方が良いかもですわ」
 なんですかね、一度として持てたことのない私が、美女に囲まれ口説かれる……
 耐性がないので、どうすればいいか分からない……
 ヴェロニカさんに相談したくても……妾候補の1人、言動からして望んでいるような……
 嬉しいような困ったような……
 
 お昼の時間、エヴプラクシヤさんとマトリョーナさんとで、お弁当を広げようとしていると、オーレリーさんがやって来ます。
 当然のように、ベンヴェヌータさんも一緒にお弁当を広げています。
 
「イルマタル様、放課後はお暇ですか?」
「まだ引っ越しの整理が終わってなくて……」
「なんなら私の侍女を手伝いに差し向けますから、お時間を頂けませんか?」
「なにか用事なのですか?」

「昨日の棒手裏剣の話しですが、帝国御用達の鍛冶屋がこの街にあります」
「そこで打ってもらうつもりなので、イルマタル様に鍛冶屋のあるじに、説明をお願いしよう考えましたの」
 うーん、断れない……建前を上手くつかれた……
 
 そこにマトリョーナさんが、
「なら私たちもご一緒してよろしいでしょうか、私たち、伝手がなくて困っておりました」
 と、割って入ります。
「そうだ、私もお願いしたい、鍛冶屋なら刃物の拵えは出来るはず、良い刃物が手に入ったので、イルマタル様とおそろいとしたい、お願いできませんか」
 エヴプラクシヤさん、こちらは純粋に額面どおりなのでしょうね。
 
 するとベンヴェヌータさんが、
「なら、私もお願いしたい、イルマタル様からいただく棒手裏剣、数をそろえたい」
「私は先ほどイルマタル様の妾にと手を上げた、気に入っていただくために、何としても手裏剣術を覚えたい」
 爆弾発言をしてくれますよ、この人は……
 
「なんですか!そんな事、許されることではないわ!」
 マトリョーナさんが、声を荒げたのです。
「そうですわ、そんな事、許される事ではありません!」
 オーレリーさんも続きます。

「なにが許されないのかな?お2人ともイルマタル様と、正式に婚姻したわけではないのでしょう?」
「イルマタル様のお気持ちはさておき、チャンスは公平でしょう?」
「姉上様!なんとかいってください!」
「私としてはモヤモヤするところはあるが、建前に立てば、ベンヴェヌータさんのいうことが、正しいと思えるのだが……」
 
 たしかにいわれるとおり、一応エヴプラクシヤさんとの仲は正式に発表はしていませんが、公認されています。
 マトリョーナさんのことは発表されていませんし、そもそも私は了承していないわけです。
 私も沈黙するしかありません……
 いや、心の底で喜んでいるのではと思えます、そう、私は愚物なのでしょうね……

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