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第二十六章 お薬啓示
二十歳のご馳走
しおりを挟む牧野和は帝都近郊のサナトリウムで、姉の愛を待っていた。
忙しい姉はなかなかやってこれないが、身寄りのない和としては、待つことだけが楽しみの生活なのだ。
そして待ち人は来た……
「和、元気にしていた?」
和は姉の元気そうな顔を見て、心より安心した。
というのも、最近の姉は、和の前でこそ、元気そうに振舞うが、顔はやつれて、生気がなかったのだ。
自分の治療代が姉を苦しめている……いっそ、私が死ねば……
毎日、このように考えているのだが、いまいち踏ん切りがつかず、ここまで日を過ごしていたのだ。
「お姉さまこそ、お元気そうで、安心しました」
心底、安心した和は、ふと、後ろにいる女の子に気が付いたのです。
「お姉さま!こんなところに、そんな娘さんを!うつったらどうするのですか!」
このサナトリウムの面会は、肉親についてはマスクをするということが条件で認められていますが、他人は……
「大丈夫ですよ、こう見えても私は、帝都第一衛戍(えいじゅ)病院の名誉院長でもありますから、絶対にうつりません」
「とにかく、お姉さまの許可はいただいています、口づけしますから」
説明は面倒と思ったのでしょう、愛様に和さんを羽交い絞めにさせ、強引に接吻、それも舌なんて入れての、ディープキスなどした雪乃さんです。
効果はてきめんでした。
どうしたの?
あれほど苦しかった胸もすっきりして、咳をすれば血を吐いていたのに、咳も出ない……
凄いわ……瞬時に完治するなんて……
『解析』を起動して、確認していた雪乃さん、我ながら聖女の力に感心したようです。
そして、和さんが……ポッと赤面して、もじもじし始めたのです。
愛様、妹の変化に気が付いています。
「こちらは、岩倉姫宮雪乃王女殿下、私のご主人様です、私は雪乃様に永年奉公人、巫女として買われたのです」
「お姉さま……」
「和も永年奉公人として、雪乃様の巫女になってください」
「……お姉さまが……おっしゃるのですから、私はお姉さまのお言葉に従います……」
「では、和さん、このまま退院していただきます、サナトリウムには、帝都第一衛戍(えいじゅ)病院に転院と伝えます」
「ご安心なさい、結核は完治していますよ」
帝都第一衛戍(えいじゅ)病院の威力ですね、サナトリウム側は何も言わず退院を認めました。
帰りの馬車の中で、愛様が事態の説明をしています。
そして、エッチについても言及しているのです。
なんですか、お上手?お尻も捧げた、そんな説明、あとでいいでしょう!
「そうはいきません!和に雪乃様に女として全てを捧げさせるのです、姉として少しでも説明して、不安を取り除いてあげたいのです!」
この後、愛様は延々とレクチャーしていました。
潮吹きとか……口に出せない事なのに……
牧野姉妹とともに、お家に帰ったのは、再び夕飯前……
日曜日ですからね……
「今晩は私たちで夕餉の準備をさせてください!」
でも、心配ですから、立ち合いましたね。
「雪乃様、私たちにも『お味噌汁の料理本』、いただけませんか?」
「いいですよ、でも一発勝負でつくるのですか?」
結果的に、この二人は心底有能ということが分かりました。
愛様は一度見た炊飯器の使い方を覚えています。
なんとかご飯を炊いたのですね。
和さんは、本を読み読み、簡単なお味噌汁を作りました。
『豆腐、わかめ、万能ねぎのみそ汁』ですね。
まあ、これは女学校を出ていれば、作れるはずですが……
その間に、なんとダイアナ様が入浴準備をしてくれました。
お湯をいれるだけですが、驚きです!
その晩、愛様が和さんを抱きかかえて……
抱きましたよ!
案外にこの二人、変態なのでは……
神様が選ばれたのでしょうか?そう思うと、納得です。
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