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第十六章 どうしてこうなるの!
見ない、見えない、ひたすら焼くのよ!
しおりを挟むさて、準備も万端、焼き鳥も焼けてきました。
そして十二時、なぜか昼なのに焼き鳥屋が開店です。
「こちらの紙皿と紙コップ、紙ナプキンと紙おしぼり、お箸にナイフ、フォーク、スプーンなどは、こちらに置いてあります、ご自由にお取り下さい」
ナイフ、フォーク、スプーンは当然木製品です。
「お酒は申し訳ありませんが、ビールのみとなっています、ご自由に、こちらの冷蔵庫からお取り下さい、飲まれたらその分だけ、その横に置いてあるビールを補充して下さい」
「焼き鳥の種類は順不同、適当に焼きますので、ご注文は勘弁して下さいね」
「付け合わせのキャベツは生のままです、焼き鳥と一緒に食べて下さいね」
「あと、多少は海鮮やソーセージもご用意してあります」
そう、やはり焼き鳥ばかりではね、ホットプレートが二つありますので、焼き鳥はこちらで、『炉ば●焼器 炙●や』は海鮮などの網焼き用にしました。
イカ串にホタテ串、ツブ貝串、海老串だんご……
ソーセージはジャンボフランクフルト (串付) 、串付きトルネードウインナーなんてのも有りました。
あとは焼きおにぎり、トウモロコシは夏ですから一杯有りますので、焼きますね。
焼き鳥が焼き上がりました、二つあるホットプレートで一つは『塩』、一つは『たれ』、もうドンドン焼いています。
案外、洋子様が焼くのが上手いと分かりました。
洋子様に手伝っていただきます。
文子様とダイアナ様も、キャベツを切ったり、『たれ』を付けていただいたり、てんてこ舞いです。
「まったく、まさか二回目があるとは思いませんでしたね!」
私が愚痴っていると、
「前にもあったのですか?」
洋子様が、聞きますと、ダイアナ様が、
「少し前に、ほとんどこのメンバーで、あの時も凄かったですね♪」
「そうなのですか?王国の国王陛下と皇帝陛下がへべれけで乾杯されていますが……」
文子様が少々あきれておられるようです。
「お父様、余程楽しかったようで、今回なんて、国王陛下を『友よ』なんて呼ばれてね、二人でやって来て、お酒を飲ませろというのよ!」
「どこの殿方も同じなのですね……家の父も、酔っ払って、警察にお母様とお妾様が、引き取りに行かれるなんてことが有ったのですよ」
文子様です、脇坂伯爵、酒癖が悪いようです。
父親の悪口が出る出る……
中でも洋子様は激しかったです。
宴は盛り上がり、白川宮様も、メアリー様の旦那様も……
男同士で、何やら歌など歌い始めています。
ふと見ると、メアリー王女と白川宮妃吟子様が、険しい目でご主人を見ています。
「雪乃様、あちらを……」
洋子様が耳元で囁きましたが、
「見ないふりよ!私たちは焼き鳥で忙しい、いいですね!」
「そうでした!犬も食わない出来事は見えないに限りますね!」
「そうよ!とにかく、力を合わせて、この宴会を乗り切りましょう!」
私たちは汗まみれで『焼き鳥店』を切り回しています!
「雪乃様、お野菜が足りません!」
「雪乃様、たれが切れました!」
いま午後の三時半、でも殿方は放歌高唱……まだまだ盛り上がっているようです……
「状況は最悪ね、終わりそうもないわ、皆、ご飯はまだなのでしょう?なにかお腹に入れましょう!」
「おにぎりが用意してあるわ、今から端っこで焼きますから、食べてね」
冷凍焼きおにぎりを四つ、串付きトルネードウインナーを四つ……
「焼けたわ、とにかく食べて!」
私は、紙皿に焼きおにぎりとウインナー、キャベツを添えて、三人に渡します。
私はというと、焼きおにぎりを口にほおばり、手はそれでも動かしています。
もう、コンロの熱に顔があぶられている……汗が塩になってきた……
さすがに焼き鳥の消費ペースは落ちてきて、今度は海鮮の売れ行きが増えていきます。
イカ串にホタテ串、ツブ貝串、海老串だんご……
なんで十三歳の帝国王女が、額に汗して焼き鳥を焼いているの?
「雪乃様、そろそろ皇后様や皇太后様が……」
お母様が……お父様を……
「見ない、見えない、私たちはひたすら焼くのよ!」
後は知りませんからね、どうなっても……
宴会は午後5時を過ぎ、やっと終わったのです。
お疲れ様でした。
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