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第七章 六月は恋の花咲く季節です
華族高等女学校の『春のバザー』 其の三
しおりを挟む「『帝国第一高女』の私たちが手伝っても良いのでしたら、お手伝いしましょうか?」
「手伝って下さるの?誰か、生徒会に『帝国第一高女』のお友達に、お手伝いを頼んでも良いか聞いてきてくれる!」
直ぐに高等女学校の生徒ならいい、との返事をもらい、この柔らかくてどうしようもないご飯から、売り物を作り出すことにしたのです。
ご飯でお好み焼きを作ることにしました。
柔らかくてどうしようもないご飯と、文子様が下手に潰した白ご飯を混ぜ、小麦粉を投入、少し固くします。
卵、ネギと干しエビが調達出来たので、それを放り込み、醤油、みりん、鰹だしで味付けし、フライパンで焼きます。
裏表を焼き、切り分け、醤油を塗りつけ、好みで七味唐辛子を振って提供しました。
これはお父様方に特に受けたようです。
試食してみると、案外に美味しい!
五平餅はやめ、この『ご飯でお好み焼き』を大量に作り始めます。
無料の試食をあちこちにばらまいた結果、お客様がドンドンと……
二時頃には文子様達のお店も軌道に乗り、私たちはお暇をすることに……
「雪乃さん、このお礼は必ずいたします!」
なんて文子様がおっしゃっていましたね。
「お姉様、素敵ですわ♪」
小百合さん、お手伝いなんてしていて、今までおられたのですね。
「こんど、お家に伺っていいですか?」
「いつでもいいわよ、歓迎するわ、洋子様、いいかしら?」
「歓迎しますわ」
嬉しそうに小百合さんは帰って行きました。
「やれやれ、疲れましたね……」
「そうですね……」
「帰ったらさくらんばのチーズタルトがありますから、皆で食べましょうね」
「えっ、もう一つ作っていたのですか?」
「なにか勢いで……」
洋子様が、
「そうですわね、今日は日曜日、メイドさんもお休み、誰も家の中にはおられませんし……晩ご飯は、文子様のお店の商品がいっぱいありますしね」
そうなのです、『ご飯お好み焼き』を、文子様が大量にくれたのです。
でも洋子様、くすくすと笑いました。
「どうしたのですか?」
「いえ、文子様も小百合さんも、華族女学校関係の生徒でしょう?雪乃様の事、最後の最後まで『王女』と気がつかれなかったなと思って」
「そういえばそうですね」
私も笑ってしまったのです。
でも日曜の夕刻にお客様がやってこられたのです。
皇太后様と脇坂様のお母様です。
「突然、ごめんなさいね、また文子が面倒をかけたと聞いたわ、あの子はじゃじゃ馬で困っているの」
なぜ皇太后様が……
「文子は妹の孫なのよ」
ということは脇坂文子さんは皇太后様の大姪(おおめい)ということなのですね。
「でね、文子はね、出戻りになるの」
そんなこと、なぜ私に?
「私から言うわ、文子は私の娘で、ある方の許嫁だったの、でも、流行病でぽっくりと……」
文子様のお母さまがおっしゃったのです。
たしか離縁状がなければ再婚は出来なかったような……女は夫を裏切れない……一生、再婚は出来ないということ……
これは許嫁にも適用されるような……
「でね、文子は男と再婚は出来ない身の上なの」
これ、何となくまずい気がします……いよいよ変態神様の面目躍如、神様は『爛れたレズ』の痴態をお望み……
「このような身の上の女になると、Sしかないのよ」
『S』……初めてこの言葉を真剣に解析しました……
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