老後のおかしなおかしな女学生生活 転生一年目

ミスター愛妻

文字の大きさ
上 下
82 / 149
第十八章 岩倉姫宮家の日常

養父母の涙

しおりを挟む

「お父様、お母様、お久しぶりです……」
「一月ぶりか……親王の件……面目ない……」
「なにをおっしゃるのですか……私こそ、親王殿下を……」
 
 何故か涙がこぼれました。
 あんな男の為ではありませんよ、お父様の心労が痛々しいほどわかるのです……

「お父様、私は大丈夫です、だからお心をしっかりとお持ちください」
「ありがとう……」

「それで、慰問の話だったな……とにかく許可する……」

 お父様のお顔を見て、私は皇太子殿下とのことをしゃべることにしました。

「親王殿下の件で、皇太子殿下が私を訪ねてこられました」
「皇太子殿下の御下問に、私は真摯にお答えしました」
「殿下の御下問とは、『私は出来うれば雪乃を妻にしたい、が、私は女好きだ、雪乃はそんな私をどう見るのだ』ということでした」

「私は数々の希望を述べましたが、殿下は『娼館通いを目こぼししてくれるのなら』との条件で、承諾していただきました」
「そして、心が落ち着くまで、そして私が卒業するまでに、私が殿下を愛せるように、口説いてほしいとも言いました」
「殿下は『卒業までに、雪乃の心を私になびかせて見せよう』とまで、云っていただきました」

「この時、正直に申しますと、私は自己嫌悪に陥っていました……」
「殿方に捨てられると……すぐに……別の殿方に媚びを売る、嫌な女が私……」

「そんな嫌な女ですが、皇太子殿下の正直なお言葉には……心が揺れました……」
「もし、お父様、お母様が、こんな嫌な私でも、お認め下さるなら……卒業まで殿下がお待ちくださるなら……本当の娘になりたいと、願っております……」
「私は嫌な女です……だから親王殿下の事でお心を痛めるのなら、仕方のない事ですが、私の事なら、こんな嫌な女の為に、そんな辛そうなお顔は必要ありません……」

「そうか……」

 突然、抱きしめてくれたのはお母様……
 なにも云わずに、私の頭を撫でてくださりました。

「ありがとう……」

 ふと、見ると、目じりに少し涙が……お父様も、なんとなく目が潤んでおられるような……

「さて、陛下……私たちは良き娘に出会えたようです……ねえ、雪乃、無理することはないのよ、皇太子は母親がいうのも気が引けるけど、女が好きでね……」
「お母様、殿下は正直におっしゃいました、女好きで娼館通いはやめられぬが、おおっぴらに通うことは控える……それは正直なお言葉でしょう」

「私が思うに、殿下はあとくされのない女で、遊ばれているのでしょう……これは殿方の病気のようなもの、この病気以外は、殿下は英雄と呼べる方と思えます」
「英雄は色を好みます、しかし、殿下は、娼館通いを私の前で自慢する方ではない、正直なお話をして、そう判断しました」

「だから無理をしているわけではありません、私は心の奥底では、殿下に好意を抱いております」
「でも、後生ですから、殿下には言わないでください、やはり女としては、殿下に口説かれたいのです」

「そうね、十三歳といえど雪乃も女なのよね、殿方に口説かれなければね……」
「分かったわ、雪乃の気持ちをきいて、少しは心が晴れるわ……私、雪乃に申し訳なくて……情けなくて……会わす顔がなかったのよ……」

「皇太子は存分に待たせればいいわ、たしかにあの子は、帝国を任せることが出来る器ではあります、そして雪乃が側にいてくれるなら、陛下、帝国は万全となりますね」
「そうだな……息子には言わぬが、嫁いでくれるのか?」
「殿下に嫌われたら、お約束はできませんが、少なくとも私は約束は守ります」

「皇后同様、今の雪乃の言葉を聞いて、心が落ち着いた、感謝する……」

「ねえ、衛戍(えいじゅ)病院への慰問、歌を披露するの?私も聞きに行ってもいい?」
「それは……」
「いいじゃないの?帝国兵士の病院でしょう?私が慰問に行ってもなんら問題はないわけだし、たまたまね、日時が一緒なだけでしょう?」

「余も……」
「陛下は無理でしょう?大事になりますよ」
「……そうだな……」

「お父様、そんなに残念なお顔はしないでください、そうだ!こんど『帝室王女御用邸』の中庭に、例のパーティーに使ったガーデン家具をおけるようにしました、だから一度、おもてなしなどいたしたいと思います、来ていただけますか?」
「よいのか?」
「今度は皇太子殿下もご一緒に、私としても、より親しくしたいわけですから……」

「いろいろ気を使わせて悪いな、では楽しみにしている」 

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々

yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

小学生をもう一度

廣瀬純一
青春
大学生の松岡翔太が小学生の女の子の松岡翔子になって二度目の人生を始める話

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

借金した女(SМ小説です)

浅野浩二
現代文学
ヤミ金融に借金した女のSМ小説です。

処理中です...