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第四章 高等女学校入学
女子の進路 再び
しおりを挟む翌日、続々と皆さんが入寮してきます。
新入一年生はなんと私だけ……
高等小学校から三年編入したのが上泉お姉様……
なんでも入寮する希望者が6名しか居なかったと聞きました。
一年生が一人、二年生なし、三年生が一人、四年生が二人、最上級生が二人……
2名ずつでお風呂の掃除当番の班を組むことになり、新入の一年生と三年生で班を組むことになったのです。
勿論、班長は上泉洋子お姉様ですよ♪
で、初っぱなから私たちの班がお風呂の掃除当番なわけです。
上泉お姉様は、男爵家の長女とのこと、弟さんがおられるようです。
でもおかしいのですよね、なぜ華族の娘である上泉お姉様が、高小――高等小学校のこと――なの?……
「家は華族といっても男爵家、弟は何とか華族中学に通わせられるけど、女はね……貧乏華族あたりの娘は高小が精一杯なのよ、卒業したら誰かと結婚ね……」
「でも上泉お姉様なら、女高師から文理大学も夢ではないかと……」
「華族の体面があるのよ、女教師なんて、良く思われないし……お父様がね……」
「お母様の実家が、不憫と思ったようで、女子師範は駄目だけど、学費が安く華族の面目も何とか保たれる帝国第一高女――ここでは帝国第一高等女学校のこととする、BY作者――ならと申し出てくれたの、必死で頑張ったのよ♪」
話しを聞くと、高小卒業後は、ある金持ちの愛人さんになる寸前だったとか……お姉様、綺麗ですものね……
「でもお姉様ほど美しい方ですので、在学中にご縁談の話しなんて、山ほど来るでしょうね」
「そうでもないのよ、華族の娘がこの女学校にはいった時点で、華族との縁談はないの、お父様も諦めているわ」
そういえば、帝国第一高等女学校は基本、平民の女学校、華族の妻にするなら華族高等女学校卒業生がトレンディ……
結婚ね……
「雪乃さんはどうなの?」
「どうとは?」
「将来よ!」
「私は華族の娘といっても母は愛人、その上、当主はお兄様、もうすぐご結婚されますので、まぁ小姑は早めに家を出なくてはと、考えているのです」
「結婚は私も諦めています……」
「だから奨学生になったし、将来は学費がいらない高等女子師範へ進学しようと考えています、まぁその後は考えていませんが、文理科大学か第三帝国大学へ進学するのもいいかなと……」
「凄いですね♪」
「上泉お姉様は?」
「まだそこまで考えていないわ、学費が工面できれば女医もいいわね……雪乃さんのように女学校の教師もいいわね……まねしようかしら」
「でも雪乃さんなら、ご縁談が来るかも知れないわよ、朝比奈伯爵のお嬢様でしょう、持参金狙いで困窮している華族が狙うかもね」
「家の父が云っていたもの、上泉の家がもう少し爵位が上なら、弟の嫁にほしいってね」
「えっ、持参金狙い、嫌だわ、お金の為に私に結婚を申し込むの?絶対嫌よ!」
「近頃は華族といっても、拝金主義が蔓延しているのよ、上流華族の中にも、世襲財産を抵当にいれている家もあると聞いているわ」
「まったく……」
世襲財産を抵当に入れ、借金することは褒められませんが可能なのです。
ただ支払いが滞り、爵位局に滞りが相手から報告されると、爵位の剥奪となりますけどね。
こうなると、爵位の剥奪を防ぐ為に『娘の身売り』が起るのです。
華族の子女が年季奉公……まあ奉公先は娼館はあり得ません、体面がありますものね、お金持ちが相手というわけです。
いわゆる妾奉公、しかも愛人としてですね。
正妻に認められれば、妾にはなれるでしょうね。
上泉お姉様も、お母様のご実家の援助が無ければ、このパターンだったのでしょう。
「私、最低でも卒業するまでは結婚はおろか、婚約もしたくないと、思っています」
すると上泉お姉様が、
「雪乃さんはそう云われますが……持参金など関係無く、縁談などそれこそ掃いて捨てるほどに……でも、ご本人は気づいていないようですね……」
えっ何、なんで私を見るの?
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